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戦争が始まる懸念、「トランプと考えが一致した」と言いかねない日本の首相


 トランプ大統領の命を受け、米軍がイラク・バグダッドの国際空港を空爆し、イラン革命防衛隊のソレイマニ司令官らを殺害した、という報道が1/3にあった(米軍、イラン革命防衛隊幹部を空爆で殺害 高まる緊張感:朝日新聞デジタル)。この報道後、ツイッターの世界のトレンドに、WWIII、つまり第三次世界大戦が上がった。自分もこの件からサラエボ事件を連想したが、同じ連想をした人が世界中に多数いた、ということだろう。


 日本の義務教育では近代史が疎かにされがちだとしても、サラエボ事件は、恐らく殆どの人が中学の世界史の授業で習っている筈だ。何故ならサラエボ事件は、第一次世界大戦のきっかけになった重要な事案だからだ(サラエボ事件 - Wikipedia)。
 サラエボ事件というのは、英語版Wikipediaの見出しが「Assassination of Archduke Franz Ferdinand」となっていることからも分かるように、オーストリア=ハンガリー帝国の皇嗣、つまり跡継ぎだった大公 フランツ フェルディナントとその妻が、当時はオーストリア領だったサラエボを訪問中に、ボスニア系セルビア人の青年によって暗殺された事件である。事件当時のセルビア軍諜報部長が暗殺を命令したことを裁判中に告白した、とされている。


 因みに、サラエボ事件が起きたのは1914年6/28であり、ハフポストは2014年6/28に、「サラエボ事件から100年 第一次世界大戦の引き金となった暗殺を写真で振り返る」という記事を掲載していた。第一次世界大戦勃発の契機となった同日、英国で、大戦で死亡した兵士たちの追悼式典が行われ、エリザベス女王が出席して犠牲者を悼んだことに因み、サラエボ事件を振り返る、という内容である。第一次世界大戦には全体で7000万人以上の軍人が導入され、戦闘員900万人以上と非戦闘員700万人以上が死亡したとされる(第一次世界大戦#概要 - Wikipedia)。


 「トランプ氏「戦争止めるため」 司令官殺害の正当性強調:朝日新聞デジタル」によると、トランプ米大統領は
ソレイマニ氏は米国の外交官や軍人に対し、差し迫った邪悪な攻撃を企てていた
米国民を傷つける、または傷つけようとするテロリストに対する米国の政策は明白だ。必ず見つけ出し、排除する
ソレイマニ氏は過去20年間、中東を不安定にするためのテロ行為を行ってきた。昨晩の米国の攻撃は、もっと以前に行われるべきだった。多くの命が救われたはずだ
などと述べ、「我々の行動は戦争を止めるためのものだった」と正当性を強調したそうだ。
 この台詞を聞いて、9.11米同時多発テロ事件に関して、その首謀者とされているウサマ ビンラディンが示した、
1982年、アメリカはイスラエルがレバノンを侵略することを許可し、侵略を助けるためアメリカ第6艦隊を派遣した……レバノンの破壊されたタワーを目にした私の心に、我々も迫害者たちを同じやり方で罰するべきだという考えが浮かんだ。我々はアメリカのタワーを破壊して、我々が体験したものの一端を迫害者たちにも体験させるべきであり、そうすることで彼らが我々の女や子供を殺すのを思いとどまるようにすべきだと考えた
という考え(アメリカ同時多発テロ事件#ウサマ・ビンラディン - Wikipedia)と一体何が違うのだろう…としか思えなかった。


 世界大戦を危惧している人も多いようだが、現在欧州諸国は米国と一定の距離感を保っているし、ロシアや中国が積極的に介入するとも思えず、第一次/第二次世界大戦のようなことにはならないだろう。もしそのような事態が起きるのなら、米国によるベトナム戦争やソ連のアフガニスタン侵攻、そして2003年に米国が起こしたイラク戦争も第三次世界大戦になり得たはずだ。
 しかし逆に言えば、世界大戦は起きなくてもベトナム戦争やイラク戦争のような戦争が起きる恐れは高まっているとも言えるだろう。「イラン、米軍への報復予告「厳しい仕打ちが待ち受けている」 : 国際 : ニュース : 読売新聞オンライン」が報じているように、イラン側も報復を示唆している。


 「政府、自衛隊中東派遣を閣議決定 1月下旬に活動開始―独自に情報収集:時事ドットコム」が報じているように、現政権は2018年12/27の閣議で、中東でのシーレーン安全確保に向けた情報収集態勢を強化するため、海上自衛隊の現地派遣を決定した。防衛省設置法4条の調査・研究に基づいて、哨戒ヘリ搭載の護衛艦1隻を派遣し、P3C哨戒機も活用してソマリア沖で海賊対処に当たることを、国会も通さずに、年末のどさくさに紛れて閣議で決めてしまった。哨戒機は1月下旬、護衛艦は2月下旬から活動を始める予定らしい。
 この自衛隊派遣の名目は日本の商船の保護、つまり日本人の保護である。しかし、今の状況で、諸外国から軍と見なされる自衛隊を派遣すれば、木乃伊取りが木乃伊になりかねない。また、先月アフガニスタンで凶弾に倒れた中村 哲さんが強く主張していたこと(12/15の投稿)を考えれば、自衛隊を派遣することが日本の商船や日本人を危険な状況にしかねないとも言えそうだ。
 そんな実効性も定かでない自衛隊派遣を現政権は国会も通さずに決めたのだ。自分には、「(非戦闘員も自衛隊員自体も)死ぬかもしれないけど頑張ってね」って閣議決定したようなものとしか思えない。


 2019年6月のブルームバーグの記事「安倍首相、米国とイランの関係修復図る-トランプ大統領も見守る」や、12月の記事「安倍首相がイラン大統領と会談、中東安定化へ「役割果たす」」などが報じていたように、安倍氏はイランと米国の仲裁役を自分が担うという姿勢を示し、特に日本国内に向けて自分の国際的な存在感をアピールしてきた。しかし、今回の米国によるイラン軍幹部殺害によって、それが如何に空虚な話だったかが明らかになった。厳しく言えば、彼は単にポーズをとり続けていたに過ぎない。
 そんな安倍氏は、こんな緊迫した情勢で、しかも数日前に自衛隊の派遣を決めたばかりなのに絶賛休暇中のようだ。千葉県袖ケ浦市のゴルフ場で記者団から現在の中東情勢の受け止めを問われたが、「今月、諸般の情勢が許せば中東を訪問する準備を進めたい」と述べただけだったそうで、共同通信はこれを「首相、中東情勢への言及避ける 記者団の質問に」という見出しで報じている。自分が米国とイランの仲を取り持つという虚しいアピールを続けていた安倍氏にとって、米国によるイラン軍幹部殺害は都合の悪い話でしかないのだろう。


 昨年末・12/30に放送されたテレビ朝日・アメトーークの年末特番・アメトーーク大賞で、サンドウィッチマン 伊達 みきおさんの、何を聞いても「トランプと電話し考えが一致した」としか言わない安倍首相、というモノマネネタがクローズアップされていた。ひな壇に座っていた芸人たちが「何で一致したんですか!?」と野次っても、一致したとしか答えない伊達さん演じる安倍首相に対して、ケンドーコバヤシさんが「野党が叫んでるよ(笑)」とガヤり、そしてMCの雨上がり決死隊・蛍原さんが「本当の国会みたい」と評する場面があった。
 これはその部分の音声である。


 クールジャパンを始めとした政府案件に複数食い込んでいたり(渦中の吉本興業に「クールジャパン」で巨額の税金が注ぎ込まれていた(時任 兼作) | 現代ビジネス | 講談社 / 納得できる「死」などあるのか | ハフポスト)、昨年は新喜劇に首相を出演させたり、首相が新喜劇の芸人を官邸に招いたりしたことなど(2018年5/25の投稿)を前提に、よしもとは現政権に近い存在なんて言われているが、よしもとには6000人余りの芸人がおり、芸人の中には「首相は丁寧な説明など全然しない」と感じ、それを揶揄する者もいること(因みにサンドウィッチマンはよしもと芸人ではない)、報道ではなくバラエティー番組でこのような表現があったことは、昨日の投稿でも触れたように自分史上過去最高に高まっているテレビへの不信感を、僅かながら緩和させるものだった。

 しかしこのような情勢になると、このネタを笑ってばかりもいられない。何故なら、安倍氏が休暇明けに、「トランプ大統領と電話で会談をし、考えが完全に一致した。日本は米国と常に共にある」と言いだしかねないと危惧するからだ。


 最後に劇作家/演出家で早稲田大学教授でもある宮沢 章夫さんの、このツイートを紹介して、今日の投稿を締めくくりたい。

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