ヤングマガジンで連載中の漫画「月曜日のたわわ」の全面広告が、4/4の日本経済新聞全国版に掲載されたことが、大きな波紋を呼んでから、明日で約2週間になる。しかし今も、この問題に関するツイートがしばしばタイムラインに流れてくる。4/6の投稿・4/10の投稿とこれまでにも2度これに触れたが、今週もまた動きがあった。
もうこれまでに2度もそれに関する投稿を書いているので、今更詳細に説明はしないが、自分は、日経の広告掲載には明らかに問題性があった、という立場だ。それはこのブログの投稿だけでなく、その立場でのツイートも何度もしてきた。
今週あった動きとは、UN
Women:国連女性機関が、当該全面広告を「容認できない」と抗議する書面を日経新聞に送付していた、という件だ。
国連女性機関が『月曜日のたわわ』全面広告に抗議。「外の世界からの目を意識して」と日本事務所長 | ハフポスト NEWS
日経新聞は、UN Women
が主導する、メディアと広告によってジェンダー平等を推進し有害なステレオタイプ/固定観念を撤廃するための世界的な取り組み「アンステレオタイプアライアンス」に賛同し加盟しているが、当該全面広告はそれに反している、という抗議がなされた、という話だ。ざっくりとではあるが、分かりやすく言い換えると、巨乳女子高生で癒やされようとかいうマンガの全面広告は、「アンステレオタイプアライアンス」の理念に反するから止めろ、という指摘だ。
この件について、こんなツイートがあった。
元陸上選手の為末 大が、この件について次のようにツイートしている。
為末は国連女性期間が「不快だからそんな広告を掲載するな」と言っていると解釈しているようだが、前述の通り、不快だから止めろなんて話ではない。為末の読解力が驚異的に低いか、もしくは都合が悪いから歪曲しているかのどちらかでしかない。また、ジャーナリストの江川 紹子も、こんなツイートをしている。
江川の指摘どおり、決して表現の自由に全く関連のない話とは言えないが、しかし江川の論は、日経新聞が、国連女性機関の「アンステレオタイプアライアンス」の理念に賛同して参加していたのに、その理念に反したから指摘・抗議されている、という事実を踏まえていない。雑で拙速なのは一体どちらか。
こんな風に、この件で広告掲載を擁護/容認する人たちは、総じて読解力が低かったり、読解力が低くないなら、都合の悪いことを故意に歪曲してくる。それは、ハフポストの当該記事を紹介するツイートへのリプライ/引用リツイートを見てもよく分かる。4/6の投稿・4/10の投稿で指摘したように、合理性に著しく欠けていたり、為末や江川同様に都合の悪いことを無視したり、話を歪曲したり、論点を盛大にずらしたりして、擁護(当該広告掲載への批判への批判)をしている人たちばかりだ。
ニューヨークの国連女性機関本部が、「月曜日のたわわ」の全面広告を掲載した日経新聞に「容認できない」として抗議していたことがわかりました。
— ハフポスト日本版 / 会話を生み出す国際メディア (@HuffPostJapan) April 15, 2022
4月11日に同社に宛てた書面では、対外的な公式の説明や、広告の掲載の可否を決めるプロセスの見直しなど求めました。 https://t.co/7GPX0zk3or
自分はマンガやアニメが好きだし、エロ漫画やお色気漫画も結構読む。だからこそバカな擁護はそれらの立場を悪くするだけだと強く思っている。そしてマンガやアニメを愛好する者こそが、その界隈におけるバカげた主張を批判しなければ、それらを楽しむ為の土壌が失われてしまうという危機感も強く感じている。だからこうやって何度も何度も、バカげた主張を指摘・批判し、否定する投稿を書いている。
しかしその所為で、というか、この件に関するバカげた擁護がいつまでも繰り広げられている所為で、それを見るたびにイライラしストレスを募らせる日々が、この2週間ずっと続いている。ストレスになる言説からは距離を置いた方が精神衛生上はよいのだが、しかし、それで気に入らない批判や指摘も遠ざけてしまうと、間違いなく偏った思考に陥る。だからどこで線引するかのさじ加減はとてもむずかしい。
また、しばしば「くだらない言説、整合性に欠ける言説は放っておけばそのうちなくなる。だから無視すればいい」のようなことが言われるが、果たしてそれは本当か。2021年8月に在日コリアンが集住する京都府宇治市ウトロ地区で放火事件を起こした容疑者は、主にヤフーニュースのコメント欄を情報源として排外主義に染まり、放火の動機には、
日本のヤフコメ民にヒートアップした言動を取らせることで、問題をより深く浮き彫りにさせる目的もあった
と言っているそうだ。
「ヤフコメ民をヒートアップさせたかった」在日コリアンを狙った22歳。ウトロ放火事件“ヘイトクライム”の動機とは
やはり、WEBやSNSが出会うべきでない少数派をつなげることによる、否定・抑制されるべき価値観の増長が起きている、と言えるだろう。ネット以前なら、そのような人たちは全体から見れば少数派なので、既存のコミュニティの中では孤立するしかなかった。そしてコミュニティの中でその種の価値観や認識が軽蔑されることで、そのような価値観や認識や感情は抑制されていたんだろう。だが、ネット上のコミュニティで同士を見つけてしまうことで、抑制されなくなってしまっている、増長してしまっている側面がある、としか思えない。
つまり、「くだらない言説、整合性に欠ける言説は放っておけばそのうちなくなる。だから無視すればいい」というのは大きな誤認で、放っておいたら大変なことになる、というのが実情だろう。
だから、日経新聞が掲載した月曜日のたわわの広告に関するバカげた擁護についても、無視すればいい、放っておけばいい、とは言えない。今後も今まで通りアニメやマンガを楽しみたいなら、アニメファンやマンガファンこそが、ハッキリと、バカげた擁護は止めろ、と言わないといけない。そうしなければ、アニメファンやマンガファンは全般的に同類だと見なされる状況にもなりかねない。
トップ画像には、牢屋 心臓 悲しみ - Pixabayの無料ベクター素材 を使用した。