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偽装大国、偽装政権

 偽装結婚、という言葉が世間を賑わせたのは1990年代半ばだった。主に男性が、戸籍を売る/貸す形式で、日本で出稼ぎしたい外国人女性と実態のない結婚をする、バブル崩壊の影響でそれをやる人が増えた、のような話だった。

 北朝鮮の漁船に偽装した工作船、所謂偽装船が話題になったのは2000年前後だった。海上保安庁が漁船に偽装した不審船に接触する事案が複数起きた。その後も、脱北目的か密漁目的かスパイ目的の偽装船なのか定かではないケースも多いが、北朝鮮の漁船と見られる不審船は度々話題になっている。

 耐震強度偽装事件、マンションの耐震安全性を示す構造計算書偽造の問題が明るみになったのは2005年のことだった。内部告発によって一級建築士による構造計算書偽造が発覚、建築士は不動産開発業者からの圧力があったと主張し、国会での証人喚問も行われた。この事件後、他の建築士や設計事務所、不動産業者による同様の案件も発覚した。

 食材偽装問題が社会問題化したのは2013年だった。まず6月にディズニーリゾートとプリンスホテルがメニュー表示と異なった食材を使用していたと発表したが、メディアはそれ程取り上げず大きな話題にはならなかった。だが、10月に阪神阪急ホテルズが23店舗47品目でメニュー表示と異なった食材を使用していたと発表したことをきっかけに、帝国ホテルやリッツカールトンなどの有名ホテルを含む多数のホテルやレストランでの、産地偽装が発覚し社会問題化した。
 食品偽装の問題はこの件に限らず、2007年のミートホープ事件、白い恋人や赤福の賞味/消費期限偽装など、度々世間を賑わせる。

 それ以外にも三菱自動車のリコール隠し燃費偽装の問題もあった。燃費偽装に関しては、三菱だけでなくスズキもやっていた。排ガス検査の成分量を不正に書き換える偽装事案も発覚していて、日産、マツダ、スズキ、ヤマハで不正が発覚した。また負債を少なく見せかける偽装、オリンパスや東芝が所謂粉飾決算をやっていたことも、まだまだ記憶に新しい。最近は暴言を吐くだけのおっさんになり果てた堀江貴文が社長だった、ライブドアも粉飾決算をやっていて、堀江はその事件で有罪となり執行猶予なしの懲役刑を命じられた。

 北朝鮮の偽装船は日本が偽装した側ではないが、他は全て日本人/日本の企業が偽装をやった事案/事件である。日本では頻繁に偽装案件が発生している、と言っても過言ではない。


 しかし、この20年の日本で最も酷い偽装事案は、政府による偽装事案である。今の自民政権では捏造・改竄・隠蔽が横行しており、その例は枚挙に暇がない。関係者から数百人単位の感染例が出て、中には死亡した者もいるのに、オリンピックは安全安心に行われた、という話を恥ずかしげもなくやっている。最早日本は偽装大国と言っても嘘でないどころか、紛れもない偽装大国だ。
 安倍政権下で戦後最長の経済成長、という嘘、偽装も、あまりにも酷かった。政府とメディアは、2019年1月頃まで盛んにそうアピールし、粉飾決算にも等しい印象操作に勤しんでいた。それについては2019年1/30の投稿で指摘している。政府とメディアは、誤差のようなGDPの微増を理由に戦後最長の経済成長だと主張していた。しかもGDP算出方法にも手を加えてもいたのに。

 なぜ自民政権は経済成長を粉飾してまで演出したのか。それは2012年末に政権に返り咲いたアベ自民政権が、その目玉として経済政策を掲げ、それへの支持を理由に続いてきたからだ。2013年4月の世論調査を見れば、当時の空気感を理解できるだろう。

朝日新聞デジタル:内閣支持率60%、経済政策に好感 朝日新聞社世論調査 - ニュース特集

 所謂アベノミクスは、当初は明らかに好意的に受け入れられた。だが、デフレ脱却を目指し掲げた「物価上昇率2年で2%」はいつまで経っても達成できず、どんなに株価が上昇しようが庶民の生活には影響がなく、影響がないどころか実質賃金は減る状況で、徐々に張りぼて、つまり失敗である感が否めなくなっていた。それどころか、単なる大企業/富裕層優遇でしかなく、そのツケがその他大勢に回されているという実態が徐々に姿を現した。

 株価は実態経済と全く連動していないことは、新型ウイルス危機の影響でGDPがリーマンショック以上の落ち込みを見せているにもかかわらず、株価がバブル期の水準に到達しようとしていることから考えても明らかである。

10~12月期GDP、12.7%増 20年は11年ぶりマイナス:時事ドットコム

日経平均、終値3万0670円 31年ぶり高値: 日本経済新聞

 新型ウイルス危機になる以前、つまり2019年を見ても、戦後最長の経済成長というイメージが張りぼて・偽装でしかなかったことを、多くの日本人が実感していたことはよく分かる。自分がブログで厳しく批判した前後から、多くの人が同じ様なことを主張し始めた為、メディアもそれ以降は経済成長なんて殆ど言わなくなった。そもそもそれ以前から既に、経済政策はもう政権支持理由から脱落していた。そのころからなぜか、人柄、自民党だから、なんとなく、なんて曖昧な話が支持理由の上位を占め始めた。

 新型ウイルス危機以前、世界情勢に経済成長を強く阻害する要素はなかったが、日本の景気はよくならなかった。つまりどう考えても、アベノミクスと自ら呼んでいた自民政権の経済政策は失敗だったのだ。7年も続けても景気がよくならなかったのだから失敗以外の何ものでもない
 「アベノミクスがあったから今のような状況で済んでいる」なんてお人よしもいるんだろうが、経済成長という大風呂敷を広げながら、現状維持で及第点なんてのは甘すぎる。しかも、庶民の生活は消費税増税されただけで社会福祉は殆ど改善せず、人によっては後退している場合もあり、そんな話は全く受け入れ難い。


 ではなぜそんなことになっているのか。それは間違いなく舵取り役に問題のある人がいるからだ。勿論それは張本人の安倍であり、そしてその政権で官房長官を務め、今は首相になっている菅だ。彼らの言説の支離滅裂さ加減を見れば、論理的な思考が出来ないのは容易に想像がつく。自分達に都合のよいことばかり強調し、都合の悪いことは軽視/無視する。そんな結果ありきの思考では上手くいくはずがない
 同じことは経済政策の一翼を担う財務大臣にも言える。安倍政権発足当時からずっと財務大臣に居座っている麻生も相当問題のある人物だ。麻生は昨日・9/14にこんなことを言っている。

麻生財務相「医者のいう話、本当かよ」コロナ行動制限緩和案を巡り:東京新聞 TOKYO Web

(ワクチン接種の進展を前提とした行動制限の)緩和案について問われた麻生氏は「医者は結構反対といってたろ。医者とか、医者みたいな人がいっている話ね」と懸念の声があるとした上で、「ぼくはいろんな形で行動制限の緩和もやれるところがやってった方がいいと思いますね」と答えた。  夏の高校野球大会の開催や映画館での感染爆発を聞いたことがない点を挙げ、「医者のいう話が本当かよという話がいろんなところで出てきてますよ、現実問題として」と指摘。

 昨夏日本では行動制限緩和どころか、GOTO云々という移動促進をやった結果、年末年始の感染拡大を招いた。また今年3月に聖火リレーをやりたくて緊急事態宣言を解除したところ、すぐに感染者の増加に転じ、1カ月もたたない内に再び宣言することに。そしてオリンピック強行に伴う海外からの人の移動を起こした結果、過去最悪の感染爆発が引き起こされており、ことごとく緩和と過去を上回る感染拡大を繰り返している。
 そして、もう何度も指摘しているように、日本では未だに各国の足元にも及ばない程度の検査しかなされていない。高校野球や映画館における感染状況を緩和の根拠にしたいなら、それらの参加者/利用者に大規模で積極的な検査をしてからにすべきだ。しかも、高校野球に関しては、集団感染などを理由に辞退した学校もある。

 麻生は9/7に、まだまだ新規感染者が1日1000人以上も検出され、毎日のように重症者や死者も出ている状況なのに、「(新型ウイルス感染拡大は)曲がりなりに収束して、国際社会の中での評価は極めて高い」とも発言している。因みにEUは9/9に、日本を安全な渡航先から除外している(9/11の投稿)。

 ご都合主義の権現のような麻生が、8年も財務大臣/副首相でいられるのだから、その政権の経済政策が失敗するのも当然だろう。都合の悪いことは一切無視で、都合のよいことばかり強調、つまり平然と偽装をやるのだから。実態が追い付かなくても、よくなっている、と言い張り続けるだけだ。勿論経済政策に限った話ではなく、全ての政策について同じことが言える。有権者が偽装政権を今後も続けさせるなら、この国の未来は真っ暗だ。



 トップ画像には、婚姻届の商用利用可フリー写真素材6016 | フォトック漁船 ボート 船 - Pixabayの無料写真Japanese Black = 世界の牛 黒毛和種(雌) | JIRCAS Photo Archive www.jir… | Flickr超高層ビル, 建築, モダン, ハンブルク, 建物の外観, 構築された構造, アパート, 都市のシーン, アウトドア, 住宅建物 | Pxfuel を使用した。

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