「さようなら、モーニングCROSS。今までありがとう。」以来、テレビ報道に触れる機会がかなり減った。と言っても全く見ていないわけではなく、朝何気なくつけっぱなしにしてある情報番組や、よく行く定食屋のTVで流れている昼のニュースなどは目に入ってくる。2019年12/4の投稿、12/18の投稿、2020年1/6の投稿などは、そんな時に気になったことを元に書いた投稿だ。
また、各局がニュースサイトやYoutubeチャンネル等を用意しているので、現在はテレビでテレビ報道を見ていなくとも、テレビ報道に触れる機会はある。但し1/6の投稿でも触れたように、テレビで流す内容とネットへ掲載する映像が微妙に違っていたり、え?そこ省くの?と思うような部分が省かれることもある。なので、テレビ報道について論じるなら相応にテレビを視聴するべきだとも思うが、かと言って、あまりテレビでテレビ報道を見ていないから言及は控えるべき、というのも何か違うように感じる。
今日の昼のニュースでは、中東情勢が緊迫化する懸念からリスクを回避するための売り注文が全面的に広がり、「株価一時600円超下落 TBS NEWS」ということを伝えていた。
今の政権は、株価が上昇したことは「アベノミクスの成果」だと誇るのに、下落に関しては米中貿易摩擦とか、円高とか、自分達以外に根拠があるかのような見解を示しがちだ。経済政策の目標は株価の上昇ではなく、株価上昇も国民の生活向上の為の過程であり、そもそも株価上昇を成果として誇ること自体が優良誤認を誘う行為でしかないのだが、それに加えて、
株価上昇の要因は経済政策の奏功、下落は外的要因の所為
と強調するようでは、話に全く信憑性が感じられない。最近はテレビの報道でも、株価上昇を伝える際に「アベノミクス効果」なんて伝え方は殆どしていないが、しかし前述のような見解を政府が示した際に懐疑的な伝え方もしない。積極的にではないが、テレビ報道も政府のプロパガンダに加担していると言えるのではないか。
まさにそれを証明するような記事をNHKが1/6に掲載している。「新車販売3年ぶりに前年割れ 相次いだ台風が影響 | NHKニュース / インターネットアーカイブ」という記事がそれだ。
見出しの通り、新車販売台数が前年割れになった理由を台風に求めた内容だ。 記事は次のように書かれている。
去年の新車販売は1月から9月までの合計は前の年を上回っていましたが、10月に24.9%の大きな減少となったあと、11月は12.7%、12月は11%の減少が続いています。新車販売台数が前年割れになった理由は台風だ、と言っているのは、政府でもNHKでもなく業界団体だ、という体裁だが、新車販売台数の低下を10月の消費税増税ではなく、なぜ台風だということにしたいのか、それは政府の思惑と一致していると言わざるを得ない。
業界団体は去年10月の台風19号など、台風が相次いだことで、販売店を訪れる人の数が全国的に減り、その後も被害を受けた地域を中心に販売が振るわなかったとしています。
一方、去年10月の消費税率引き上げについては「販売に影響した可能性はあるが、今月の初売りを前にした買い控えなど、複合的な要因が考えられ、引き続き分析する必要がある」と話しています。
確かに2019年に猛威を振るった主な台風は9月/15号と10月/19号ではある。その影響で10月以降の販売が伸び悩んだ側面はあるだろうが、8月中旬にも10号が西日本を直撃して相応の被害を出しているし、8/27-28にかけて九州北部で降った大雨でも洪水被害が出ている(Category:2019年の日本における災害 - Wikipedia)。なのになぜ9月は前年を上回ったのか。台風や豪雨が販売減少の理由なら、9月から減少に転じていないと説明がつかない。
更に言えば、台風や豪雨や洪水によって水没する自動車が相次いだのだから、災害は新車販売台数が増える要因でもあるのではないだろうか。つまり、消費税率引き上げについては「販売に影響した可能性はあるが、今月の初売りを前にした買い控えなど、複合的な要因が考えられ、引き続き分析する必要がある」などとしつつ、根拠を災害に求めるのは合理性のある判断とは言い難い。
しかもNHKは、2018年11/1にも「10月の新車販売 前年同月比25%減 業界団体「台風被害の影響」 | NHKニュース(インターネットアーカイブ)」という、ほぼ同じ内容の記事を掲載している。この記事の最後も1/6の記事と同様に、
一方、先月の消費税率引き上げの影響について、業界団体は「反動減が出ていないとは言えないが、この1か月だけでは判断できず、引き続き注視したい」と話しています。と締め括られている。災害による影響は、11月の時点ですぐに結論付けているのに、消費税増税の影響は、数か月経っても尚「引き続き分析する必要がある」とする日本自動車販売協会連合会などの発表を、NHKは無批判に伝えている。そんな組織に受信料を払いたいかと言えば、全然払いたいと思えない。
桜を見る会の問題に関して、「臨時国会を閉じれば逃げ切れる」「年が変われば、嵐も収まり、そのうち忘れられる」のような認識が首相・政府・与党にあるという話があった。自民党幹部が「うまく逃げ切った」という見解を示したという話も報じられた(「桜を見る会」問題は「年が明けたら雰囲気は変わる」の既視感 4年前の“あの出来事”でも | 文春オンライン)。
しかし、毎日新聞は昨日「内閣府、「桜を見る会」入札公告前に委託業者に日程伝え打ち合わせ - 毎日新聞」という記事を掲載した。
内閣府は19年1月に、桜を見る会での飲食提供などの業務に関する入札公告前に、委託業者と打ち合わせをし開催スケジュールを伝えており、この業者の内の1つ、ジェーシー・コムサは、役員の中に首相夫人・昭恵氏の友人がいる、という内容である。
毎日新聞は他の報道機関よりもコンスタントに、桜を見る会の問題に関する記事を掲載し続けている。また「公文書クライシス」と題して、桜を見る会の問題が注目される以前から、政府の杜撰な公文書管理を指摘する記事も掲載し続けている。
一方テレビ報道はどうだろうか。昨日は、政府が廃棄したと説明してきた2013年から5年間の桜を見る会招待者名簿について、政府のガイドラインで義務づけられている廃棄簿への記録が残されていなかった、という件もあり、そちらに関しては、
「桜を見る会」名簿5年分 「廃棄簿」への記録なし 菅官房長官 | NHKニュース
桜を見る会、招待者名簿 廃棄記録なし TBS NEWS
などが報じたが、毎日新聞が報じた「内閣府、「桜を見る会」入札公告前に委託業者に日程伝え打ち合わせ」という件について伝えているのは、
「桜」入札で新たな問題?公示前に業者と打ち合わせ
を掲載したテレ朝newsだけだった。言い換えれば、日本テレビ・フジテレビ・テレビ東京は、どちらの件についても掲載していない、ということである。
確かに今は、IR・カジノ汚職の問題、カルロス・ゴーン氏の出国問題、イランとアメリカの緊張が高まっている問題など、他にも報じるべきことが複数あることは理解する。しかし、このような状況を勘案すれば、桜を見る会の問題に関して、「臨時国会を閉じれば逃げ切れる」「年が変われば、嵐も収まり、そのうち忘れられる」を現実にするのは、政府でも与党でもなく、テレビを始めとした報道である、と言っても過言ではないだろう。
これではテレビの報道機関としての存在感は今後更に小さくなるだろう。もうテレビ各社は、報道機関を自称することを止めた方がよいのではないだろうか。CS放送局のように、娯楽番組専門を自負したほうが潔いのではないだろうか。
昨年末、ドン・キホーテは「チューナー無しの液晶テレビ」を発売した(ドンキ、「チューナー無しの液晶テレビ」を発売。32インチHDで2万円 - Engadget 日本版)。2018年7月にも「チューナーのないテレビは、テレビではなくモニターである」という話に関する投稿を書いた。テレビとはテレビ放送の受信機のことなので、本来はチューナーこそがテレビなのだが、PC普及機にはモニターを本体だと認識する人が多数いたことを考えると、映像と音を出す大型の機器=テレビという認識の層に向けて「チューナー無しの液晶テレビ」という謳い文句で売り出しているのだろう。今はまだチューナーレスのスピーカー付きモニターはテレビとして少数派だが、今後テレビ放送の価値が更に下がれば、チューナーを省いたテレビが主流になることも有り得る。
トップ画像は、Photo by Tina Rataj-Berard on Unsplash を使用した。