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固定概念に捉われず新しい発想で

 Think different. は、Windows95のヒットによって劣勢となりつつあったアップルが、1997年より展開した広告キャンペーンのスローガンである。同時期にスティーブ ジョブズが同社に復帰し、翌年・1998年には最初のiMacをリリースしている。つまりこの広告キャンペーンは、ジョブスやiMacと並ぶアップル復権の立役者の1つと言えるだろう。


 Think different. の意味を、ASCII.jpデジタル用語辞典では「発想を変える」「ものの見方を変える」「固定概念をなくして新たな発想でコンピュータを使う」と説明し、更に「キャンペーンでは、「世界を変えようとした人たち」としてアインシュタインやピカソ、ガンジーなどを挙げている」と付け加えている(Think different.とは - コトバンク)。
 次の動画は当時のTVCMだ。


 ものの見方を変える、固定概念に捉われず新しい発想で、というのが今日の投稿で言いたいことだ。何についてそのように思ったのかと言えば、 フランスで起きた、イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を生徒に見せた歴史の教員が首を切断し殺害された事件に関してだ。

仏で男が教師の首切断 授業でムハンマド風刺画見せる 写真7枚 国際ニュース:AFPBB News

 AFPは「殺害された仏教師、脅迫されていた 生徒とその父から告訴も 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News」とも続報している。暴力は断じて許されるものではないが、教員が生徒に見せた風刺画とはどんなものだったのか、どんな経緯でそれを提示したのかなどによっては、イスラム教を信仰する者への精神的な暴力に当たる恐れもありそうで、果たしてどこに問題があったのかは、今のところまだよく分からない。
 しかし、自分がこの投稿で指摘したいのは、この事案のどこに問題性があったのか、とは別のことだ。

 どちらの記事でもイスラム過激派という表現が多用されている。マクロン大統領は「イスラム過激派のテロ攻撃」だとの見解を示した、ともある。爆弾付きベストの存在が疑われ爆弾処理班も出動したとも書かれているが、爆弾が使用されたとも、発見されたとも書かれてはいない。確かにフランスと近隣国では、2015年のパリ同時多発テロ事件など、テロ事件と呼ぶのが妥当な事件も複数起きているが、この時点で断定的に「イスラム過激派のテロ攻撃」とするのは如何なものだろうか、という感がある。

 今も終わりが見えない新型コロナウイルスの感染拡大だが、最初に感染拡大が起きたのが中国・武漢だったことから、それ以前にヨーロッパなどで排水からウイルスが検出されていた(Italy sewage study suggests COVID-19 was there in December 2019 | Reuters)、という話もあるのに(感染者の便からもウイルスが検出されるそうで、排水から検出されたということは、その時点で感染者がその地域にいたということ)、一部の人が未だに武漢ウイルス・中国のウイルスと呼称している。最悪の場合、中国がウイルスを意図的に、若しくは生物兵器開発の不備などの理由でばら撒いたというニュアンスを込めて。
 WHO:世界保健機関は、特定の地域や民族に対する差別や経済的な悪影響を防止する観点から、感染症の病名に地名を使わない方針を定めている。武漢ウイルスなどの呼称も差別・偏見や風評被害を助長する恐れがあり不適切、というのが現在世界的な共通認識である。しかし日本では、財務大臣の麻生が3月に国会で

麻生財務相「武漢ウイルスというのが」「武漢ウイルスなるもの」「武漢ウイルスが...」 国会、会見で連発: J-CAST ニュース

「今回は武漢発のウイルスの話で、新型とか付いてるが、『武漢ウイルス』というのが正確な名前だと思うんですが、この武漢ウイルスなるものが出てきて...(略)」
「この武漢ウイルスなるものの影響、持続がどれくらいヨーロッパやアメリカに広まっていくか全く見通しがつかないのが...(略)」
「この武漢ウイルスが内外の経済に与える影響については、十分に注意する必要があろうかと思いますが...(略)」

と発言したり、自民党の議員がそれを受けて

などとツイートしていた。
 この自民党議員らの顔ぶれを見ると、明らかに差別や蔑視に疎い、というか寧ろ、差別や蔑視を厭わない面々である、という感しかない。確かに四日市ぜんそく、水俣病やスペイン風邪など、過去には地名が付けられた病名というのも多かったが、世界的な認識が、特定の地域や民族に対する差別や経済的な悪影響を防止する観点から、感染症の病名に地名を使わない、という風に変化していることを理解できない、若しくは認めたくない、差別や偏見に疎いどころか厭わない人たちが、国民の為に働く、というスローガンを掲げる政党(10/15の投稿)で国会議員をやっているのだ。
 もしも感染症の病名に地名を用いても差別や偏見が全く、若しくは取るに足らないレベルでしか生じないのであれば、誰もそんなことは言いださずに、これまで同様に地名を用いていたかもしれないし、それで問題はないのかもしれないが、つまり地名を用いることで実際に生じる問題があったから、WHOなどが地名を用いないという方針を現在示している。

 武漢ウイルスという呼称は差別や偏見、風評被害を防ぐという観点から不適切である、というのは前述の通り既に世界的な共通認識になっている。ならば、イスラム過激派という呼称も同様なのではないか。イスラム過激派という呼称は、自分の感覚では、2001年9/11に起きたアメリカ同時多発テロ事件以降急速に広まったように思う。それと共にイスラム教徒、イスラム教全般の印象も著しく悪くなり、人によってはイスラム教徒=過激派という偏見を持つ人すら出てきたように思う。勿論、イスラム過激派という表現だけが全ての元凶とは言えないが、イスラム過激派という表現も武漢ウイルスという呼称と同様に、イスラム教徒=過激派という偏見を生んでいる大きな要素、と自分には思える。付け加えておくと、テロという表現も恣意的に用いられる傾向が強い(2019年1/3の投稿)。

  もしイスラム過激派という表現を用いても、イスラム教徒=過激派という偏見が全く、若しくは取るに足らないレベルでしか生じないのなら、イスラム過激派という表現に何も問題はないだろう。しかし、イスラム教徒=過激派という偏見を持つ人が確実に存在しているのだから、全ての人が Think different. ものの見方を変え、固定概念に捉われず新しい発想で考え、イスラム過激派という表現の使用を控えるべきでないのか。
 自分には、イスラム過激派という表現を使用する人やメディアが、自民党の麻生や長尾や山田と同種に見えてしまう。

 トップ画像は、File:Apple logo Think Different vectorized.svg - Wikimedia Commons を使用した。

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