「To see it rain is better than to be in it.」という英語の言い回しがある。直訳すると「雨の中にいるよりも、雨が降るのを見ている方がいい」だ。雨に降られて濡れるより、濡れない場所で雨を見ていた方が気が楽だ、というニュアンスが込められた表現である。個人的には少しニュアンスが異なると考えているが、これを日本語に訳す際に、「高見の見物」という慣用表現が充てられる場合がしばしばある。確かにそのニュアンスが全くないとは言えないだろう。
「自衛隊の中東派遣、心配は「していない」 菅官房長官:朝日新聞デジタル」によると、菅官房長官は1/6にBSフジの報道番組に出演し、緊張が高まっている中東地域への自衛隊派遣について「(心配は)していない」と述べ、予定通り実施する考えを示したそうだ。
また、「首相、海自の中東派遣変更せず 緊迫化する情勢「深く憂慮」 | 共同通信」によると、 安倍首相は同じく1/6に伊勢神宮を参拝した後、年頭記者会見を行い、米イラン対立が深刻化する中東情勢に関して「現状を深く憂慮している。事態のエスカレーションは避けるべきであり、全ての関係者に外交努力を尽くすことを求める」としつつも、自衛隊派遣については「日本関係船舶の航行安全を確保する」為と、派遣方針を変更しない考えを示したそうだ。
まず、自衛隊派遣が日本の船舶や現地に滞在する日本人・日系人の安全を脅かしかねない、ということは、1/4の投稿でも書いた。長い間アフガニスタンの復興の為に力を尽くし、先月アフガニスタンで凶弾に倒れた中村 哲さんが強く主張していたこと(12/15の投稿)を考えれば、安倍氏や菅氏の言っていることに信憑性は感じられない。しかも彼らは、桜を見る会の問題などについても、支離滅裂な言動、すぐにバレる嘘を繰り返している人達でもある。
しかも、安倍首相は昨年末にインドを訪問する予定だったのに、訪問予定だったインド北東部のアッサム州周辺の治安悪化を理由に中止している。「安倍首相のインド訪問延期を決定、現地の治安悪化で-菅官房長官 - Bloomberg」には、
安倍首相のインド訪問延期については、インド外務省が先に発表していたとあり、一応インド側の都合による訪問延期という体裁になっているが、 治安悪化を理由に訪問が無期延期、つまり中止同然になったことには違いない。
首相の海外訪問に関しては治安悪化を理由に訪問延期するのに、自衛隊の紛争が強く懸念されている地域への派遣については、官房長官が「心配していない」と言う。これを高見の見物と言わずして何を高見の見物と言おうか。また、自衛隊の派遣が日本の船舶の安全の為と言うのなら、安倍氏もインドの治安が悪化している地域を訪問し「暴力行為は止めよう」と呼びかけて、現地の治安安定化に貢献してきたらよかったのではないか。つまり安倍氏も高見の見物をしていると言えそうだ。
そもそも、米国軍が空爆によってイランのソレイマニ司令官を殺害したこと自体も、命じた米大統領は高見の見物をしている、と言っても過言ではない。というか、全ての戦争・紛争について、政治的指導者の多くは、そして最前線に行かない者の一部は高見の見物をする。
トランプ氏のその後の姿勢・言動もかなり酷い。どう考えても、司令官を殺害する為に空爆を行った米軍が、先制攻撃を加えたとしか考え様がないのに、「イランが報復すれば「大規模な報復に出る」=トランプ米大統領 - ロイター」等によれば、イランが報復する可能性について質問されたトランプ氏は
(報復が)起きれば(報復が)起きる。(イランが)何かすれば、大規模な報復があると述べたそうだ。「盗人猛々しい」とはまさにこのことだ。
また、「トランプ大統領、「イラン攻撃決断なら議会通告はツイッターで十分」 批判を軽視 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News」 によると、ソレイマニ司令官殺害について、「議会への事前通告がなかった」と批判されていることに関して、
たとえ米国が受けた攻撃と比べて均衡の取れない形で攻撃を実施する場合でも議会の承認は必要ないとも言っているらしい。そして、
法的にはそのような通知は要求されておらず、仮にイランへの攻撃を決断した場合でもツイッターに書き込めばそれが議会への事前通告になるともツイートしたそうだ。
安倍氏が昨日の念頭会見の中で、1/4の投稿で危惧したような「日本は米国と100%共にある」みたいなことを言わなかったことには一先ず安堵したが、トランプ氏が「他国への攻撃を議会に通告する必要はない、ツイートすればそれで充分」のようなことを言っているのと同様に、日本政府も自衛隊の中東派遣を議会にかけることもせず、年末で報道機関や他政党の動きが鈍る年末に閣議だけで決める、ということをやっている。
また、前述した官房長官や首相の姿勢を勘案すれば、「日本は米国と100%共にある」みたいなことを言わないだけで、彼らの心中にはそのような認識があると推測することも出来そうだ。
「司令官殺害、トランプ氏が決断するまで 国防総省に衝撃:朝日新聞デジタル」 にはこうある。
軍幹部らはソレイマニ司令官の殺害を「最も極端な選択肢」としてトランプ氏に提示した。国防総省は歴代大統領に非現実的な選択肢を示すことで、他の選択肢をより受け入れやすくしており、今回もトランプ氏が選ぶことは想定していなかったトランプ氏の支持率は40%程度だそうだが、たった1億3000万のアメリカ人がトランプ氏を支持している所為で、「世界中が戦場になる」という意味ではないが、「今後起きかねない戦争、戦争が起きるかもしれないという情勢の影響を受ける」という意味では、世界の全ての人・約70億人が戦争に巻き込まれるかもしれない。
アメリカは一部の国のことをしばしば「テロ国家」などと呼んできた。しかし今、自分にはアメリカこそが世界の脅威であり、まさしく「テロ国家」なのではないのか?と思えて仕方がない。
日本の首相・安倍氏は、これまで明らかに親米、というか親トランプの姿勢を鮮明にしてきた。早急にこの路線を転換し、自衛隊の中東派遣も止めないと、これまで親日的だった国、特に中東周辺の国々の信頼を損なうことになるのではないだろうか。安倍氏が路線を変更しないなら、彼が現在の立場から退くように何かをすべきだろう。