スキップしてメイン コンテンツに移動
 

ANNによる安倍首相に言い訳をさせるインタビュー


 「NHKの安倍首相に言い訳をさせる特番」というタイトルの投稿を、つい4日程前・2019年12/30に書いた。12/29に放送されたNHKスペシャル「証言ドキュメント 永田町・権力の興亡 最長政権 その光と影」に関する投稿で、投稿のタイトル通りの所感を述べた。その終盤で「自分が不信感を抱いているのはNHKに限らずテレビ報道全般だ」としたが、年末にNHKが安倍氏やその周辺に言い訳させたかと思ったら、年明け早々今度はテレビ朝日が似たようなことをやっていた。


 「安倍総理、「桜を見る会」文書・残る任期・解散語る テレ朝news」という記事が掲載されているが、テレビ朝日はこれをニュースとして1/1に放送した。放送した映像がこれだ。


 記事・映像にもあるように、ANNが安倍氏に独占インタビューを行ったことを伝えている。テレビ朝日はこれを2020年1/1の午前に流した。あたかも元旦の朝から首相がANNのインタビューに答えたかのような演出になっているが、この映像は2019年12/26に撮影されたものだ。自分は、報道がこのような演出をすることを好意的に受け止めることが出来ない。

 テレビ朝日ではこのインタビューの全編を放送していないようだが、テレ朝ニュースは同じく1/1の夜・19:30に、「“最後の課題・ポスト安倍”・・・総理の胸中を独占取材」という、インタビュー全体の動画を載せた記事を掲載している。掲載された動画はAbema newsのフォーマットなので、AbemaTVでは恐らくインタビュー全編を流したのだろう。


 自分は、このインタビューを見て、NHKの安倍首相に言い訳をさせる特番に続く、

 ANNによる安倍首相に言い訳をさせるインタビュー

としか思えなかった。


 インタビューは、記者が「総理、明けましておめでとうございます」と挨拶することから始まる。そしてフリップに「今年の抱負」を書かせるのだが、前述したようにこのインタビューを撮影しているのは2019年12月だ。バラエティー番組ではないのだがら、元日の早朝から安倍氏が時間を割いてインタビューに応じたかのような演出は必要ないだろう。正月の目玉報道にするのだとしても、12月のインタビューでも何も問題はない。明けましておめでとうございますという挨拶もいらないし、今年の抱負でなく来年の抱負、若しくは2020年の抱負でいい筈だ。
 このような些細なことも、テレビ朝日に限らずテレビ報道全般に不信が生じる理由だろう。


安倍氏が示した抱負も滑稽だった。既に政権について7年間ずっと同じ様なことを言い続けている。7年かけて全然切り拓けない者が、いつまで同じ様なことを言い続けるつもりだろうか。

 具体的なインタビューの最初の話題は「桜を見る会問題」だった。ここでも安倍氏は、これまでに、安保法制・森友加計問題などで繰り返してきたのと同じ様なセリフしか言っていない。

 馬鹿馬鹿し過ぎて同じ批判を繰り返すのにもウンザリしている。「国民の声を真摯に受け止める」といいつつ、「求められれば国会でも説明する」という矛盾したことを言っている。記者は直前に

桜を見る会について、国会で更なる説明が必要?

  • 思う 59%
  • 思わない 33%
  • わからない 8%
という世論調査結果を示している。 つまり首相による「桜を見る会問題」に関する説明は明らかに求められているのに、彼は「求められたら説明する」と言っているのだ。要するに「国民の声を真摯に受け止める」というのは口だけ、と暗に認めたも同然だ。
 それを指摘しない記者にインタビューをさせているテレビ朝日は、果たしてまともな報道機関と言えるだろうか。自分にはそう思えない。だからこれが「ANNによる安倍首相に言い訳をさせるインタビュー」に見えて仕方がない。

 記者は続けて「文書が破棄済みで検証できない」ということは果たして妥当か?と問う。すると安倍氏は次のように答えた。


 桜を見る会の名簿は政策に関わることではない、だから廃棄に妥当性があるという旨の話から始めているが、「文書が破棄済みで検証できない」ということは果たして妥当か?という点については見直しが必要だと言っている。彼は「開催が終われば名簿は必要なくなる」と言っているが、それでは一体どうやって過去に行われた会の妥当性を後に検証するのだろうか
 ここでも言っていることが著しく矛盾しているのに、記者はそれを指摘しない。大体、個人情報が流出する恐れがあるという理由で名簿破棄が妥当ならば、住民基本台帳や免許証の情報だってデータを残すべきでないということになり、つまり税金を集めたりすることも出来なくなる。言い換えれば、名簿の流出を防げないならその政権は無能としか言いようがない。彼はかなり場当たり的なことを言っていると言わざるを得ない。それを指摘しない記者も確実にどうかしている。


 次は外交・北朝鮮問題に関して聞いているが、最早妄想と言っても過言ではない「日本が北朝鮮問題で世界をリードしている」かのような話をしている。ここまでで既に何度失笑してしまったか分からない。


 ここでも彼は、これまでと同じ様な話を繰り返し、「私の手で解決」「あらゆるチャンスを逃さずに」なんてことを言っている。どうやら以前自分が「対話より圧力」と言っていたことは、マイクロソフトにとってのWindows MeやVistaのように、彼の中では無かった事になっているのだろう。
 やはり記者はそれも指摘しない。

 続いては、北朝鮮問題とも関連する韓国との関係に関する話題だ。安部氏の主張はこうだ。


「私は関係を改善したいと考えている」「(韓国に)改善のきっかけを作ってもらいたいと期待する」。つまり、日本側に一切非はない。関係を悪化させたのは韓国側だから、関係を改善したけりゃそっちが歩み寄れ、ということのようだ。個人的には文大統領も残念に思っているが、それ以上に安倍氏や現日本政府を残念に思う。他国よりも自国政府に厳しくなるのは当然だろう。


 話題は変わって「憲法改正以外で何を目指すのか」について聞かれた安倍氏は、


 「今年は全世代型社会保障改革を進める」「その中心は働き方改革」「65歳以上も働ける社会を作る」と述べた。彼は「税と社会保障の一体改革をやる」と言って民主党政権に取って代わったわけだが、全世代型社会保障改革を進める?え?今更?という感しかない。そして社会保障改革の中心は働き方改革だそうだが、労働環境改善やセーフティーネットの拡充ではなく、65歳以上も「働ける社会」を作ることが彼の「働き方改革」なのだそう。そしてこれらは少子高齢化対策でもあるそうだが、一般的に言って、少子高齢化対策の主題は出生数の増加を促すことだろう。 しかしそうではなく、高齢者を働かせるのが対策だと彼は言っている。
 もう恐らく自分でも何をしているのか、何を言っているの分かっていないとしか思えない。勿論記者は一切ツッコミを入れない。

 この話の終盤で安倍氏は、


「すべて政策を燃焼し尽くす思い」だと言っている。燃焼し尽くしたら残るのは燃えカスだけだ。何となく言いたい事は分からなくもないが、安倍氏には不信感以外に何もないので、彼が「この国を焼き尽くす」と宣言しているようにも見える
 これは確かに所謂揚げ足取りかもしれない。しかし、政治家は演説や議論等、口頭表現を生業にする職業であり、言葉選びの能力はその生命線である。


 この後に憲法についての話だが、彼は2018年12/17の投稿で触れた話を繰り返しただけなので、取り上げても同じ批判になるだけなので割愛する。 その後は後継者・オリンピックに関する最早世間話としか言えないような話が数分間続けられた。つまり、個人的には、この投稿で取り上げた全世代型社会保障云々(でんでん©安倍)以降は聞く必要のない話だと感じた。

 記者は安倍氏がどれだけ矛盾したことを言っても、惚けても、全く一切の指摘をしない。つまりこのインタビューはそもそも、最初から何を聞いて何を答えるかがほぼ決まっている茶番なのだろう。だからANNによる安倍首相に言い訳をさせるインタビューだと言っている。そんなインタビューをする記者もどうかしているとしか言えないし、そんな者をインタビュアーにする局もどうかしている。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。