経済成長はなぜ必要なのか、を検索して調べようとすると、数多くの経済成長不要論が見つかる。しかしアメリカや日本、いや資本主義経済の国では大抵、経済成長を前提とした、或いは目指した政治と社会活動が行われているようにしか見えない。つまり、多くの人が経済成長を前提とした、或いは目指して、生活を営んでいると言えるのではないか。
なぜ経済成長が必要なのか、ということについて、以前こんな話を聞いたことがある。
若者5人が会社を立ち上げ、最初はそれぞれの月給は大卒初任給程度の20万円くらいだった。それぞれが若いうちはその月給で自分の面倒だけを見ればよいが、結婚して子をもうけようとしたら1人用の家では手狭になるし、子どもの養育にもお金がかかるようになる。更に年を重ねて親が定年を迎え、もし万が一のことがあれば、親の面倒を見ることも必要になる。更には、自分に何かがあった時に備えること、自分の老後の為の蓄えをしておくことも必要になる。
働いている者が年齢を重ねる程に必要になるお金が増えるのだから、それを賄うだけの給料が必要になるということであり、それを賄う為には売上を伸ばさないといけない。だから経済成長は不可欠だと言うのだ。勿論運が良ければ何もせずに売上は増えていくかもしれないが、大抵そんな甘いことはなく、だから売上目標を定めて、それを達成する為に策を講じて努力を怠ってはならない、のような話だった。
確かにミクロの視点で考えたら、この話にはある種の説得力がある。いや、マクロで考えても説得力はあるかもしれない。もし、子どもの養育費や老後の生活は社会福祉制度で全て賄われるような社会であっても、その原資は税金であり、全体の納税額が減少したら、そのような制度は行き詰まる恐れがある。つまり、そのような制度を維持する為には、一定の納税額を確保する必要があり、社会全体での経済力の維持、若しくは成長が不可欠だと言えるかもしれない。
また環境は常に変化していくので、現状維持を目標にしていたら取り残されてしまう恐れがある、という話もよく聞く。
システムを取り巻く環境は常に変化するし、システムを支えるハードは経年劣化する。だからやはりソフト的にもハード的にも常に完全なシステムなどあり得ない。
ということについては、2021年10/26の投稿で書いた。ある時点では完璧なシステムも、周囲の変化によって完璧ではなくなる。新たなクラック手法の開発、新たな脆弱性の発露、新たなウイルスの登場など、システムを取り巻く環境は常に変化していくし、ハードウェアも経年劣化で不具合を起こす恐れが確実にあり、だからシステムのアップデートとメンテナンスは常に必要不可欠だ。言い換えれば、その時点で完璧なシステムを消極的に維持しようとするだけでは、現状維持もままならない、ということになる。
経済活動にも同じことが言える。今売れているものが来年も同様に売れ続けるとは限らない。世の中には常に新しい商品が登場するが、定番と呼べるレベルで長く愛されるようになる商品は、ほんの一握りでしかない。しかも一度定番になっても常に安泰ではない。たとえばおかしのカールなんかがそれだ。歌手やタレントなんかも同じで、一度売れた者でもすぐに飽きられてしまうのが常であり、同じ1つのネタやタレント性だけでずっと活躍できる者はほんの一握りでしかない。つまり売上や収入を維持する為には、現状維持を目標としていたのでは大抵それを達成することはできない。だから多くの企業は手を変え品を変え新しい商品を開発して投入し続けるし、歌手は新しい歌をつくり、芸人は新しいネタをつくる。
成長しないと維持できない社会、というのはある意味ではいかがわしい気もするが、一方で、成長とは進歩であり発展である、という風にとらえれば、人間の営みには進歩と発展は不可欠である、という話には何もいかがわしさはない、という気もする。
昨日の投稿でも、2/4の DOMMUNE
の配信に触れたが、2/4の配信の後半は、1/29の配信で収まらり切らなかった、「Imagine
XR / 想像してごらん?」ジョンレノンとメタバース の続編だった。
- au5G Presents「NEWVIEW DOMMUNE」Vol.8 「Imagine XR / 想像してごらん?」ジョンレノンとメタバース!!!!!! - DOMMUNE
-
au5G Presents「NEWVIEW DOMMUNE」Vol.9 <CHAPTER1> 「META歌舞伎 Genji Memories」〜古典芸能とメタバース、大衆芸能と受肉 - DOMMUNE
この配信では、タイトル通りジョン
レノンのイマジンについて取り上げいた。配信では、ジョン
レノンとイマジン、それとメタバースやXRを絡めた話をしていたが、ここで取り上げるのは、その歌詞の内容だ。
イマジンが発表されたのは1971年のことで、その背景には確実にベトナム戦争と反戦の盛り上がりがある。つまり、昨日の投稿でも触れた、1967年夏にアメリカ合衆国を中心に巻き起こったサマーオブラブとも確実に関係がある。
IMAGINE. (Ultimate Mix, 2020) - John Lennon & The Plastic Ono Band (with the Flux Fiddlers) HD - YouTube
Imagine there's no Heaven It's easy if you try No Hell below us Above us only sky Imagine all the people Living for today... Imagine there's no countries It isn't hard to do Nothing to kill or die for And no religion too Imagine all the people Living life in peace
想像してごらん 天国なんて無いんだと ほら、簡単でしょう? 地面の下に地獄なんて無いし 僕たちの上には ただ空があるだけ さあ想像してごらん みんなが ただ今を生きているって... 想像してごらん 国なんて無いんだと そんなに難しくないでしょう? 殺す理由も死ぬ理由も無く そして宗教も無い さあ想像してごらん みんなが ただ平和に生きているって...
有名な曲なので、いちいち触れる必要もないかもしれないが、曲の冒頭は、こんな風に反戦と平和を訴えていることを強く連想させる内容だ。1970年前後にベトナム戦争への反対が高まり、イマジンは今でも歌い継がれる曲になった。だがその後もアメリカは、いやアメリカに限らず世界中のあちらこちらで、戦争を起こす国、戦争が起きる国は後を絶たない。そして今もまた、2/1の投稿で書いたように、ウクライナを舞台に米ロの緊張が高まりを見せている。
ジョン レノンは、前述の歌詞の次にこう歌っている。
You may say I'm a dreamer / 僕のことを夢想家だと言うかもしれない
確かにイマジンが発表されてから50年が経っても、その曲に込められた思いは現実には程遠い状態で、ジョン レノンが自ら歌ったように、それは理想論でしかなかった、とも言える現実が未だに眼前に広がっている。だがしかし、1970年頃にベトナム戦争への反戦運動が高まっていなかったら、現実はいまよりずっと悪い状態だったのではないか。
つまり、2/4の DOMMUNE 配信を見て、いや、ジョン レノンのイマジンをあらためて聞いて思ったことは、
理想と現実にはこれからもずっと大きな乖離が存在し続ける。だけど「だから理想なんてムダだ、現実を見ろ」みたいなことを言う奴は愚かだ。そんなこと言ってたら進歩や発展が遠のくどころか、先にあるのは衰退だけ。それは今の日本が体現している。
ということだ。
トップ画像は、お金 現金 木 - Pixabayの無料ベクター素材 を使用した。