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有権者のマルチタスク能力の限界による処理の非効率化を狙う政府


 マルチタスク (multitasking) とは、複数の作業を同時にもしくは短期間に並行して切り替えながら実行すること。例えば、携帯電話で話をしたりスマートフォンをいじったりしながら自動車を運転するような行為をいう(マルチタスク (心理学) - Wikipedia)。ただ近年単にマルチタスクと言えば、多くの人が連想するのは、複数の作業を同時に行うコンピューター処理の方ではないだろうか。

 今日のトップ画像には、マルチタスクのイメージとして千手観音を用いたが、日本でマルチタスクと言えば、聖徳太子の逸話が最も有名なのではないだろうか。そもそも近年では、聖徳太子という人物は存在せず、厩戸皇子を後年神格化したのが聖徳太子だという説が強まっており、日本のマルチタスクの草分け的なその話も実話かどうかは怪しいが、聖徳太子 - Wikipediaにも、
ある時、厩戸皇子が人々の請願を聞く機会があった。我先にと口を開いた請願者の数は10人にも上ったが、皇子は全ての人が発した言葉を漏らさず一度で理解し、的確な答えを返したという。この故事に因み、これ以降皇子は豊聡耳(とよとみみ、とよさとみみ)とも呼ばれるようになった
と紹介されている話が、今も逸話としてまことしやかに語り継がれている。

 Wikipediaでは、前述のページとは別に、コンピューター処理のマルチタスクに特化したページも用意されている(マルチタスク - Wikipedia)。そこでは、マルチタスクの反対語としてシングルタスクを紹介し、こう説明している。
逆に、同時に一つのタスクしか実行できない方式をシングルタスクという
つまり、マルチタスクと定義されるのは、複数の処理を一度に実行できるシステムである。でその反対が、一度に1つの処理しか実行できないシングルタスクだ。
 Gizmode japanのYoutubeチャンネルが公開した、ギズモードがオススメする「5万円以下のスマホ」4選【2020年最新】の中に、こんな表現があった。次の埋め込みムービーは当該部分(03:45)から再生するように設定してある。


ソニー Xperia 8 の画面が21:9の縦長ディスプレイを採用していることに触れ、
これからのスマートフォンってマルチタスク化がどんどん進んでいくと思う。例えば上でYoutube見ながら下でツイッターやるみたいな
という風に解説している。そのような使い方をするには、従来の16:9の画面では些か画面が縦方向に狭くて使い難く、21:9の縦長ディスプレイの方が適している、という話だ。
 なるほどな、と思いながら見ていたのだが、ここで言っているのは厳密に言えばマルチタスクではなく、マルチウィンドウではないのか?と感じた。ムービーの中で「androidは既にマルチタスクに対応してて」と言っているのだが、ここで言っているandroid OSのマルチタスク対応以前から、例えばバックグラウンドで音楽再生しつつWebブラウズするとか、電子書籍を読むなんてことは出来たし、アプリケーションによっては音楽再生しつつカーナビゲーションを使うなんてことも出来ていた。アプリケーションのインストール/ダウンロード作業をしつつ、ゲームをすることだって可能だった。
 複数の処理を同時に行うのがマルチタスクだとすると、同時に複数のアプリケーションを画面を表示するのは厳密に言えばマルチタスクではなくマルチウインドウだ。画面に表示されていなくてもバックグラウンドで別のアプリケーションを実行することができれば、それはマルチタスクに対応したシステムだ。
 但しWindows10でも、設定画面の中でマルチウインドウのことをマルチタスクと表現しており、少なくとも日本語では、現在マルチウインドウのことをマルチタスクと呼んでいる状況であり、ギズモード ジャパンのこの動画の表現が明確な間違い/混同とは言い難くもある。


 コンピューターやOSの処理システムだと、マルチタスクできることは概ね好意的に受け止められる。以前のPCやスマートフォンは、CPUの処理能力やメモリ容量、HDDへの書き込みスピードが充分ではなく、システム上マルチタスクが可能であっても、マルチタスクで作業すると動作が遅くなって逆に効率が落ちる、ということがしばしばあったので、同時に立ち上げるアプリケーションを厳選する必要があった(今でも性能が充分でない廉価機ではその必要がある)。最近の普及機以上の端末は、ハードウェアの能力に余裕がある状況で、いっぺんに多数のアプリケーションを動作させたりウインドウを表示させたりしても、重量級3Dゲームを動かすとか、長尺でエフェクトてんこ盛りな4K動画のエンコードを行うなどの処理を除けば、複数処理を同時に行っても動作が緩慢になることはほとんどなくなった。

 しかし人間はどうか?と言えば、聖徳太子から1000年以上が経っても、基本的な処理能力の飛躍的向上があるわけではなく、マルチタスクでgoogle検索すると、人間のマルチタスクは効率が悪い、処理の正確性が下がるという記事が多数ヒットする。
 以前、接客業をしていた際にそれはとても強く感じた。小売店や飲食店など不特定多数を相手にする接客業では、いつ客が来るのか、は不確定要素である。接客業でなく通常のデスクワークであっても、問合せ等の電話はいつかかってくるか分からない。電話番や接客専業スタッフがいれば、いちいちそれへの対応が必要になることはないのだが、小規模な企業/店だとそうもいかず、客や電話が来る度に、その時していた作業を一時中断して対応にリソースを割かなくてはならない。
 単純作業をしていたならその中断による影響はそんなに大きくないのだが、中断せざるを得ない作業が複雑なこと、例えば何かを考える必要があるような場合だと、一時中断による効率低下の度合いは大きく、している作業が複雑な程「客が来ない/電話がかかってこない環境で作業させてくれ!」と強く思うものだ。


 今日の投稿でなぜこんなことを書いたのかと言えば、


こんなツイートを見たからだ。昨日だけでも、
という、2つのBADニュースが話題になっている。
 昨日の投稿でも触れたように、その直前には「検察庁法改正案見送りを発表した矢先に、今度は国民投票法改正という、コロナ危機下でまたも不要不急の法改悪を政府与党が目指す」という件もあった。それ以外にも10万円現金支給の手続き不備、アベノマスクの杜撰さ、それ以外でもいい加減なコロナ危機対応、そして桜を見る会の問題と、政府は矢継ぎ早にトンデモ案件を起こし、有権者のマルチタスク能力の限界による、処理の非効率化を狙っている
 武田さんの言うように、次々と悪事が発覚するので、その情報に追いつくだけで大変だが、だからと言ってどれも決して見逃していい話ではない。こんな風に有権者のマルチタスク能力の限界、処理/判断の非効率化を狙ってくるような首相や政府を、今後も続けさせるのが「他よりまし」だとは全く思えない。寧ろ一刻も早く排除するべき程度の低さである、としか言いようがない。

 4/3の投稿「最早デバッグでは対応しきれないバグ塗れの国」でも書いたが、エラーだらけ/バグ塗れのプログラムは、修正するよりも1から書き直した方が効率的である。


 トップ画像は、File:Thousand-armed and eyed Guanyin in Miyin Temple, picture117.jpg - Wikimedia Commons を加工して使用した。

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