スキップしてメイン コンテンツに移動
 

パチンコ・カラオケ・ライブ・バー・クラブの前に、まず電車を指摘したら?


 一昨日の投稿昨日の投稿で、外出自粛の要請がされている中いつも通りに営業する性風俗店やパチンコ屋、そしてパチンコ屋に並ぶ人達に触れた。そちらの投稿を読んで貰えれば、その種の人々を非難する気はさらさらないということが分かってもらえると思うが、そんな様子を見ていて、今の世間の空気は東日本大震災/福島原発事故後のそれにとても良く似ていると感じる。

  朝日新聞は昨日、こんな記事を載せた。

外出自粛明け、不安の通勤 「8時台は人減ったけど…」 [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル

 
都知事らが不要不急の外出自粛要請を出した週末が明けた月曜の朝、平時よりは少ないものの、それまでと変わらず通勤する人達がいる、ということに関する内容である。
 この記事を読んで自分は、
何せ、東日本大震災(金曜に発生)後で、電力不足・ガソリン売り切れ等による交通機関・手段が不完全な週明けの月曜、台風直撃・大雨・大雪が事前に予想されているような状況でも、どうにかして通勤しようとするお国柄だもの。よく言えば誠実だが、自分に言わせれば狂気。
と思った。勿論、昨日や一昨日の投稿にも書いたように、収入を絶たれると即生活が立ち行かなくなる背に腹は代えられない人、勤め先が出勤せざるを得ない雰囲気に満ちている人、必要性・至急性のある職に従事している人もいるだろうが、前述の国民性を考えると、そうでもないのにどうにかして日常を維持しようとしている人も確実にいる。東日本大震災/原発事故後最初の月曜も、震災当日同様に、再び帰宅難民になりかねないのに、日常を維持しようと家を出てどうにかして職場に行こうとした人が、決して少なくなかったように。
 その混乱の様子は震災後の週末明け・3/14の朝の記事・「首都圏鉄道各駅が大混雑で入場規制中、ホームに入ることすらできない状態に - GIGAZINE」が物語っている。この記事に記述はないが、神奈川県内では京急が15:30以降運休した為(計画停電での首都圏鉄道各社の運行予定まとめ - GIGAZINE)、実際に震災後最初の月曜に再び帰宅困難者が発生した。
 今は確かに震災後とは違い、交通機関も物流も止まっておらず、外出したら帰宅できなくなる恐れがある、という深刻な状況ではない。しかしその代わり、新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触をすれば、自分も感染してしまう恐れがある。感染しても8割は軽症で済むようだが、2割の重症者に自分がならないとは限らないし、自分が軽症で済んだとしても、自分が感染したことによって誰か他の人の感染源にならないとも限らない。一人暮らしならまだしも、高齢者や子ども、何かしらの持病を持つ人などと同居していたら、自分が感染したことによって家庭内に感染を蔓延させ、その中から重症者を出しかねない、という恐れもある。

 一昨日の投稿でも書いたように、国立感染症研究所感染症疫学センターは 「濃厚接触者」を、
  • 患者(確定例)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む)があった者
  • 適切な感染防護無しに患者(確定例)を診察、看護若しくは介護していた者
  • 患者(確定例)の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
  • その他:手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者(患者の症状などから患者の感染性を総合的に判断する)。
と定義している。1つ目の条件からして、同じ家に住むことは当然のこと、余程閑散とした車両でない限り、電車に乗車することも間違いなく濃厚接触だ。この定義ではどの程度の時間が「長時間」にあたるのかは定かでないが、「手で触れること又は対面で会話することが可能な距離(目安として2メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者(確定例)」と接触があった者」という定義を加味すれば、乗車率100%(座席が埋まる程度)超の電車に乗る事は、乗車時間に関係なく濃厚接触に当たるだろう。多くの人が想像する、立って乗車する人が手の届く範囲にいるような、所謂満員電車が濃厚接触に該当しない筈がない。
 東京都ではこの数日どんどんと感染者数が増えている。しかも感染経路を終えない人も多い。そんな状況でも日常を維持して通勤する人、通勤させようとする会社が少なくない。勿論、様々な理由でそうせざるを得ない人がいることも理解はする。しかし、今通勤している人の大半がその種の人・業種とは考え難い。そして何故か、政府も自治体もメディアも「感染者がいれば、同じ電車に乗車することは濃厚接触に該当する」とは伝えない

「パチンコはいいんですか?」関口宏が新型コロナ自粛で投げかけた素朴な疑問(水島宏明) - 個人 - Yahoo!ニュース


によると、3/29放送のTBS・サンデーモーニングの中で、都知事らが外出自粛要請を出していてる中で、パチンコ店に人が集まっている様子の映像を流し、司会の関口 宏さんが「パチンコはいいんですか?あれ…」とコメントしたそうだ。
 この記事の筆者は、
パチンコ業界が警察官僚や警察関係者の天下り先となっていて、与党自民党への政治献金なども毎年多額に上っていることはあまり知られていない。警察と業界との癒着は時々大手マスコミ以外が報じる程度だ。そうしたことも関係があるのか?
 K-1などのスポーツイベントや音楽イベント、映画業界まで「自粛」を求められて、受け入れているのにパチンコ業界だけが「例外」でいいという理由が他にあるのだろうか?
という見解を示している。確かにスポーツや音楽イベントには自粛を求めているのに、パチンコ業界は名指しされない、ということにも違和感はある。だが、パチンコ云々以前に、電車やバスはパチンコ屋以上に近い距離で不特定多数と接触するのに、一切乗車の自粛、運行の自粛という話が出てこない。更に言えば、一昨日の投稿にも書いたように「満員電車はそれ程危険じゃない」などと、矛盾に満ちたことを言う専門家までいる。

 こんなに矛盾だらけの話を、厚労省や政府、首相や首長らが公然と示し、更に専門家まで同じ様なことを言っているのだから、混乱が生じるのも、人それぞれ受け止めに温度差が生じるのも無理はない。最早日本の現在の混乱は新型コロナウイルスの感染拡大によるものではなく、対応に当たる者の無責任によって引き起こされる人災の側面が強い。


 外出自粛要請が出された週末が明けた昨日、突如都知事が緊急会見を行った。


緊急会見と言うので「何事か?」と思ったが、映像を見てもらえば分かるように、感染症対策についての新しい情報は何もなかった。新しい話は、
延期となった東京オリンピックを2021年7/23に開催すると決定
という話だけだった。何故このタイミングでオリンピックの日程が決定できるのか。何を根拠に来夏は既に開催できる状況だと判断しているのかも全く明瞭でない。これを決定した者、そして緊急会見として発表出来る者の気が知れない。
 勿論、東京オリンピックの日程にしか触れていないわけではなく、感染症対策として、夜間の外出を控えるように、と呼びかけはしたが、それは前回の会見でもほぼ同じことを言っている。ただ今回は、
若者についてはカラオケやライブハウス、中高年についてはバーやナイトクラブなど、接待を伴う飲食店に行くことは当面控えていただきたい
と、前回よりも具体的に業種を挙げて呼びかけた。
 しかし、なぜ対象をこれらの業種だけに限定したのか。パチンコ屋や、自分が一昨日の投稿で触れた性風俗店、そしてキャバクラやクラブ等と同様かそれ以上に近距離で乗車しなければならない電車やバスには全く触れていない。しかも、それらの業種を名指ししたにも関わらず、それらの店の利用が控えられることや、店側が営業を自粛することで被る不利益への補償に関する話も何もない。
 果たしてこんな呼びかけに実効性はあるのか。単にそれらの業種への偏見やレッテル貼りを煽るだけになりはしないか。複数の疑問を強く感じる。


 昨夜のTBS・NEWS23でも、自分がこの投稿で示した程でないにせよ、政府や都知事の示した見解に対する様々な疑問が呈されていた。しかし、TBSは相変わらずNEWS23の映像は殆どダイジェスト映像でしか掲載しない為、翌日には閲覧出来なくなるし、文字起こしもされない為、検索にも引っかからない。

NEWS23ダイジェスト TBS NEWS - TBSの動画ニュースサイト(2020/3/30)


 都知事が新たなオリンピックの日程を発表した翌日、共同通信は、USA Today が「無神経の極みだ」「世界中が疫病と死と絶望に包まれている時に、なぜ日程を発表する必要があるのか」「せめて暗いトンネルを抜けて光が見える時まで待てなかったのか」とし、2021年7月に感染が収束している保証はなく発表は拙速とする記事を掲載した、と報じた(「無神経の極み」と批判 五輪日程発表で米紙 | 共同通信 / Tokyo Olympics: No reason for IOC to wait on announcing new dates)。
 USA Todayの記事では、批判の矛先はIOCに向いているが、同じことを緊急会見で発表した都知事も同様に批判されていると捉えるのが妥当だろう。勿論決定に関与したであろうJOCや組織委、そして五輪担当大臣なるポストを擁する政府だって同様だ。何故日本のメディアからはこのような声が聞こえてこないのか。海外メディアの引用しかできずに、自ら指摘・批判できない日本のメディアの方がおかしい。引用すらしないメディアは目も当てられない。

 NEWS23の様な番組もあるが、政府や自治体の発表に矛盾する点があっても、批判や指摘を添えずに伝える番組が大半を占めている局しかなく、テレビのニュースや情報番組は全般的に見ていてイライラする。ヘイトを撒き散らす出版社程でないにせよ、自らの首を絞めているとしか思えない。斜陽になるべくして斜陽になり、自ら斜陽に拍車をかける。


最近やっとネット/民放生放送番組で、濃厚接触への配慮を演出する為か、出演者間の距離を確保し始めたが、明らかに対応が遅い。そして「検温したらOK!」かのように番組MCがツイートし、演者もリツイートしているが、感染後無症状の期間が4日から1週間程度ある、という話を知らないのだろうか。つまり複数の点で緊張感が感じられない。
 勿論「検温してもムダだ」というつもりは一切ない。しかし今のタイミングでは、熱がなければ全く問題ない、かのような認識を、視聴者に与えるようなことは控えるべきだろう。その程度の認識で殆どの番組が制作されているのだとしたら、多くの番組が政府や自治体発表、専門家説明の矛盾を指摘できないのも無理はないのかもしれない。


 トップ画像は、Photo by Serhat Beyazkaya on Unsplash を使用した。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。