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信頼は一日して成らず、失うは一瞬

 ローマは一日にして成らず、とは、大事業は長い間の努力なしには完成されない、ということのたとえだ。Rome was not built in a day. という英語の言い回しを日本語に訳した表現で、日本語の表現として定着したのは明治期なのだそうだ。

 それをもじって、信頼は一日して成らず、失うは一瞬、なんて言ったりもする。同様の趣旨の言い回しに、信頼を失うのは一瞬 取り戻すのは一生、なんて言い方もあるが、つまり、信頼もローマ同様に築き上げるのには長い努力が必要だが、その築き上げた信頼を失うときはあっという間で、簡単に崩れ去る、のような意味だ。

 トップ画像では、信頼をジェンガに例えて表現した。ジェンガは数段なら塔を築くのにそんなに大きな手間はかからないが、高い塔を築こうとすればするほど、些細なズレにも注意を払う必要が出てくる。つまり高い信頼を築くには相応の努力が必要になる。しかし、ジェンガで作った塔を崩すのは簡単だ。一つのブロックを乱暴に抜き去るだけで塔はいとも簡単に崩れ去る。注意を払ってブロックを抜いても、バランスを欠いてブロックを抜けば、数個抜くだけで塔は崩れる。信頼とはまさにそんなものだ。


 2000年代前後、韓国の自動車は世界中で安かろう悪かろうと言われていた。中国製の自動車も、2010年代前半まではそんな評価だった。しかしその後韓国車は、世界的にも一定のシェアを獲得していることが示すように、そんなイメージを払拭した。中国製の自動車も、まだ玉石混交状態ではあるものの、既に一部のブランドはGMやプジョーなどへOEMモデルを供給する程度の品質にはなっている。
 安全性の問題解決を図った1990年代以降、日本車は世界的な地位を築いている。しかし、2021年7/25の投稿でも書いたように、1950年代にアメリカへ輸出を始めた初代クラウンは、性能も悪く安くもないと酷評された。安かろう悪かろうですらない、単なる悪かろうだった時代が日本車にもあった。1973年のオイルショックを転機に、燃費のよさと安価さを背景に日本車が一定の評価を築き始め、1990年頃になると、燃費だけでなく壊れにくいという商品としての精度や品質でも評価を得て、現在に繋がる確固たる地位を築き始めた。
 これは自動車に限らず、バイクや電気製品、カメラなどでも同様で、1960年代以前は安かろう悪かろうのような印象だったが、改良や開発によって品質を向上させ、日本製が信頼を得ることに繋がった。最早1990年代のような最盛期の輝きはないが、それでもまだ一部の地域では日本製であること、日本ブランドの製品であることが信頼の証と認識されているケースは少なくない。


 しかし、その1970-90年代に築いた信頼も、その蓄えはもう後10年も持たないかもしれない。2010年代は日本政府や日本企業の不正が相次いで発覚した10年だった。品質をよく見せる為、経営状態をよく見せる為の企業におけるデータ改ざんや、政府の統計データ・公文書の改ざん、捏造、不都合なデータの隠蔽・廃棄が頻繁に話題にのぼった。また、東日本大震災で福島の原発が事故を起こしたのに、原発関連企業や国の機関などで杜撰な管理や不正などが次から次へと出てくる状態であることも、日本の信頼を失わせる大きな要素だ。

 1990年代に学生時代を過ごした自分は、学校で、日本はGNP/GDP世界第二位の経済大国と教えられた。2010年に中国に抜かれて、日本のGDPは世界3位になったが、それでも、1990年代までの日本を知っている世代は、日本は今も世界有数の経済大国と信じて疑わないだろう。しかし、その日本のGDPは、2010年代に改ざん捏造され、しかもその証拠が廃棄されていた

統計不正、4兆円過大計上か 20年度の全体5%相当 朝日新聞試算 [国交省の統計書き換え問題]:朝日新聞デジタル

 また、日本は新型ウイルスへの対応にも失敗している。少なくとも東南アジア以東のアジア圏では劣等国の代表だ。1/21の投稿など、感染拡大が始まって2年も経つのに、いまだに日本では新型ウイルス感染に関する検査件数が異様に少ない状態が続いている、ということはこれまでに複数回指摘してきた。このところ陽性率は3割、場合によっては4割を超えていることもある(注1)。広範な検査をやっている国の陽性率はおおよそ10%台なので、この日本の陽性率は間違いなく検査の少なさ、感染者を補足できていないことを意味している。
 これは、蔓延状態の時よりも、一時的に、もしくは全面的に収束した、と日本が発表しても、その話に信頼性がなくなることを意味する。何故なら、感染者を補足できていない恐れがあり、実際には感染が収まってはいないのに、検査が少ない所為で収束しているように見えているだけ、という場合が想定されるからだ。検査を広範に行って感染状況を正確に把握しない、できないということはそういうことだ。

 しかも厚労省はとうとうこんなことを言い出した。

濃厚接触者 検査なしでも医師が感染と診断可能に 厚労相 | 新型コロナウイルス | NHKニュース

 これでは、日本の新型ウイルス対応は余計に信頼を失うことになる。無症状の感染があるのだから、検査なしに感染を判断するということは、感染が見落とされることを意味するし、感染者数を少なく見せたいが為に、感染の恐れがあるのに検査をせずに感染していない、とすることも可能になる、ということだからだ。つまり、ただでさえ日本政府が発表する感染者数は、検査数が少なすぎて信頼性に乏しいのに、更にそれに拍車をかける行為以外の何ものでもない。


 このようなことで落ちるのは、日本政府、というか自民政府の信頼性だけであって、民間の信頼性は落ちない、というのは認識が甘すぎる。日本では一応民主的な方法で政府与党が選ばれているのだから、こんな政府をずっと容認して選び続けているのは日本の有権者であり、その信頼性には影響がないとか限定的なんてのは考えが甘い。
 たとえば、2020年の大統領選でトランプが再選を果たしていたら、アメリカの国としての信頼性はどうなっていただろうか。全ての有権者がトランプを信任したわけではないだろうが、国としてそのような選択をした、という捉え方は確実にできるので、アメリカの信頼性はバイデンが当選を果たした今よりも確実に下がっていたことだろう。

 つまり、欺瞞塗れの自民政権を信任し続ける限り、日本の信頼性はどんどん落ちていく、ということである。



(注1)

追記:1/25、大阪の陽性率はついに5割を超えた。



 トップ画像には、ジェンガ 木製ブロック ゲーム - Pixabayの無料写真 を使用した。

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