これまでと何も変わらない「緊急事態」を安倍首相が昨日宣言した。何も変わらない、に関しては4/6の投稿で既に指摘している。昨夜それに関する首相による記者会見、というか実質的には単なる原稿の朗読会が再び催された。もう見るのも嫌なくらいなのだが、批判をするには見ないわけにはいかない。
酔ってもいないしトリップするような薬物もやっていないが、自分には、朗読会で喋る我が国の首相がトップ画像のように見えて仕方がなかった。
朗読会の中で一番驚いたのは、終盤のイタリア人記者の質疑への応答だった。次の映像は、【ノーカット】安倍総理会見 「緊急事態宣言」東京など7都府県へ発出 (2020/04/07) - YouTube から当該部分を抜粋したものだ。
イタリア人記者の「日本政府の対応は他国とは異なる路線であり、対策には一か八かの賭けがあるように見える。成功すれば絶賛されるだろうが失敗だった場合にどのように責任をとるのか」という趣旨の質問に対して、安倍は、
最悪の事態になった場合、私たちが責任を取ればいいというものではありませんと言っている。恐らく安倍は「今は責任云々を考えている場合ではなく、最善の努力を尽くすべき時だ」のようなことを言いたかったのだろう。しかし前述の映像を見ても、官邸による文字起こしを見ても、恐らくそのようなニュアンスを感じ取れた人は殆どいないのではないか。但し、常に彼の言葉を肯定的に受け止め、勝手に補完して都合よく解釈する、彼を教祖のように崇めているカルト信者のような人達を除けば。
トップ画像にも書いたように、安倍は現在間違いなく内閣総理大臣である。本人が正しく認識しているかは、国会で「私は立法府の長」と何度も間違えるような男だから怪しいが(安倍首相「私は立法府の長」また言い間違え 直後に謝罪:朝日新聞デジタル)、内閣総理大臣とは行政府の長であり、つまり行政の最高責任者である。
その行政の最高責任者が、記者から、対応を見誤ったのが明白になった場合にどのように責任をとるつもりか、と問われ「責任をとればいいというものではない」と答えた。「責任者」は間違いなく責任を果たす為の存在であり、決してベストエフォート・努力をすればそれでいい、なんて立場の存在ではない。つまり安倍のこの発言は、私は努力はする、だがもし上手くいかなかったとしても、それは仕方のないことなので責任をとらない、と言ったも同然である。どう寛大に受け止めようとしても、責任者が責任逃れの布石を打ったとしか思えない。
昨日の投稿や3/5の投稿でも書いたように、「緊急時」は人の本性を露わにするものの一つだ。緊急事態宣言に関する記者会見の中での発言、ということに鑑みれば、安倍には責任をとる気もなければ、果たす能力もないことがよく分かるだろう。
そんな男が自国の首相であることに絶望する。そんな男が首相を7年以上もやっていて、有権者が信任し続けてきた。そして今もまだメディアは積極的に批判しない。最早自殺でもして死んだ方がマシかもしれない。それぐらいイライラが募っている。募集はしてないのに募っている(東京新聞:首相答弁でツイッター大喜利状態 「募る」と「募集」の違いをまじめに考えた:政治(TOKYO Web))。
BuzzFeed Japanは昨日、次の記事を掲載していた。
新型コロナでイライラや不安増えてない?日本赤十字社が「こころの健康」を保つためのガイドを公開。
日本赤十字社が国際赤十字と協力して、外出自粛や自宅待機など慣れない環境下でのストレスや、いつ日常が戻ってくるのかなどの不安に晒される中でメンタルヘルスを保つための、「こころの健康」を保つヒントとなるサポートガイドを作成した、という内容である。
記事の冒頭に「最近、こんなことを感じていませんか?」とあり、その例の1つに
- イライラしたり腹を立てやすくなる。
新型コロナウイルス、集団感染 京産大に誹謗中傷相次ぐ TBS NEWS
のような行為に走らないように、というニュアンスで挙げられた例なのだろう。
だが、今の政府の対応を見ていて、イライラさせられない人の方がまずい気もする。個人的には、今の政府の対応を見ていてイライラしない人はお人好し過ぎると思っている。生じる影響への対応策のない休校要請、お肉券・お魚券・GotoEat・Gototravel、収束後の高速無料の検討・布マスク世帯2枚配布、フリーランス・夜職への職業蔑視・差別、民間には損失補償なしだが五輪延期で予算100億追加など、ピントがずれてるどころか、あからさまな差別まで、立て続けにされたらイラつくのも当然ではないだろうか。
勿論、感染したくて感染したわけではない者やその人たちが属する組織に対して、「火をつける」「感染した学生の住所を教えろ」「殺すぞ」などと脅したり、感染者が出た大学の学生というだけで「飲食店が入店を断る」「アルバイトをクビになった」なんてことは、たとえイライラしていたとしてもやっていいことではない。だが、人々をイラつかせているのは何か。勿論、外出自粛や自宅待機など慣れない環境下でのストレスや、いつ日常が戻ってくるのかなどの不安などもその理由だろうが、個人的には無策などころか見当違いなことばかりして、肝心なことは何もしない行政が人々をイラつかせている部分の方が大きいと考えている。少なくとも自分はそうだ。
毎日新聞も同種の記事を昨日掲載していた。
コロナ疲れ、どうすれば 識者「現実逃避も必要」 厚労省、相談窓口開設 - 毎日新聞
記事によれば、WHO:世界保健機関が
メディアのコロナ情報から離れる時間も大切と発信し、専門家も「現実逃避も必要」と指摘しているそうだ。見出しにもあるように、厚労省が相談窓口を設け、メンタルヘルスのケアを始めたらしい。
イライラが募って収まらない場合、自分は兎に角寝る、と昨日の投稿で書いたし、過度の不安やストレスを避ける為には、適切な情報との距離感を保つことは確かに必要だ。しかし、前段でも書いたように、今の行政はやることなすことどれも見当違いで、適切な距離感を保ってイライラを抑制するのは、かなり至難の業だ。
概ね安心して対応を任せられる者がハンドルを握っていれば、バスの乗客は安心して寝たり休んだり出来るだろうが、高速道路を逆走しかねないような高齢者がバスのハンドルを握っていれば、安心して寝るなんて正気の沙汰ではない。シートベルトの不良か何かで運転手を交代させられないのであれば、常に見張っておく必要が生じる。今の行政が舵取りを続ける限り、情報から離れることもまた不安の種になる。つまり情報に接しても不安、情報から離れても不安という地獄が今の状況である。
厚労省がメンタルヘルスケアを始めたというのもへそで茶を沸かすような話だ。何故なら、厚労省はつい先日あからさまな職業蔑視・差別を公然と示したばかりだ。
- ナイトクラブや風俗業、休業補償の対象外 厚労省「公金助成ふさわしくない」に批判 - 毎日新聞
- 新型コロナ「保護者助成制度 風俗業は対象外変えず」厚労相 | NHKニュース / インターネットアーカイブ
それよりも何よりも、責任をとる気はない、と間接的にではあるが明言した者が束ねる政府に期待が持てる筈もないし、安心して身をゆだねる気にもなれないのは当然ではないだろうか。「事故が起きても責任は持ちません」と署名してバンジージャンプをすることはあっても、そう公言する航空会社の飛行機に乗る気には全くなれない。