スマートフォンのカメラ性能の向上は近年飛躍的に進んだ。2014年頃に家庭用ビデオカムに初めて搭載された4K動画撮影も、今ではスマートフォンでも可能になっている。その影響によって、コンパクトデジタルカメラはかなり販売を減らし、今では1型かそれ以上のサイズのセンサーを採用した高級路線機や、従来の主流だった1/2型程度のセンサーを採用した機種では防水性・耐衝撃性や高倍率ズームレンズなど、スマートフォンにはない一芸に秀でた機種しか生き残っていない。
バイク界では日本のメーカーが世界を席巻している、という話を3/12の投稿で書いた。カメラの世界も同様であり、ライカなど海外ブランドもないわけではないが、現在世界シェアの大部分を、キャノン・ニコン・ソニー・パナソニック・オリンパス・富士フィルム等、日本のブランドが占めている。但し前段に書いたような理由によって、各社ともレンズ一体型のコンパクト機ではなく、大型センサーを採用したレンズ交換式カメラに注力している。
大型センサーを採用したレンズ交換式カメラの特徴の一つに、明るいレンズと組み合わせることによってピントを合わせた被写体以外、つまり背景等を大きくボケさせて撮影できる、ということがある。このボケとは、漢字では「惚け」「暈け」とかく。ハッキリしない、鈍っているのようなニュアンスを表現する日本語なのだが、写真のボケの場合、英語でも Bokeh と表現するし(Bokeh - Wikipedia)それ以外の言語のWikipediaを見ても、中国語が散景(サンチン)という別表現である以外は、軒並みボケが、Tohu や bonsai などと同様に世界の共通語となっている。
英語圏で主流のお笑いと言えばスタンドアップコメディーで、コメディアンは基本的に1人で笑いをとる。日本で主流のコンビ芸人は間違いなく主流でない。日本と地理的文化的にかなり似通っている韓国でもコンビ芸人は決して多くない。韓国のお笑いの主流はコントで吉本新喜劇のようなスタイルが多く、コメディアン=喜劇俳優みたいな感じだ。
世界中のお笑いに詳しいわけではないが、自分の知る限り2人の掛け合いで笑いを誘う、2人版スタンドアップコメディーとも言うべき、日本の漫才の様なお笑いのスタイルは珍しい。しかも日本のお笑いでは、世界的には珍しいスタイルである漫才が現在の主流だ。コメディアンがコンビで活動するのが主流ということも相まって、日本のコメディーは独特と言っても過言ではないだろう。
日本のお笑いでは漫才でもコントでもボケとツッコミという役割分担がある。最近は明確に役割を決めないコンビもいるし、ボケとツッコミの役割が頻発に入れ替わるスタイルのコンビもいるが、やはり主流はボケとツッコミという役割を明確に区別して分かり易さを演出するというスタイルではないだろうか。
ボケは突拍子もないことを言ったりしたりする側で、ツッコミとはそのおかしさを指摘する側だ。英語圏のスタンドアップコメディーや日本でのピン芸人による漫談などでは、一人でボケとツッコミをする人もいれば、ボケに徹し、ボケた後に客に向けて「ボケたよ?」と表情などで訴えて笑いを誘う人もいる。
国柄・国民性・民族性等にもよると思うが、個人的には日本のコンビ芸は笑いを誘う上で最も優れているスタイルだと思う。捻った高度なボケをすると、客の中には意味を瞬間的に理解できない者も出てくるが、ツッコミを別の者が入れることによって、どんな風に面白いのか、ということが理解し易くなりボケがより引き立つ。
近年は、ボケた直後よりもツッコミの上手さで笑いを取るコンビが増えている、という話をしばしば耳にするが、ボケの面白さをツッコミが更に強調する技術が発達しているから、そんな風に見える、感じられるのではないだろうか。
この日本のお笑いのボケも、漢字では「惚け」なのだが、この場合は「惚ける(とぼける)」に由来すると言われている。だが、ピントのズレたことを言う・する、という意味では、写真のボケと同じ意味合いだ。
どこにもピントがあってないボケた写真は、勿論それを狙って撮った場合は別だが、略してピンボケ写真と呼ばれ、つまり失敗作とされる。英語圏のスタンドアップコメディーのように一人でボケるだけで笑いを誘う手法もあるので、やりようによっては成立するだろうが、ツッコミ不在でボケ倒すだけのスタイルは上手い手法とは言えないだろう。
今の日本の政治の世界はボケばかりでツッコミがいない。写真で言えば盛大なピンボケ写真を連発増産している状況だし、お笑いで言えばツッコミ不在でボケ倒しまくっている状態だ。厳密に言えば、野党がツッコんではいるのだが、ボケている人達が自分がボケていることを認めようとしないので、システム的な機能不全を起こしている。
その筆頭は残念ながら日本の首相だ。安倍氏は昨日21時頃「IOC会長と東京五輪1年程度延期で合意」したことを明らかにした。
【速報】安倍首相“東京五輪延期”を提案 TBS NEWS
【速報】安倍首相、IOC会長と東京五輪1年程度延期で合意 TBS NEWS
東京五輪、延期で決定 TBS NEWS
映像から分かるように、安倍氏は
1年程度を軸に延期を検討していることを提案し、バッハ会長から100%同意すると答えをもらったと言っている。
この件の前提として、3/16に安倍氏がなんと言っていたか、を確認しておく必要がある。安倍氏はG7首脳らによるテレビ電話会議後、
ウイルスに打ち勝つ証しとして(東京オリンピックを)完全な形で実現することにG7の支持を得たと述べた。3/17の投稿で指摘したように、完全な形とは延期も規模縮小も無観客での実施もない、全く予定通りの開催である、と翌日の閣議後に五輪担当大臣が述べている。また、ホワイトハウスが公表したG7首脳声明には、全くそのようなことは書かれておらず、安倍氏以外にオリンピック開催に関して言及した首脳はいない。つまり、このG7後の談話の信憑性すら怪しいし、もしそれが事実であっても、完全な形での開催の意向を示したのは安倍氏であることはほぼ間違いないだろう。完全な形での実施を主張していたのに、10日も経たぬ内に「延期を検討」と言っていることが変わっている。
そう指摘すれば、その間に状況が変化したから、と言うのだろうが、そんな見通しの甘さでオリンピックの開催や延期を決める首相を信頼できるか?と言えば、全くできない。しかも、延期について
現下のこの感染症の広がりの状況を見る中において、これは、年内ということは難しいだろうということにおいて、1年程度ということにいたしました。その上において、遅くとも2021年の夏までにということで合意をしたところと述べており、どのような根拠に基づいて1年程度が妥当という判断に至ったか、については相変わらず触れない。
更にツッコミどころは他にもある。3/23、つまり安倍氏とIOC会長が電話会談を行う役日前に、IOCのディック パウンド委員が、USA Todayの取材に対して「IOCが把握している情報に基づき、延期が決まった」と述べた。
東京五輪「延期決まった」 最古参のIOC委員、米紙に - 毎日新聞
つまり、電話会談前に延期が決まっていた、という話があり、安倍氏の主張する「自分が延期を提案し、IOC会長が同意した」という話の信憑性が疑われる。
話をまとめると、安倍氏は10日足らずで方針を変え、しかも延期という判断に至った経緯についても、延期期間を判断した根拠も説明しない。こんな首相に回りも記者も誰もツッコミを入れないのはかなり異様な状態だし、メディア報道でこのような疑問が呈されないのもかなり異様だ。
また安倍氏は、 2019年2月の衆院予算委員会などで「民主党政権は悪夢だった。間違いなく」と述べたことなどを無視し、「国会答弁で答えたことはない」と述べ、質問した芳賀 道也議員に対して「正確な質疑をしたほうがいい」とまで言い放った。
首相「国会で『悪夢の民主党』答えたことない」 野党「答弁忘れたのか。全く情けない」 - 毎日新聞
この件に関して、社民党 福島みずほ議員は、安倍氏が「悪夢の民主党政権」と複数回に渡って答弁したことを示すツイートをしている。
安倍総理は3月23日の予算委員会で芳賀道也さんに対して「国会答弁で悪夢のような民主党と言って私が答えたことはない」と答弁。しかし、衆議院の予算委員会で2019年2月12日、18日、20日、26日の4日間で「悪夢」と7回発言をしている。何度も言っている。 pic.twitter.com/VzFYYt4nWl— 福島みずほ (@mizuhofukushima) March 24, 2020
最早安倍氏には健忘症の疑いすらある。しかし彼が忘れるのは自分に都合の悪い事ばかりだ。前にも書いたが、映画「否定と肯定」に出てくる出来の悪いウェイターの話がある。出来の悪いウェイターはお釣りをよく間違う。店が得することもあれば客が得することも。しかし店が得するミスばかり起こるなら、それは間違いでなく釣銭をちょろまかしている。
安倍氏は健忘症ではなく、健忘症のフリをして都合の悪いことを誤魔化しているのだろう。
自分の直近の発言を無視するというボケをかましているのは安倍氏だけではなく、安倍氏とIOC会長の電話会談に同席したという組織委員会委員長の森氏も同様である。森氏は3/23に、オリンピックの開催に関して
日本は予断を許さず、欧米も異常な事態になっている。最初の(計画)通りにやるんだというほど愚かではないと述べた(東京五輪、コロナで延期の公算 組織委の森会長が見直し示唆 | 共同通信)。 しかし彼は、組織委員会の高橋 治之理事が3/10に、ウォールストリートジャーナルの取材に対して「新型コロナウイルス感染拡大の影響で今夏の大会開催が難しくなった場合、最も現実的な選択肢は1-2年延期すること」という見解を示したことに関して、
んでもないことをおっしゃった。安全で安心な五輪をきちんと進めていくというのが我々の基本的なスタンスで、今計画を変えることは全く考えていないと述べている(五輪組織委の理事、米紙に「現実的には1~2年延期」…森喜朗会長「とんでもない発言」 : 東京オリンピック2020速報 : オリンピック・パラリンピック : 読売新聞オンライン)。
森氏も安倍氏同様に健忘症であるか、若しくは健忘症のフリをして都合の悪いことを誤魔化すタイプなのだろう。そのような矛盾を組織委員会の誰かが指摘出来ないのも異様だし、またこれについても、記者らがその矛盾を指摘したという記事は見当たらず、メディアもツッコミの役割を果たせていない。
この二人だけでなく麻生も同種だ。再確認しておくが麻生は全く尊敬できないので呼び捨てにしている。麻生は昨日・3/24の会見で、新型コロナウイルスの影響による経済面での対策として、現金給付よりも商品券のほうが効果的という見解を示した。
これは、【全録】麻生会見すべて見せます 森友問題質問出ず - YouTube(TBS NEWS)の映像だ。
見てもらえれば分かるように、あからさまに記者に対して上から目線で高圧的な態度で、最早ヤクザ・チンピラと言っても過言ではないような醜悪さだ。終始「お前らには先見性がない、もっと勉強してからものを言え」という態度を変えていない。
しかし、3/19の投稿でも指摘したように、麻生は3/13に
リーマンショックの時とは全く違うと言っていたが、IMF:国際通貨基金は3/23に、、新型コロナウイルスの感染拡大によって、
少なくとも(リーマン・ショック時の2008年前後の)世界金融危機と同規模か、さらに悪い景気後退をもたらすという見通しを示した(世界経済、コロナでリーマン以上の悪化か IMF見通し [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル)。勿論現時点ではあくまでどちらも見通しであり、時間が経過してみないとどっちの見解が妥当だったかは判断できない。だが、少なくとも日米の株価は明らかに乱高下しているし、ヨーロッパや北米では相変わらず感染拡大が続いているし、インドでも外出禁止令が出され、景気が上向く要素は殆どない。
またこの件だけでなく、麻生は以前新型コロナウイルスの感染拡大は、
4月か5月になれば落ち着くだろうなどとも発言している(安倍政権、五輪開催に楽観論も根拠乏しく 「中止なら政治責任」の声も:時事ドットコム)。
この大ボケをかます老人に先見性について説教される記者らは一体どんな気分なのだろうか。なぜ揃いも揃って誰もそのような指摘をしないのか。
こんな風に日本政府はボケばかりでツッコミ不在の状況が深刻である。写真で言えばピントを合わせることすらできない5流のカメラマンが写真を撮っているような状況だ。しかもアシスタント(周辺の閣僚や与党議員ら)もその5流を野放しにしている。
写真を撮られているモデルは有権者に当たるだろうが、有権者も、ピンボケ写真を連発されているのに何も言わないどころか、中にはその写真を「前衛的で素晴らしい」と褒めているような者もいる状況だ。
- ボケ多くして船山を登る
- 裸の王様ならぬ、裸の5流カメラマン
自分の住む国が没落していくのは悲しい。しかし悲しいで済む話ではない。日本に住んでいれば、子どもから老人まで、そして日本国籍でなくても全員すくなくとも消費税は払っている納税者だ。ボケ老人たちにその使い道を任せ、浪費されるのは決して納得できない。
このの投稿では Photo by Warren Wong on Unsplash と Ten-ya Wan-ya 550308 Scan10003 - 漫才 - Wikipedia の画像を使用した。