大学のPCに採用されていたのがAL-Mailだったので自分はそれに該当しないが、初めて使ったメールクライアントはアウトルック エクスプレスだったという人はかなり多いのではないだろうか。今ではブラウザ上でメールを管理するのが主流になっており、メールクライアントを使用するのは、業務上必要がある人以外では珍しいだろう。しかしWindows95からXPくらいまでの時期、つまり2005年頃までは、間違いなくメールは、特に仕事上のやり取りはメールクライアントを用いて行うものだった。
Outlook Expressは1997年にInternet Explorer4.0と同時に発表された。1997年にリリースされたバージョンは4.0だが、それ以前にインターネットエクスプローラーに付属していたMicrosoft Internet Mail and Newsから名称変更された為、アウトルックエクスプレスには4以前のバージョンは存在しない(Outlook Express - Wikipedia)。
アウトルックエクスプレスが初めて使うメーラーだった、という人が多いのは、Windowsのバンドルソフトだったからだ。 そこそこパソコン全般に詳しかった自分は、かなりの数、初めてパソコンを買う知り合いに設定指南を頼まれた。
Outlook は日本語に訳すと、光景・景色・眺望、そして見解、さらに見通しなどの意味になる。「見通し」が転じて、例えば Monthly Outlook のように、天気予報という意味でも用いられることがあるようだ。
If the outlook is weak, then later it becomes tough.は「見通しが甘いと後で面倒なことになる」のような意味である。
2/16に「先手先手で対応を打つ」と言っていた首相が(2/26の投稿)、それから1ヶ月も経つのに、3/14の会見で行った演説をしているのを見ると(昨日の投稿)、この文は彼や現在の日本政府を評するのにピッタリな表現だと強く感じる。
NHKは昨夜、
川内原発1号機 16日停止へ テロ対策間に合わず | NHKニュース / インターネットアーカイブ
と報じた。同じ件について他の報道機関でも記事が掲載されている。
なぜ、福島原発事故後運転を停止していたが、2016年12月に再稼働した川内原発1号機が(川内原子力発電所 - Wikipedia)、今日運転停止することになったのか。それはどの記事にもあるように、原子力規制委員会が2013年に設けた新規制基準に基づいて、テロ対策施設「特定重大事故等対処施設(特重)」の設置が原子力発電所に義務づけられているが、その建設が設置期限の3/17までに間に合わないからだ。
3/17の設置期限に施設の建設が間に合わない、のは果たして昨日分かったことだろうか。どの記事にも
特重施設の整備とともに定期検査も実施して9カ月停止し、12/26の発電再開を目指すとある。例えば、ギリギリ3/17に間に合わないが、来月早々にも建設が完了するような状況で、前日まで建設に全力を注いできたが叶わず、前日に運転停止の判断に至った、のような話も理解できるが、発電再開に9ヶ月間も要する程建設が遅れていたなら、かなり前から3/17の期限に間に合わないことは明白だった筈だ。なのになぜ前日、しかもギリギリの深夜にこんな話が出てくるのか(ここに挙げた3記事の中で最もタイミングの早かったNHKの記事のタイムスタンプは23:30)。
NHKの記事には更にこんな記述もある。
原子力規制委員会は、テロや航空機落下などの対策施設の完成の期限を、当初は新しい規制基準がつくられた2013年から5年以内としていました。つまり、電力会社は更なる期限延長を求めたが、規制委が認めなかった為に今回の運転停止に至った、ということだ。
しかし、原子力発電所の再稼働に必要な審査が長期化し、それに伴って施設の審査も遅れたため、規制委員会は期限を1度見直しました。再稼働の審査に合格したあと、電力会社が受ける設備や機器の工事計画の認可から5年以内としたのです。
しかし去年4月、再稼働した原発を抱える九州電力と関西電力、四国電力を含めた電力各社は施設の工事が大規模になっているとして、期限内の完成が難しいと表明し、再度の期限延長などの対応を規制委員会に求めました。
これに対して規制委員会は期限の延長は認めないとして、施設の完成が間に合わない原発は運転停止を命じることを決め、電力各社に伝えていました。
もしかしたら、再稼働した2016年の時点で既に施設建設が期限に間に合わないことが確実だった、のかもしれない。つまり、期限までに基準を満たせないことが分かっていたのに、再稼働に踏み切った恐れもある、と疑いたくもなる。
更に記事には、規制委が延長更なる期限延長を認めなかったことについて、電力各社などから
計画的に電力供給を行っている電力会社は、原発の停止によって収益や電気の安定供給に影響があるとしています。こうしたマイナスの影響に比べて、テロの発生や航空機の落下といったリスクがどれだけ差し迫ったものなのか明確な説明がなく、5年という期限の根拠があいまいなどと異論が呈され、「5年という期限には根拠がない」 という見解まで示されていたともある。
電力会社の関係者は、近年しばしば北朝鮮が日本海へ、そして時には日本列島を超えるミサイル発射をしてきたことを知らないのだろうか。そしてそれを国難だと首相が煽ってきたことを知らないのだろうか。また、ニューヨークのワールドトレードセンターに旅客機が衝突した、2001年のアメリカ同時多発テロ事件(Wikipedia)が発生したことを知らないのだろうか。そして、震災前の2008年に東電が10m超の津波を試算していたのにも関わらず対策をせず、しかも震災後津波を想定外とし、試算結果を公表しなかった、という事実を知らないのだろうか(福島第1原発、10メートル超の津波想定 東電が08年試算 :日本経済新聞)。
こんなにもいい加減な見通しで「対策は充分だ」と言われても、誰が信用できるだろうか。もしこれでも「信用できる」という人がいるのだとしたら、その人達も電力会社の関係者同様に、都合の悪い事実から目を背けているだけ、としか言えない。
九州電力の見通しの甘さ、原子力規制委員会や政府の指摘の甘さ、は誰の目にも明白だ。
新型ウイルス対策についても、当初「人から人への感染は確認されていない」という、あまりにも不自然な見解によって、「過剰に心配する必要はない」という甘い見通しが、厚労省によって示されていたし(中国で謎の肺炎 厚労省「過剰な心配は不要」 帰国者に症状申告呼びかけ - 毎日新聞)、厚労省はこの期に及んで合理性が充分とは言えない主張をSNS上でしばしば繰り広げている。新型ウイルス対策に関して厚労省は「政府対応の正当化」前提でしか見解を示さない、としか思えない。
原発事故や原発の再稼働・運用に関しても、政府や電力会社の見通しの甘さは一目瞭然で、彼らは再稼働ありきで都合の悪いことから目を背けているとしか言いようがない。
なぜこんなにも甘い、そして特定の人達にだけ都合の良い見通しが日本に蔓延してしまっているのか。それは舵取りをしている人達に問題があるからだ、としか言えない。
都合の悪いことを無視して甘い見通しに溺れる者に舵取りをさせていたら、間違いなく近い将来に最悪の沈没事故が起きる。既に船底では浸水が始まっている。解決策は見通しを適切にさせるか、舵取り役を変えるかだが、3/14の首相の会見を見ても、そして今朝の国会での政府の面々の答弁を見ても、前者は無理だろう。つまり後者・舵取り役を変えるしかこの状況を好転させる方法はない。