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共和党の看板がなかったら、自民党の看板がなかったら…

 虎が狐を捕らえて食おうとしたところ、狐が「俺は天帝の使いだ。だから食うと天帝に背くことになるぞ。嘘だと思うなら俺の後についてこい」と言うので、虎が狐について行くと他の動物が皆恐れをなして逃げた。他の動物は狐ではなく虎を恐れて逃げたのだが、そうとも知らずに虎は、愚かにも狐の言葉通りだと思った。という中国の故事に由来する慣用表現に「虎の威を借りる狐」がある。


 「虎の威を借りる狐」とは、強いものの権威をかさに着て威張る、ずる賢い者、を指す表現である(虎の威を借る狐とは - コトバンク)。似たような慣用表現に「人の褌で相撲を取る」があり、そちらは、他人の物を利用して自分の利益をはかること、自分は犠牲を払わずに平然と人のもので物事を行うこと、を意味する(人の褌で相撲を取るとは - コトバンク)。
 厳密にはそれらの表現のニュアンスとは少し違うのかもしれないが、昨今、虎の威を借りる狐や人の褌で相撲を取るが横行しているなと感じる。

というツイートを見て、

 共和党の看板がなかったら、どれだけの人がトランプに投票しただろうか。

と思った。今月行われた大統領選で「トランプ支持」「トランプへ投票した人」は本当にトランプを支持したのだろうか。トランプへ投票したのだろうか。勿論少なからずそういう人もいただろう。しかしトランプを支持したのではなく、トランプが共和党の候補だったから支持した、トランプが共和党の候補だったから票を入れた、という人も決して少なくないのではないか。それは決してトランプ支持でもトランプへ投票でもなく、共和党支持・共和党へ投票と表現した方が適切だろう。
 もしトランプが二大政党の共和党/民主党の候補でなければ、どれだけの人が支持したかの怪しい。つまり二大政党の一つの共和党という後ろ盾がなければ、トランプはあんなに票を集められなかっただろうし、そもそも4年前も大統領にはなれなかっただろう。勿論、トランプが共和党を騙したとか言いくるめたとは言えず、共和党とその支持者らがトランプを候補に選んだのだから、厳密には、虎の威を借りる狐、人の褌で相撲を取る、とは異なる状況かもしれない。だがそのような側面があることも事実だ。

 同じことは安倍や菅、その周辺にも言えるだろう。このブログでも今まで何度も指摘・批判をしてきたので、細かいことはここでは書かないが、安倍や菅、その周辺はこれまでの数年間、筋の通らない話を平然と繰り返し続けてきた。
 11/8の投稿で取り上げた毎日新聞の世論調査では、日本学術会議会員の任命拒否問題について、問題があるとした人は37%しかいなかったそうだが、時事通信が11/6-9に行った調査では、日本学術会議の任命拒否問題について、首相である菅の説明が十分か尋ねたところ、「十分ではない」が63.4%で、「十分だ」11.3%、「どちらとも言えない・分からない」25.3%を大きく上回ったそうだ。

菅内閣支持微減48.3% 学術会議「説明不足」6割超―時事世論調査:時事ドットコム

しかしそれでもまだ48.3%、およそ半数の人が菅内閣を支持すると答えている。
 もし彼らが自民党でなかったら一体どれだけの人が支持すると答えるだろうか。昨日の投稿で批判したように、前政権・現政権の新型コロナウイルスへの対応もかなり無責任極まりない。また前政権が掲げたアベノミクス・物価上昇2%、女性活躍などの公約は、5/12の投稿で指摘したように、7年以上も続いた政権にも関わらずその大半が実現していない。なのに菅は、基本的に前政権を踏襲すると公言して自民党総裁・首相になった。
そんな中身をよく見ずに「自民党だから」という理由で、前政権を支持した、現政権を支持している人がかなり多いのではないだろうか
 日本人はブランド好きで肩書や権威に兎に角弱い面が確実にあり(9/14の投稿)、それも中身をよく見ずに自民党というブランドだけで支持する人が決して少なくない、と推測する理由である。

 前述のツイートを見て、

 共産党の名でなかったら、どれだけの人が日本共産党を支持するだろうか。

とも思った。 1980年代に小学生だった自分は冷戦リアルタイム最後の世代だ。当時のハリウッド映画にはソ連や共産主義者を悪者として描かれた作品が多く、自分も漠然と共産党に悪い印象を持っていた。冷戦終結後に有権者になってからも「共産党は理想論ばかりで現実味がない」と思っていた。だが東日本大震災以降、段々と「もしかて今日本で最もまともな政党は日本共産党なのでは?」と思い始め、今ではそれがほぼ確信になっている。
 日本共産党の党名が共産党でなかったら圧倒的な支持を得ている、と断言することはできないが、少なくとも今よりは支持を得ていただろう。

 総理なので森羅万象全てを担当している、と自分で言ってのけた馬鹿な男もいたが、世の中の全てに注意を払い理解できる人などはいない。だから何か判断をする時にブランドや肩書を目安にすることは決して悪いことではない。しかしそれはあくまでも目安であり、より重要なのは中身・内容だ。ブランドや肩書ばかり重視して中身・内容を確認することを怠る、というズボラな人達ばかりだと、前段で指摘したような政権が8年以上も続くことになってしまう。そんな政権が8年以上も続けば、国は停滞、停滞どころか衰退してしまう。これからも衰退し続けるか、踏みとどまるかは、日本の有権者がブランドや肩書でなく中身を見ることが出来るか、にかかっている。

 トップ画像は、Fox Attacking a Cock by Benno Raffael Adam - ArtveeTiger's Head by Abbott Handerson Thayer - Artvee を組み合わせて加工した。

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