2020年東京オリンピックの暑さ問題については10/6の投稿でも書いた。10/6の投稿では、「開催日程はもう既に決まってしまっているので出来る限りの対策をする」という、ある都民ファーストの会の都議の発言について、その強引さを指摘した。「もう既に決まってしまっている」のは各競技の開催地も同様だが、IOCは昨日、猛暑対策を理由に男女マラソンと競歩について、開催地を東京から札幌に移すように大会組織委員会や東京都などに提案するという見通しを発表した(東京五輪のマラソン、札幌で開催か IOCが猛暑を懸念)。
IOC会長は「選手が最高のパフォーマンスを発揮する為の措置」としているようだが(International Olympic Committee announces plans to move Olympic marathon and race walking to Sapporo - Olympic News)、前述の都議は「開催地はもう決まっているので受け入れられない」と言うのだろうか。もしそうなら、都民ファーストの会の政治家がアスリートファーストという理念を軽視することにもなりそうだ。
IOCがこのような提案を検討し始めた背景には、先月中東・カタールで開催された世界陸上2019・女子マラソンで、日中の暑さを避ける為に深夜に競技を行ったにもかかわらず、深夜も蒸し暑く4割以上の選手が棄権したことがあるのだろう(酷暑の中東、深夜マラソンに大量棄権の波紋 盛夏の東京五輪は大丈夫か - 毎日新聞 / 危機感強めたIOC=ドーハでの惨状も背景=東京五輪マラソン:時事ドットコム)。
IOCが「開催地変更の提案を検討している」と発表したことは、「1度決めたのだからやるしかない」と、1度始めた戦争を原爆を落とされるまで止められなかった戦中の日本政府や、公共事業を1度始めると、時代に合わなくなっても止められない戦後の日本政府のような事を言っている組織委員会やJOC・東京都に比べればかなりまともだが、果たして札幌への開催地変更は暑さ対策として充分と言えるだろうか。
「【報ステ】五輪マラソン・競歩 札幌への変更検討へ テレ朝ニュース」では、IOCは札幌で開催する理由として、オリンピック期間中の気温が、東京よりも5〜6度低いことを挙げている、と伝えた。
2020年東京オリンピックの開催期間は7/24-8/9である。以下の画像は 過去の天気 - goo天気 の、
2019年7月/8月東京の天気
2019年7月/8月札幌の天気
である。確かに札幌の気温は、東京の気温に比べて幾分低い。しかし最高気温が34度を超えるような日もあるし、最低気温が25度を超える日も少なくない。札幌への開催地変更は必ずしも効果的な暑さ対策になるとは言い難い。
東京の2018年7月/8月の気温と同年7月/8月の札幌の気温を比べてみると、確かに2018年8月初旬の札幌は比較的涼しかったようだが、2020年の札幌が果たして2018年のようになるのか2019年のようになるのかは「神のみぞ知る」なので、札幌への開催地変更という対策が効果的かどうかは運任せであり、充分な対策とは言えないのではないか。
IOCはJOCや組織委員会・東京都よりは「まとも」と書いたが、このような事を踏まえて考えれば、開催決定以前から暑さへの懸念が指摘されていたのに、JOCや組織委員会の話を鵜呑みにして東京招致を決めたのはIOCだし、開催1年未満になってからこんな提案を検討し始めるようでは、JOCや組織委員会に負けず劣らずIOCも見通しが甘いと言わざるを得ない。つまりIOCも、JOCや組織委員会・東京都に比べて「いくらかマシ」という程度だ。
開催を楽しみにしている人や出場選手には申し訳ないが、もう結構前からJOCにも組織委員会にも、そしてIOCにも、まともな大会運営は期待できないと思っているし、首相や政府も露骨にオリンピックを政治利用するし、あまりにも商業主義的な方針が露呈し過ぎていてオリンピックを楽しむ気になど到底なれない。国立競技場建替えに関する騒動、エンブレムに関する騒動、数倍に膨らむ予算、全く期待できない焼け石に水ばかり検討する暑さ対策など、行き当たりばったりの運営としか言いようがない。
あいちトリエンナーレへの補助金交付は、運営の不備を理由に一方的に不交付という決定が下された(9/27の投稿)。その決定には全く納得が行かないが、その判断に問題がなかったと言うのであれば(「補助金不交付を見直す必要はない」文化庁長官が参院予算委で答弁【あいちトリエンナーレ】 | ハフポスト)、東京オリンピックに関するすべての国家予算を、これまで使った分も含めて全て回収してもらわないと整合性がとれないのではないだろうか。