差別や偏見が一向に解消しない原因、女性や同性愛者や障害者の立場が一向に改善しない原因は、主体的に差別を行ったり、偏見を平然とまき散らしたり、自分と属性の異なる者を不当に扱う人達にある。しかし、原因は主体的に行為に及ぶ者だけにあるのではなく、周辺にいるその他大勢・多数派の無関心も、解消・改善を妨げる要素である。
安倍首相は2/27に突然全国的な臨時休校要請を表明したが、波及する影響への対応策が全く示されなかった為に、
- 急に学校を休みにされても共働き世帯にはどうすることもできない
- 非常勤講師の収入源が断たれる
- 給食等の来月分の発注は既に済んでいて、関連業者も打撃を受ける
- 保育所や学童は閉所するなというお達しだが、働いている人に子どもがいる場合も あり、仕事を休まざるを得ないケースも生じる
- 医療/介護現場も同様で実務に支障が出る
当然このフリーランス等を対象外とする方針にも、各所から批判と不満が噴出した。すると政府は、感染拡大の影響で売り上げが急減した個人事業主を含む中小・小規模事業者支援のため特別貸付制度を創設すると表明(東京新聞:中小事業者に無利子、無担保融資 首相「雇用と事業を維持」:政治(TOKYO Web))。しかし被雇用者向けの対応は企業を対応に給与の助成、つまり補助なのに対して、個人事業主に対しては貸与、つまり貸すだけ。結局この発表もその旨の批判に晒された。
この件は、共産党・小池氏などが国会でも追求し(休業補償・医療体制の抜本強化を/国民不安解消へ具体的提案/新型コロナ 小池書記局長が基本的質疑で/参院予算委)、そんなことがあって初めて政府は、一定の要件を満たしたフリーランスや自営業の人に対して一日4100円の給付を検討し始めたようだ。「先手先手の対応」と言っていた首相や政府の現実はこんなもので、先手ではないどころか後手後手以下だ。口先三寸とはまさに彼らを評する為の表現だ。
フリーランスや自営業に一日4100円の休業補償検討、新型コロナ対策で TBS NEWS
SNS上には、「疑問を持った人達が声を上げ、共産党小池氏が国会で取り上げた為、政府は対応せざるを得なくなった」「小池氏が政府を動かした」のような見解も示されている。確かにその通りだ。「こんな緊急時だからこそ批判するのではなく、みんなで協力して最善の対策を実現しよう」という話の妥当性のなさを3/1の投稿で書いたが、批判がなされなければ最善策など実現しないということが、この件からよく分かる。国会で首相らを追求した小池氏も一定の評価を受けて当然だ。
しかしそれでも、政府が検討しているとされるフリーランスや自営業に対する補助は、被雇用者向け対策の半額である。批判の声や小池氏が政府を動かしたことには間違いないが、充分で妥当性のある対応が引き出せた、とは間違っても言えず、これで満足してはいけない。
前述のTBSの記事も被雇用者向けの金額に触れてはいるものの、なぜおよそ倍/半分もの差があるのか、について疑問を呈する表現は一切見られない。疑問を呈さないで報道は他にもある。そのような報道をするメディアは、フリーランスや自営業に対する政府の差別的な対応に無関心である、と言っても過言ではないのではないか。
この週末はNHKとJNN(TBS)が世論調査を行ったが、それによると内閣支持率はJNN48.9%、NHK43%だった。
TBS「世論調査」調査日 2020年3月7日,8日
NHK世論調査 内閣支持率 | NHK選挙WEB 調査日3/6-9
どちらの調査も新型コロナウイルへの政府の対応の評価についても聞いていて、JNNの調査では、
新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大しています。
あなたは、感染防止に向けた政府のこれまでの対応を評価しますか? 評価しませんか?
- 評価する37%
- 評価しない50%
- 答えない・分からない13%
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための、政府のこれまでの対応について
- 大いに評価する6%
- ある程度評価する43%
- あまり評価しない34%
- 全く評価しない13%
- わからない・無回答4%
前段までに書いた話の内、新型コロナウイルス対策でフリーランスや自営業に一日4100円の休業補償検討、という報道だけは昨日・3/9になされたが、それ以外は全て先週末以前には明らかになっていた話である。つまり、この調査前に政府のフリーランスや自営業に対する差別的な対応は明らかだった、ということだ。
例えば、被雇用者向けの対応とフリーランスや自営業向け対応の間にある格差について、合理的である程度納得できる説明がなされていれば、そのような対応も評価できるかもしれない。しかし、そんなことは一切なされていないので、自分は政府の対応を評価するつもりには全くなれないし、支持したいとも全く思えない。自分が現在個人事業主であるということがその大きな理由だが、もし自分が今個人事業主でなく被雇用者だったとしても、それを認めてしまえば、次に何かしらの差別的な対応の対象とされるのは自分かもしれないので、それでもやはり政府の対応を評価するつもりには全くなれないし、支持したいとも全く思えないだろう。
現在日本の労働者の大部分は組織に属する被雇用者であり、フリーランスや自営業は確実に少数派だ。 JNNやNHKの調査で示された支持率や、政府の新型コロナウイルスへの対応を評価するという数字が、捏造されていない、若しくは操作されていないのだとしたら、「俺フリーランスじゃねぇから関係ねぇし!」と考えている人が決して少なくない、ということにもなりかねない。
勿論支持率や対応への評価というのは、労働者への収入補助以外の要素も勘案して総合的になされるべきものであり、「その点では支持/評価できないが、他の点で支持/評価できる」という判断によって示された結果という可能性もあり、そんな視点で考えれば、「俺フリーランスじゃねぇから関係ねぇし!」と考えている人が決して少なくない、ということにはならないかもしれない。
しかし、一部の労働形態に対して合理的ではない過小な対応策が政府によって示されている、ということを相殺し、且つそれを上回るような要素が今の政府に何かあるか?と考えると、自分は全く何も思い当たらない。つまり、今政権を支持する・評価すると言っている人達は、やはり「俺フリーランスじゃねぇから関係ねぇし!」という考えに基づいて、その要素を軽視している、言い換えれば、フリーランスや自営業に対する差別的な対応に無関心である、としか思えない。
冒頭に書いた、
差別や偏見が一向に解消しない原因、女性や同性愛者や障害者の立場が一向に改善しない原因は、主体的に差別を行ったり、偏見を平然とまき散らしたり、自分と属性の異なる者を不当に扱う人達にある。しかし、原因は主体的に行為に及ぶ者だけにあるのではなく、周辺にいるその他大勢、多数派の無関心も、解消・改善を妨げる要素である。
という話をこの件に当てはめれば、不当な扱いを受けているのがフリーランスや自営業者、不当な扱いをしているのが政府、周辺の無関心なその他大勢は、それでもまだ「現政権を支持する/評価する」人達だ。
これではいつ日本から差別や偏見がなくなり、立場の弱い者がいなくなるだろうか。少なくとも現政権が続く限り、有権者の約半分が現政権を支持する限り、そんな未来は訪れない。
トップ画像は、Photo by Aleksandar Langer on Unsplash とPhoto by Kin Kwesy on Unsplash を組み合わせて加工した。