今朝実家に寄ったら、姪っ子が「昨日もののけ姫見たんだ~」と言っていた。お盆前にもののけ姫か。少し前までお盆にジブリと言ったら火垂るの墓が定番だったのに…とすぐに頭に思い浮かんだ。Wikipediaの記録が正しければ、2009年を最後に、火垂るの墓はテレビで殆ど放送されなくなっている。2009年以降お盆前後の放送は2015年の1回だけだ。
火垂るの墓#テレビ放映 - Wikipedia
テレビ報道への不信が頂点に達し、最早報道関係者だけでなく業界全体の問題であるという認識から、今は殆ど地上波民放は見ておらず、日本テレビが何を放送しようが自分にはあまり関係のないことだが、もののけ姫を放送するより火垂るの墓の方がお盆には妥当だろ、という思いは確実にある。
金曜ロードショーの公式サイトを見てみたら、今週から3週続けてジブリ作品を放送するそうで、
- 8/13 もののけ姫
- 8/20 猫の恩返し
- 8/27 風立ちぬ
が放送される予定だそうだ。風立ちぬも戦争にまつわる映画だが、戦闘機の開発者が主人公で、この時期に放送すべき作品として、火垂るの墓とは比べるまでもない。
作品自体を否定するつもりはないが、この作品の受け止められ方は様々で、この時期に放送するのは寧ろ不謹慎という感すらある。火垂るの墓にも日本の戦争被害ばかりにフォーカスし加害性が描かれていない、という批判もあるが、戦争の悲惨さ、弱者から犠牲にされる実態が伝わるのは、明らかに火垂るの墓の方だ。
しかし、昨日日本テレビがもののけ姫を放送したことは、図らずも状況に即したものになった感もあった。何故なら、昨日の投稿でも取り上げたように、「ホームレスの命はどうでもいい。いない方がいい」「生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めてるんじゃない。生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救え。生活保護の人が生きてても得しない」というとんでもないことを言うバカが注目の的になっていたからだ。
もののけ姫には、主人公のサンと対立するエボシ御前というキャラクターがいる。彼女は製鉄を主な生業とする村の女統領で、村には製鉄の過程で山を破壊し川を汚す側面もあるが、身売りに出された女達や他では忌み嫌われる病人など、社会的弱者達を積極的に保護し、教育と職を与え、人間らしい生活が送れるような環境を整えており、村の人々から慕われている。監督の宮崎
駿は、この描写はつい30年前まで酷い扱いを受けてきたハンセン病のことを知ってもらう為のものだと言っている。
宮崎駿さん語るもののけ姫とハンセン病 - YouTube
つまりもののけ姫には、弱者を切り捨てることへ疑問を呈する要素が確実にある。放送が決まったのは前述のバカが注目をあびるよりも前だろうが、図らずもそれに対する牽制、反論のような意味合いが生じていたようにも思う。
宮崎 駿作品と言えば、天空の城ラピュタにもこんな台詞がある。
国が滅びたのに、王だけ生きてるなんて滑稽だわ。
これは、且つて強大な軍事力を誇ったが、今は誰も住まず荒廃を極めるラピュタに、その王族だったムスカが戻り、コントロールする術を手に入れてやりたい放題し始めたところに、それを阻止しようとして対立する別の王族の末裔・シータが言い放ったセリフである。
映画ではラピュタが滅びた理由の描写はなく、一説には疫病が原因で滅んだとも言われているが、科学を過信し過ぎた結果として荒廃したラピュタが描かれているのは、シータの一族が語り継いできた伝承からも明白だ。天空の城ラピュタのこの台詞には、次のような意図は含まれていなかったのかもしれないが、
強者だけで国が成立するというのは幻想に過ぎない
という要素を強く感じさせる台詞でもある。もしムスカがラピュタの王となり、強大なラピュタの軍事力を背景に世界を支配したとして、他に誰もいないラピュタが国として成立するだろうか。ムスカはラピュタを一緒に訪れた軍艦の軍人たちを、この役立たず共とどんどん殺していく。そんな調子では国の反映などあり得ない。そんなことは恐らくムスカ一代限りで終わることになるだろう。それは国として成立したと言えるか。
役に立たない者はいらない、役に立たない者の命なんてとるに足らない。沢山税金を納めている自分は、納税額が少ない者より優秀で偉い
なんてのは強烈な勘違いである。その税を納める為の収入はどこからきている?多くの消費者が経済を回すからその収入があるし、お前が高額納税しなくても、別の誰かが高収入を得て同じ様な額を納税するだけだ。金を稼ぐ能力に長けていることが事実でも、金を稼ぐ能力で人の命の軽重を図ろうだなんてのは、全く傲慢だし勘違いも甚だしい。
「子供を作らないLGBTカップルは『生産性』がないので税金を使って支援する必要はない」と主張した議員(2018年7/23の投稿)を、未だに処分もせず、議員を続けさせている党があるが、そういうことをなあなあにするから、再び同類の愚か者が出てくる。現自民政権は、在日コリアンに脅迫状が届いても、障害者に対する憎悪犯罪が起きても、ホームレス女性が殴り殺されても、差別や偏見に対する積極的な牽制・否定を一切しない。基本的人権を無視することを、暗に認めているとしか思えない。入管の問題もあるし、トランプと何も違わない。
更に言えば、そんな政権が8年も容認され続けているんだから、杉田やダイゴのような問題は、彼らだけの問題ではなく、間接的にではあるが、全ての日本人に責任があるとも言える。沈黙は加担にも等しい。
今まさに国が衰退していく過程を目の当たりにしている。今後も多くの日本人が、政府やメディアの「日本スゴイ」に騙され続けるなら、更に衰退が進行することだろう。
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