荻上 チキさんの「この速報テロップよ」のというツイートに添付されていた画像は、読売テレビのワイドショー 情報ライブ ミヤネ屋が映ったテレビ画面だった。画面の左上には「速報 菅首相 取材に応じる」とある。取材に応じることを速報として報じられてしまう菅、そしてそんな速報をしてしまう読売テレビや日本テレビの感覚は、一体どうなっているのだろうか。
毎年この時期になると、流行語大賞とか今年の漢字なんてのが報じられるが、日本漢字能力検定協会が発表した今年の漢字は「密」だった(今年の漢字は「密」 京都・清水寺で森清範貫主が揮毫 - 毎日新聞)。密が選ばれたのは、コロナ危機下で避けるべき状態を表しているからだろう。
この今年の漢字は、京都・清水寺でお坊さんが書き出して発表するのが毎年恒例になっているのだが、今年の発表の様子を少し離れた場所から移した写真を「風刺画」としてツイートしている人がいた。
コロナ危機下で避けるべき状態を表しているとして今年の漢字に「密」が選ばれたのに、その発表の場がまさに過密状態になっている、という意味だろう。
まず風刺「画」ではないし、発表場所は屋外なのでそこまで過敏にならなくてもいいような気もするし、また写真は現状以上に過密に見えるアングルから撮影されているようにも見える。だが一か所に報道陣が多く集まっていることに変わりはない。そして前述の毎年新聞の記事を見れば分かるように、メディアはそんな過密な報道陣を表には出さず、坊さんが密という字を書くところしか報じない。そんな意味ではこの写真には間違いなく風刺性がある。
毎年恒例の今年の漢字が発表されたことを受けて、官邸で記者が菅に「自身の今年の漢字」を聞いたそうだ。そもそもそんなことを聞くことに何の意味があるのか?他にもっと聞くべきことがあるだろう?と、そう聞いた記者の神経を疑うところだが、恐らく菅か周辺と事前に打ち合わせしたお膳立てだったのだろう。その問いに対して菅は「今年の漢字は『働(どう)』という字です」と答えたそうだ。
菅首相、今年の漢字は「働」 仕事師アピールか:朝日新聞デジタル
馬鹿っぽいと言うか間が抜けていると言うべきか、「働」という字を選んだ理由について、菅は
(菅内閣は)国民のために働く内閣、こう銘打っている
と説明したそうだ。
そもそも首相が「国民のために働く」なんてのは当然のことなのに、それをわざわざスローガンに掲げるというのは、自身が官房長官を務めてきた前政権が国民のために働いていなかったと自ら認めるようなものだし、前政権が当たり前にやっていたのに「国民のために働く」をスローガンにしたなら、それは如何に志の低い政権かの表れである、のような指摘を、既に10/15の投稿でもした。
しかも「働」という字を選んだ理由として、「国民のために精一杯働いたと自負しているから」ではなく、そうスローガンに掲げたからと言っているのだ。
つまり菅は、ごく当然のことをスローガンを掲げたが、それを実行しているという自負もなさそうだし、スローガンを掲げただけで悦に入っている懸念が非常に高い。前首相の安倍は、「今年を一文字で表せば「責任」ですかね」などと、一文字の意味すら分からない程の馬鹿だったが、菅もどんぐりの背比べである。
そうやってスローガンを掲げただけで満足する男は、平気で印象操作も行う。NHKによれば、菅は昨日、新宿区の国立国際医療研究センターを視察した際に記者団に対して、新型コロナウイルスの対応で医療機関に派遣されている医師や看護師などの処遇を向上させる考えを示したそうだ。
菅首相 コロナ対応で派遣の医師・看護師 処遇向上させる考え 新型コロナウイルス NHKニュース
この記事を見て「菅は医療関係者の環境改善に力を入れている」と評価するならば、それは詐欺師に騙されやすい人であると認めることになる。なによりもまず、なぜ今まで処遇改善に努めてこなかったのか、対応がかなり遅く評価するに値しないことを指摘する必要がある。更に対応自体も全く褒められたものではない。
記事には明確に「(菅首相は)新型コロナウイルスの対応で医療機関に派遣されている医師や看護師などの処遇を向上させる考えを明らかにしました」とあるし、官房長官が午後の会見で「緊急包括支援交付金を活用し、クラスターが発生した医療機関などに医師や看護師を派遣する医療機関を補助できるが、派遣される医師などの処遇に配慮する観点から、重点医療機関に派遣する場合の補助上限額を倍増することにした」と述べたとも書かれている。派遣されている医師や看護婦、ということは、常勤で働く現場の医師や看護師の処遇向上は行われないということか。もし分け隔てなく処遇改善を行うなら、わざわざ「派遣されている」なんて表現は付けないだろう。
また菅の周辺は、菅が10/26にNHK ニュースウォッチ9に出演したこと(10/28の投稿)に関して、打ち合わせ通りの内容でなかったとして「総理、怒っていますよ」「あんなに突っ込むなんて、事前の打ち合わせと違う。どうかと思います」とクレームをつけたそうだから(総理が怒っていますよ…官邸からNHKへの「クレーム電話」その驚きの中身(週刊現代) 現代ビジネス 講談社.html)、NHKは細心の注意(忖度)を払って述べた通りに報じているだろうし、もし万が一NHKが首相や官邸の意図とは異なる報道をしていたら、菅サイドは即座にクレームを入れているはずだ。
つまり「派遣されている医師や看護師」としていることには間違いなく意味があり、それは派遣されていない常勤の医師や看護師は処遇改善の対象ではない、という意味だとしか受け止めようがない。
2012年末に安倍自民党政権が成立して以降、今年の漢字は毎年「嘘」が妥当だろう。そのくらい今の日本は嘘にまみれている。この投稿で触れた件に限らず、オリンピックの誘致でも嘘が横行し、アベノミクス、女性活躍、働き方改革、なども全く実のない嘘でしかなかった。原発再稼働に関しても嘘が多く発覚しているし、この数年は公文書が改ざん/捏造/隠蔽される事案が横行している。コロナ危機下においても検査は必要ないという嘘、GOTOは感染拡大を起こさないという嘘、アベノマスクは歓迎されたという嘘など、嘘のオンパレードだ。
そんな嘘まみれの政権を、ほぼ常に国民の半数が支持しているのだそうだから、政府のみならず、
今の日本は嘘にまみれている
としか言えない。