自動車レースのF1に相当するバイクレースの世界選手権・MotoGP。現在ヤマハのライダーであるバレンティーノ ロッシ選手は、最高峰クラスで史上最多シリーズ優勝(7回)を誇るスター選手だ。彼が同シリーズに参戦を始めたのは1996年で、今年で41歳になる。最高峰クラスで3度のシリーズ優勝を納めたホルヘ ロレンソ選手が昨年・2019年で引退したが、32歳で引退したことを考えるとロッシ選手の凄さが分かるだろう。
バレンティーノ ロッシ選手のことを、日本テレビの中継では「生ける伝説」と称している。この場合の生けるとは「現役」を意味しているが、サッカーなどでレジェンド・伝説と呼ばれる現役選手は決して珍しくはなく、単に「伝説」でもいいんじゃないか?とも思うが、実況時の語呂重視で「生ける伝説」と呼んでいるのだろう。
ロッシ選手には、彼が自分のバイクやライディングスーツにもロゴを付けている、「The Doctor」という別のニックネームもある。彼が医者が処置するように正確なマシンセットアップをすることからそう呼ばれるようになったという話をよく聞くが、バレンティーノ・ロッシ#ニックネーム - Wikipedia によると、その由来は諸説あるようだ。しかし何にせよ、医者、若しくは博士のようなニュアンスが The Doctor に込められていることには違いがなさそうだ。 因みに自動車整備士のことを Car doctor と言ったりもする。
ドクターと聞けば、多くの日本人は医者・博士のことだと思うだろうが、Doctor は「手直しする・修理する」という動詞でもある。そして「改竄する」という意味もあり、例えば doctor the report /報告書を改竄する のように用いられることもある。
毎日新聞は1/16に「桜を見る会推薦者名簿「国会提出前日に加工」 内閣府が陳謝 参院予算委理事懇」という記事を掲載した。内閣府は1/16の参院予算委員会の理事懇談会で、桜を見る会の推薦者名簿の推薦部局を隠して国会に提出していた問題について、加工が提出前日に行われたことを明らかにした、という内容だ。
推薦部局名が「内閣官房内閣総務官室総理大臣官邸事務所」とされていた推薦者名簿が、部局名の記載を消して2019年11/22の参院予算委理事懇談会に提出されていた。2019年11/20の衆院内閣委員会で、政府側は内閣総務官室の推薦者名簿は「残っていない」と答弁しており、答弁に合わせるように文書が改竄されたのではないか、と野党議員らが指摘したが、内閣府の大塚官房長はそれを否定した。内閣府が示した見解はかなり苦しい。というか全く信じられない。
現政権下で起きた公文書改竄と言えば、森友学園問題に関連して2018年に発覚した財務省内での公文書改竄がある。昨年・2019年の今頃は厚労省の毎月勤労統計の賃金データで捏造が発覚した。2018年には厚労省が作成した裁量労働制に関するデータに捏造が発覚したり、他にも自衛隊の日報が複数隠蔽されるなど、現政権下では改ざん・隠蔽・捏造事案が多く起きているのに、今度は内閣府で、反省もなく再び文書の改竄が行われたとしか言いようがない。
1/8の投稿でも指摘したが、2020年になってから、というか2019年の臨時国会が閉会して以降、テレビ報道は桜を見る会の問題が殆ど扱わなくなった。前段の毎日新聞の記事を見て「これにテレビ報道が触れないようならいよいよだな…」と感じたが、逆に「触れる局はあっても少なさそうだ」とも思えた。この件を在京キー局が報じたかを、各局のニュースサイトで調べて見ると、
「桜を見る会」名簿の加工に人事課長ら関与で陳謝 内閣府 | NHKニュース
「桜を見る会」推薦者名簿加工、内閣府「極めて不適切」謝罪 TBS NEWS
「桜を見る会」の推薦者名簿 白塗りで隠したものは・・・ TBS NEWS
と、日本テレビ/テレビ朝日/フジテレビ/テレビ東京には政府が国会に提出する名簿を改竄したことに関する記事がなかった。しかも毎日新聞も含めて、どの報道でも「改ざん」という表現は使われておらず、政府が部局名を隠す加工をして国会に提出、など「加工」という表現に留められている。
来週から通常国会が始まる為、そこで更に追求が行われれば、今回無視したテレビ局や他の報道機関も無視出来なくなるのかもしれないが、これが日本の報道の現状である。環境大臣に子どもが生まれたことや、首相が再び憲法改正に言及したことは伝えるのに、政府が国会に提出する名簿を改竄したことは無視する報道機関が多くある。
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本来は、芸能人やスポーツ選手などのエンターテインメント業界の住人でもない政治家に、子どもが生まれたなんて報道する必要などない。但し、昨日の投稿でも触れたように、小泉氏が育休を取得すると宣言したことに注目が集まっていたことを勘案すれば、全く報じる必要はないとは言えないかもしれない。安倍氏が再び改憲に言及したことも、TBSの記事のように、与党として連立を組む公明党の山口氏が
憲法にどこに総理大臣が憲法の発議をしたり採決をしたり、そういうことが書いてあるのでしょうか。発議権は国会にしかないですねと苦言を呈したことなどを共に書くのなら、報じる価値のある事案だろう。しかし、それらは報じるが、政府が国会に提出する名簿を改竄したことを無視するのは言うまでもなく、民放で唯一報じたTBSだってバランス感覚のある報道姿勢とは言えない。
政治的な課題の優先度は、各メディアのアンケート調査でも必ずしも高い方ではない
日本のメディアもしばしば中国当局が国内で報道をコントロールしていることに触れる。これまで自分は「中国ではまもとな報道がなされず、どんなに経済的に発展しても先進国とは言えない」と思っていたが、 政府に都合の悪い事案をテレビ各社が軒並み報じていないのを目の当たりにすると、この状況で中国を笑っていたら、「お前の足元を見てからにしとけ」と他の国から自分達が笑われてしまうとしか思えなくなった。
トップ画像は、Javier GálvezによるPixabayからの画像 を加工して使用した。