80-90年代、日本は世界に冠たる経済大国で、東アジア一の優等生と認識されていた。90年代は韓国や台湾も経済発展に向かっていた時期だが、当時はまだ両地域製の製品は信頼性に乏しく、安さだけが売りだった。
しかし2000年を過ぎると、韓国台湾の企業は日本製と遜色ない製品を作り始めた。例えば、LGやサムソン、HTCやAsusなどの家電/電子機器は、今や完全に日本のブランドよりも存在感がある。日本のシャープも台湾の鴻海傘下に収まっている。日本では展開していないのであまり知られていないが、自動車の分野でも、韓国のヒュンダイとキアも世界的には最早日本のブランドと肩を並べる存在だ。台湾のバイク(スクーター)ブランド・キムコとSYMも日本ブランドに引けを取らない品質の製品を生産し、着実にシェアを伸ばしている。
2011年の東日本大震災/福島原発事故の影響などによって日本が足踏みしている間に、2010年以降も両地域の世界的な存在感は、2000年代後半から飛躍的な成長を遂げた中国程ではないにせよ、確実に大きくなった。
そして今年・2020年1月に中国・武漢から新型コロナウイルスによる感染症が広がり始めた。それから3ヶ月の経過、そして現状を見ても、日本政府の対応よりも両地域の対応が迅速で的確だったことは誰の目にも明らかだ。テレビでは殆どそのようなことが取り上げられないが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本が如何にグズで決められない国か、が世界中に拡まっている。
この評価は決して今だけの話ではない。勿論、今後全く日本が信頼されなくなる、ということはないだろうが、少なくとも現政権が続く限り、日本はまともな交渉相手と他国から認識されないだろう。もし現政権が交代しても「日本」という看板が掛かっていることに変わりはないから、収束後も間違いなく、その評価による多大な影響がある筈だ。
「新型コロナウイルスの感染拡大によって、日本が如何にグズで決められない国か、が世界中に拡まっている」と言える理由は、海外メディアによる報道を見れば明らかである。これまでにもその種の報道はあったが、昨日も2つそんな報道が目に付いた。
1つ目はフランス・ルモンドの、
Coronavirus : au Japon, les considérations politiques ont retardé la réponse sanitaire
という記事である。記事の見出は「コロナウイルス:日本では政治的事情が優先され、健康への対応が遅れている」のような意味である。記事では経済とオリンピック開催、そして政権の維持を政府が優先し、検査数が絞りこまれた結果、対応の遅れが生じている、と指摘している。また、2月のクルーズ船対応への不信感も隠さない。そして、安全神話の下で対策がおざなりにされた結果、福島原発事故が起きたことにも今の状況を重ね、コスト削減・経済最優先という過ちを再び繰り返している、とも指摘している。
もう一つはロイターの、
Wife of Japan's Abe criticised for group shrine visit, adding to his coronavirus woes
だ。こちらの見出しは「日本の安倍首相は、自身の杜撰なコロナウイルス対応に加えて、妻による集団神社訪問も批判された」のような意味だ。首相夫人が3/15に大分の神社を集団訪問していたと報じられたことに触れた記事である(「どこかへ行こうと」昭恵夫人が安倍首相“コロナ警戒発言”翌日に大分旅行 | 文春オンライン)。
また記事は、各所からかなり強い違和感が示された、星野 源さんが感染拡大防止を呼びかける為に投稿したSNSへ動画に、安倍自身がリビングルームでくつろぐ映像を添えてSNSへ投稿したこと(4/12の投稿)にも触れている。更に、以前にも、花見自粛が呼びかけられていた最中に、昭恵夫人が都内でグループで花見をしている写真がネットに出回り物議を醸したこと(3/28の投稿)にも触れている。
日本企業の殆どが、ロイターの調査に対して「安倍首相の対応には失望している」と回答し、その対応を非難しているという記述もある。
因みに、安倍氏は夫人の花見についても、2/29の会見で「スポーツジムやビュッフェスタイルの会食で感染の拡大が見られる事例がありました。換気が悪く、密集した場所や不特定多数の人が接触するおそれが高い場所、形態での活動も当面控えていただくとともに、事業者の方々には、感染防止のための十分な措置を求めたい」と述べていたにもかかわらず、「(妻が花見をしたのは)自粛要請がなされた公共の公園ではなくレストランだったので問題ない」という支離滅裂な見解を示していたが、この夫人の大分旅行に関しても「神社は3密じゃない」「参拝以外の観光はしていない」ので問題ないという、最早意味不明と言っても過言ではない擁護を繰り広げている(安倍首相、昭恵氏の神社参拝は「3密じゃない」 問題ないとの認識 大分訪問、事前に把握 - 毎日新聞)。明恵氏は一体どうやって大分まで移動したのか。公共交通機関を一切使わずに移動したのだろうか。もしそうだとしても、50人ものグループでの参拝だったそうで、安倍の認識能力はどうなっているのだろう。もしかしたら精神的な病に侵されているのでは?と疑いたくなるレベルだ。
更に付け加えておくと、太平洋の向こう側にも日本の首相夫人と同じ様な事をしている人がいる。
イヴァンカさん、外出禁止中に感染深刻な他州へ移動 ホワイトハウスは擁護 - BBCニュース
トランプ氏が米大統領になって以降、米国もかなりの速度でその世界的な評価を落としている国だ。民主的なプロセスで、間抜けをトップに選んだ国が、太平洋の向こう側とこちら側に1つずつある、ということだ。
あまり多くの海外報道に目を通してはいないが、海外での、日本政府の対応に関する報道は概ねこの方向性ばかりで、評価するという姿勢の記事は見た記憶がない。
ハフポストは、4/16に
「感染症を巡るネガティブな対日認識を払拭するため」 新型コロナ緊急経済対策に、ネット対策盛り込む | ハフポスト
という記事を掲載している。記事にある、日本の外務省が「感染症を巡るネガティブな対日認識を払拭するため」の予算・24億円を外務省が計上した、と報じた海外メディアとはワシントンポストのことだ(Japan sets aside $22 million to buff government’s global image amid pandemic struggles - The Washington Post)。
日本政府が体たらくさ加減を露呈しまくっている現状、そして海外メディアがそれを批判している状況に鑑みれば、つまり日本の外務省は、日本政府はやることやってないから不信がられている。やることやってないことを知られない為の策、若しくは正当化する為の策を講じる予算24億円を計上しました。ということだろう。厳しく言えば、この予算はプロパガンダを行う為の予算と言っても過言ではない。
これでは更に日本全体の評価を下げるだけだ。バカに鋏を持たせ続けるのはとても危険な行為だ。
4/14の投稿で、 安倍が4/13自民党役員会で、
- 休業に対して補償を行っている国は世界に例がない
- わが国の支援は世界で最も手厚い
4/14の時点で既に、安倍の当該発言が如何に欺瞞に満ちているか、その根拠まで示したが、昨日朝日新聞は再び「2日で入金「すごく速い」、翌月も支給 海外の休業補償 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル 」という、他国の対応が如何に迅速か、という記事を掲載している。またロイターは、日本政府の対応が如何に遅いか、に関する記事「アングル:遅すぎる10万円給付案、市場の反応は冷ややか - ロイター」を掲載している。
NHKを筆頭とした、安倍の当該発言を妥当性の検証も批判もなく伝えた報道機関は、今からでも検証や批判を行わなければ、間違いなく信頼性を失う。 というか、この投稿で紹介したルモンドやロイターのような論調の記事を書けないメディアは、既に世界的にも、そして国内でも信頼性を失いかけていると言えるだろう。
つまり、日本の評価を下げているのは決して政府だけではない。政府を批判できないメディアも、そしてこれまで何年も、自衛隊日報が複数回隠蔽されても、財務省や厚労省が公文書を改竄したり捏造したりしても、「森友加計学園問題」「桜をみる会の問題」首相が支離滅裂な答弁を国会で何度繰り返しても、政府を構成する与党・自民党を信任し続けてきた日本の有権者にも、その責任の一端は確実にある。
「日本の安倍政権だけが「コロナ危機で支持率低下」という残念さ そんな先進国はほかにない | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)」によると、
コロナ危機で主要国の支持率はどこも上がっている。しかし例外がある。日本の安倍政権だけは支持率を下げているそうだが、又今回も「喉元過ぎれば熱さを忘れる」を有権者がやるようであれば、日本の評価は堕ちるべくして堕ちるところまで堕ちるだろう。
日本人には相変わらず東アジア/東南アジア諸国を下に見ている人が少なくないが、最早日本の方がバカにされる側に成り下がってしまった、というのが個人的な認識だ。勿論、それでも日本のことを好意的に感じてくれる人もいるにはいるだろう。しかし、このままでは間違いなく所謂「味噌っかす」状態が決定的になる。