昨年の秋に、日本赤十字社が献血を呼びかけるためにweb漫画とコラボで作成したポスターの図柄が、不要に大きな胸を強調していると批判された(2019年11/6の投稿)。日本赤十字社は同漫画とのコラボレーションは止めずに、別のポスターを作成して公開した(日赤「宇崎ちゃん」献血キャンペーン 謝礼品変更し第2弾開始 | NHKニュース / インターネットアーカイブ)。どう見ても、後者の方が世間一般に広く受け入れられるデザインだと感じる。
昨日は、アニメ「ラブライブ」のキャラクターを用いたキャンペーンのポスターが、同じ様な理由で注目されていた。恐らく最初に問題提起したのはこのツイートだろう。
な…なんでこのポスターに描かれている女の子のスカートは透けているの…?— 華月法里🌈多様性を認め☀️寄り添い🌏支え合う🌟 (@K_Norisato) February 13, 2020
:(;゙゚'ω゚'): https://t.co/wCdYBAfgPz
確かにスカートがシースルー素材で出来ているようにも見えるし、股間部分が不自然に体に纏わりついているようにも見える。どちらにせよ体のラインを必要以上に強調しているように見えるし、スカートの丈も、例えばこんな感じ(リンク先エロ注意)の、アダルトビデオの痴女ものに出てくる極端に短いそれにしか見えない。この丈では、この子の後ろを歩けばパンチラ全開だろう。
プラスサイズモデルを自負する藤井 美穂さんが、こんな検証ムービーを公開している。
パンツ線を消して、スカート伸ばしてみた。— 藤井美穂🦄俳優/プラスサイズモデル Miho Fuji (@mihoimiofficial) February 13, 2020
こっちの方が健康的で、学生感もあるのに、なんであんな変なアピールさせるんでしょう‥ https://t.co/14Du16bGG6 pic.twitter.com/LuEiWDQ6EW
キャンペーンに用いられたイラストは、やっぱり不必要に体のラインを強調しているとしか言えない。例えば、画面手前から強風が吹きつけており、スカートの素材がかなり柔らかければ、このイラストのような状況になる可能性もあるだろう。しかし、他の部分に強風を感じさせる要素はないし、そもそも制服のスカートがそんなに柔らかい素材とは考えにくい。つまりどう考えても不自然にしか見えない。
修正後のスカートの丈も充分にミニスカートだ。元画像の方は、前述のように最早痴女レベルだと感じる。
ラブライブは女子高生がアイドルを目指すという設定の作品シリーズだ。同作品に登場する女の子たちのスカート丈は、全般的にかなり短い。例えば、アイドルの衣装という設定なら、下にスコートを履く前提のそういう衣装も有り得るだろうが、学校の制服という設定でもこの痴女丈スカートが頻繁に用いられる。個人的にはその時点で「…」だが、百歩譲ってそれはデフォルメだと解釈しても、直近に日本赤十字の件があったにも関わらず、作品ファン以外の目にも多く触れるJAのキャンペーンにこれが用いられれば、違和感が呈されるのも当然ではないだろうか。
例えば、同人誌レベルの作品であれば、未成年キャラクターに性的なニュアンスを感じさせる要素を投影することもアリだろう。しかしこの作品は確実に一般向けの商業作品だ。なぜ未成年キャラクターに性的な要素を加えて描くのか。描くなら描くでレーティングが必要ではないか。
日本赤十字の件、そしてこのラブライブの件からも分かるように、日本人は未成年を性的に表現することにかなり無頓着だ。批判に晒されたこともあって最近は少し下火だが、未成年アイドルの際どいグラビアも結構多い。2019年1/24の投稿などで書いたように、自分も、性表現に対する過剰な嫌悪を示す一部の人達には違和感を覚えるが、未成年者を性的な目で見ているようにしか見えない表現は流石に看過できない。 逆に言えば、未成年者まで性的な目で見ているようにしか見えない表現が溢れているから、性表現全般に対して過剰な嫌悪を示す人が出てきてしまう、という側面もあるのではないか。
海外ポルノや、ポルノとまでは言えないセクシーなプロモーションビデオなどを見ていても、幼さとエロを混ぜる表現は殆ど見当たらない。未成年の女の子が登場するアニメなどを見ても、セクシーさやエロを感じさせる表現は殆どない。エロティック・セクシーとは大人の女性(場合によっては男性)を表現する為の要素だという認識が明確に感じられる。
しかし日本では、未成年者を匂わせるエロ表現がかなり多く、特にアニメ界隈にはその種の表現があちこちに見られる。成人向け作品であればそれも問題ではないのだろうが、成人向けに限らず一般向け作品にもその種の表現は多い。
例えば、「異種族レビュアーズ」というアニメの放送をMXテレビが先日中止したが(テレビアニメ「異種族レビュアーズ」今後のTOKYO MXでの放送が「編成上の都合により」中止に フォーエバー、レビュアーズ…… - ねとらぼ)、
同作品は、ファンタジー作品に登場するエルフや獣人・悪魔など、人間とは異なる”異種族”の女の子がサービスする性風俗店に主人公が通う、という設定である。キービジュアルを見れば分かるように、登場する女の子はみんなかなり童顔に描かれている。非人間だから、という言い訳が通用すると思っているのだろうか。
この作品は、北米のアニメ配信サイトでも配信が中止された(アニメ「異種族レビュアーズ」北米版が配信サイトから削除される 理由は「基準から外れたため」「削除することがもっとも敬意ある選択」)。しかし日本では、MXは放送を中止したが、BS11やAbemaTV、一部のローカル民放局では放送が続けられている。流石にスカートの丈などだけを理由にラブライブを放送するな、とまで言うのは過剰だろうが、この種のアニメをレーティングなしに放送/配信することは、全く適当とは思えない。
ラブライブのポスターの件に関しては、こんな主張をしている人もいる。
今炎上中のラブライブポスターのスカートのしわ問題に— 篠房六郎 (@sino6) February 14, 2020
ついて、いち絵描きとしての技術的考察です。誰かを罵る前に落ち着いて読んで下さい、まずは。 pic.twitter.com/A28GZaZ4FX
主張が全くの見当違いだとは思わない。中には妥当性の感じられる部分もある。しかし、どう見ても股間のY字のしわは不自然で、この人の言う「私ならこう書く」の例とは似て非なるものであり、擁護の仕方がかなり強引だ。
また、絵が下手だからそうなってしまっただけで、エロ表現を故意に加えたわけではない可能性もある、という話も、それはいじめやハラスメントに及ぶ者が「そんな意図はなかった、悪気はなかった」と言うのと同じようなもので、もし本当に意図がなかったのだとしても、結果的に未成年者にエロを投影した表現になってしまっている、という結果に変わりはない。例えば、女性もいる職場にヌードカレンダーを貼っておいて、「セクハラの意図はなかった、悪気はなかった」なんて話をしても通用しない。
兎に角、意図があろうがなかろうが、未成年者にエロを投影すること、そう感じさせる表現をすることは、日本人=変態、というレッテルを貼られない為にも、 特に公の場では極力、細心の注意を払ってさけるべきだ。
トップ画像は、Photo by Dom Hill on Unsplash を加工して使用した。