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小泉氏育休取得宣言が、パフォーマンスに見えてしまう複数の理由


 小泉 進次郎環境大臣が育児休業を取ると宣言したことが話題になっている。テレビ各社が流している、これに関する街頭インタビューや自民党幹部の見解、そしてSNS投稿に見られる否定的な見解などの多くが、中年以上の男性によるものであろうことを勘案すれば、小泉氏が言うように「空気を変える」為にも、自民幹部は「パフォーマンスに過ぎない」と揶揄しているようだが、大臣が率先して育児休業を取ることも必要だと感じる。何かしらのアクションがなければ変化が起きることは期待できない。

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 ただ、小泉氏の育休取得には中途半端な感があることも否めない。BuzzFeed Japanの記事「日本の父親は子育てのために何日休んでいる? 小泉環境相が2週間の育休取得へ」で示されているように、日本の男性の育児休業取得率は2018年度の数値でたったの6.16%だ。しかもそれは過去最高の数値である。育休の取得期間も、女性は10カ月から18ヶ月が多いのに対して、男性は5日未満が最多(36.3%)で、2週間未満までで全体の7割に達する。


しかも、9割以上の職場で、子どもが生まれても父親は1日も育休を取れないというのが現状である。
 政府は男性公務員の育休を「原則1カ月以上」とする方針を掲げているのに、小泉氏は2週間しか育休をとらず、しかも
公務を最優先にしながらも、柔軟に通算2週間を、確保していきたい
丸一日休みの日もあれば、時短勤務、またテレワークの日もあるでしょう
最も母親の負担が大きいと言われる出産から3ヶ月間のなかで2週間分取得したい
などと言っているように(小泉進次郎氏、“育休取得”を発表。「大臣の働き方も改革していきたい」 | ハフポスト / 「空気を変えなければ」小泉環境相が「育休」取得へ、自ら記したその葛藤とは BuzzFeed Japan)、つまり彼は2週間ほぼ完全に休業するのではない。
 これで果たして男性の育児休業取得を後押しすることになるのか、政府が中途半端な働き方改革政策を進めた結果、残業時間削減だけに目標が設けられ、増員もなく、仕事の量や方法は以前のまま、という職場も多く、これまで以上にハードワークを強いられることになった、なんてケースも少なくないようだし、大臣職のように、自分の裁量で仕事に関する時間やタイミングをほぼコントロールできる者にとっては、彼が宣言したような方法での育休取得もありだろうが、そうではないその他大勢の労働者にとって、そんな中途半端な育休の推進をされたら、結局負担増を強いられるだけで育休取得には繋がらない、ということになりはしないか。
 この中途半端さでは、自民党幹部の言う「単なるパフォーマンスに過ぎない」とは別の意味で、単なるパフォーマンス感を覚える。


 小泉氏に関しては昨年末に「小泉進次郎環境相 “幽霊会社”に高額発注で政治資金4300万円を支出 | 文春オンライン」という話もあった。記事には
小泉進次郎環境相(38)の資金管理団体「泉進会」および、小泉氏が代表をつとめる「自由民主党神奈川県第11選挙区支部」から4300万円以上の政治資金が、実態のない“幽霊会社”に支出されていることが「週刊文春」の取材でわかった。
とあり、「政党交付金も支出されていた」とも書かれている。「進次郎氏「ホテル代は適正処理」 既婚女性との宿泊報道で | 共同通信」によると、小泉氏は
法令に従って適正に対処していると認識している
としているようだが、具体的な説明を行ったという報道は見当たらない。
 同じく昨日、家宅捜索を受けたことで再び注目を浴びた河井 前法務大臣夫妻だが、河井前法務大臣は大臣辞任表明時に「今後調査して説明責任を果たしていく」としていたのに(「妻と相談し決断」「説明責任果たす」 法相辞任の河井氏 - 産経ニュース)、その後夫婦揃って国会審議を欠席し、家宅捜索が行われまで雲隠れしていたのにも関わらず、昨日の会見では「捜査に支障を来してはいけない。捜査の終了後、説明したい」などと述べていたし、妻の案里議員も、公選法違反について記者に問われたが、明確に否定しなかった(東京新聞:河井前法相夫妻、辞職否定 公選法違反疑い説明せず:社会(TOKYO Web))。
 一部自民党幹部らが「自ら潔白を証明せよ」と言っているようだが(政府・与党、重苦しい空気 河井夫妻捜索、急きょ説明:時事ドットコム)、個人的には、政治家には説明する責任があるのは間違いないが、嫌疑を立証するのは捜査機関の役割であり、自ら潔白を証明しても何も問題はないが、それを当たり前のように言うのはどうか?とも思う。しかし報道されたことやかけられた嫌疑について、証明しろは言い過ぎでも、事実無根であればそう否定する必要はあるだろうし、事実無根かどうかは別としても、具体的な説明をする責任はあるだろう。事実無根と否定することや具体的な説明を避けるのには避けるなりの理由がある、と受け止められるのは当然のことではないだろうか。
 そう考えると、前述の報道に関して具体的な説明もせずに、育休取得宣言をする小泉氏に対して、「不明朗な政治資金の使い方について、話題をそらすために育休の話を持ってきたとしたら許しがたい」という批判の声が上がる(「話題そらしなら許しがたい」 立民・安住氏、小泉環境相育休取得で - 産経ニュース)のも当然で、そのような意味でも、彼の育児取得宣言にパフォーマンス感を感じる。


 また、小泉氏が9月に大臣に就任して以降、報じられてきたのは彼の中身スカスカさ加減が明らかになったと言わざるを得ない報道ばかりで、
報道されていることが小泉氏の全てとは思わないが、彼に関するこの種の話、雰囲気だけで中身が伴っていないという話は、大臣就任以前から報じられてきた。どんな労働者にも有給休暇を取得する権利があるのは事実で、それは育休取得に関しても同様だろう。しかし、彼も言っているように大臣には休暇に関する規定がなく、一般的な労働者とは異なる立場ということもまた事実であり、他に称賛されるような大臣としての振舞いが殆どないどころか、笑われるようなことばかりなのに育休取得だけ宣言しても、「大した仕事もせずに何言ってるんだ」感が出てしまうのは否めない。

 そんな風に自分は考えているので、小泉氏には今すぐ辞任して欲しいというのが本音だが、今すぐそれは望めなさそうなので、小泉氏には2週間と言わず1年間の育休をとって欲しい。その期間彼に支払われる報酬は惜しいが、それでも、今後も予想される彼の中身のない発言や口パクパクが国内外で注目されるより、男性大臣が1年育休取得!というインパクトを残す方が確実に社会の為になるだろう。


 トップ画像は、Photo by Kelli McClintock on Unsplash を使用した。

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