このブログでもこれまで何度も取り上げてきた、所謂オタク系サブカルにおける、エロ/性愛表現に関する話題。一番最近に書いたのは、DOMMUNE の「『あんどろトリオ』完全復刻記念!!!!! 萌えアートの始祖・内山亜紀からの贈り物 - もうひとつの「非現実の王国」-」という企画を受けて書いた、1/27の投稿だ。
その投稿は、概ねオタク系サブカルにおけるエロ/性愛表現を擁護する立場で書いたが、それでも手放しで全面的に擁護したわけではなく、どんなところに問題性があるのか、も書いたつもりだ。また、2021年9/17の投稿などでは、オタク系サブカルにおけるエロ/性愛表現について、それを成人向けではなく一般向けとしても妥当とし擁護する立場の人たちの感覚のおかしさ、を指摘してきた。
今日の投稿で再びオタク系サブカルにおけるエロ/性愛表現について書くのは、ヤングマガジンで連載中の、比村 奇石の漫画「月曜日のたわわ」の全面広告が、4/4の日本経済新聞全国版に掲載されたことが、一部で話題になっているからだ。
「月曜日のたわわ」全面広告が日本経済新聞に「不安を吹き飛ばし、元気になってもらうため」(コメントあり) - コミックナタリー
「月曜日のたわわ」は、作者が毎週月曜に自身のツイッターアカウントに投稿していたバストの大きな女子高生などのイラストがオリジナルで、そのイラストをまとめ短編にした同人誌が2015年から頒布され、2020年からヤングマガジンにて同人版を再構成した商業漫画としての連載が始まった。たわわとは、当然ふくよかなバスト、所謂巨乳を意味した比喩である。同作品は明らかにバストのふくよかな女性、しかも未成年・女子高生をメインテーマにしていて、そこには確実に性的な視点がある。日経新聞に掲載された広告は、ヤンマガ版の第4巻発売に関する告知であり、コミックナタリーの記事によると、今回の新聞広告について、ヤングマガジン編集部は「4月4日は今年の新入社員が最初に迎える月曜日です。不安を吹き飛ばし、元気になってもらうために全面広告を出しました」と語っているそうだ。このコメントだけだと、特に問題はないかのように思えるが、同作品では、あるサラリーマン男性が月曜日に満員電車の中で胸のふくよかな女子高生に会うことを楽しみにしている、という設定があり、満員電車で会うという設定を利用した、体を密着させる表現が多く使われている。また、ツイッター投稿については「月曜朝の社畜諸兄にたわわをお届けします」と題していた。
このことを加味すれば、サラリーマン男性が満員電車で巨乳女子高生と体を密着させることなど、胸のふくよかな未成年の女性を性的な視点で描いた漫画を見て、新入社員には不安を吹き飛ばして元気になって欲しい、とヤンマガ編集部は言っているんだろうし、日経はそれを問題無しとして紙面に広告を掲載した、ということなんだろう。
自分はヤンマガをずっと読んでいる。だから、ヤンマガは一般向け青年誌だが、エロ漫画誌に載せるべきような漫画を掲載することも知っている。では、懸案の月曜日のたわわはどうかといえば、青年誌に向かない過激なエロ表現が散りばめられているとまでは言えず、中高生も読むことを前提としたお色気漫画のレベル、とも思う。中高生が読者の中心ならば、彼らが同世代のセクシャルな側面が描かれた漫画を読みたいと思うのはそんなにおかしなことではないし、月曜日のたわわレベルのお色気表現なら、それを中高生向けに提供するのはそんなに異様なことでもない、とも思う。
しかし1/27の投稿でも、「それ(女子高生設定を強調したセクシャルなグラビア写真や、未成年を性的に描いているマンガ作品)を大人の編集者や漫画家が企画していることを考えると、ある種の気持ち悪さも感じる。自分が10代-20代前半の頃は全くそんなことは思わなかったが、30代を過ぎた頃にそんな感覚が生まれた」と書いたように、誰が誰に向けて生み出した表現かによっては、気持ち悪さも生じてくる。次のツイートは2020年10/22のツイートだが、そんな気持ち悪さが背景にあった。
1/27の投稿からこの投稿を書くまでの間に、テレビ朝日のバラエティー番組・アメトーークで、ヤンマガ芸人という回があったようで、その中でヤンマガの現在の主な読者層について語られていた。
創刊から恐らく少なくとも1990年代頃までは、主な読者は中高生とその少し上の世代だったんだろうが、現在は30-40代がほとんどなのだそうだ。高校生(未成年)を性的に描いたり、水着と称して制服がはだけて下着が見えるグラビアを企画したりするのも、中高生が主な読者なら許容範囲か?とも思っていたし、今も建前上は10-20代に向けた青年誌という体裁だろうから全否定まではできないが、オッサンがオッサンの為に一般商業マンガで未成年を性的に描くことをやっていると思うと俄然気持ち悪い。日本人は本当にロリコン傾向強い。
そして、お色気マンガとは、ある程度の後ろめたさを持って読むようなものである。おおっぴらに読むようなもんではない。お色気マンガをおおっぴらにするのは、職場でエロ本を堂々と読んだり、ヌードカレンダーを貼るようなのと大差ない。つまりセクハラのようなもんだ。つまり、全国紙・大新聞に全面広告を出すようなもんではない、と言えるだろう。
このようなことを書くと、グラビアだって実際には18歳以上の女性が女子高生を演じているのがほとんどだし、漫画もあくまでもフィクションだから、被害者はいないのでいいじゃないか、というような擁護が出てくる。それは決して間違いではなく 1/27の投稿でも書いたように、自分もその話は正しいとも思っている。
しかし一方で、その話の説得力は限定的だとも思っている。なぜなら、日本の男女格差が未だに深刻なまでに低いままだからだ。日本が世界的に見て男女平等先進国なら、あくまでもフィクションだから、という話にも説得力が出てくるんだろうが、現実はそうでない。だからフィクションであってもキモい。しかも、男女格差解消に消極的な政党が与党に選ばれ続けていて、格差解消の兆しも見えないのが日本の現状だ。
その話に説得力を持たせたいなら、オタク系サブカルを愛好する者が率先して男女格差解消に務めるべきなのだが、そう努める人よりも、おかしなことを言うオタク系サブカル愛好家のほうが目立ってしまっている。それについて書いたのが、2021年9/17の投稿だった。そして最近では、少年マガジンで「ラブひな」など美少女お色気マンガを連載していた漫画家・赤松 健が、その男女格差解消に消極的な政党である自民党から、今夏行われる参院選に立候補することが伝えられていて、さもありなん、という感しかない。
このように月曜日のたわわの広告の件が話題になっているが、それについても、これまでと同様に見当違いの擁護が繰り返されている。2021年9/17の投稿でも書いたように、見当違いの擁護を繰り返すことは、オタク=キモい というイメージを自ら強調することでしかない。
例えば、他の新聞広告を引用して、これらには何も言わないのに、なんで今回だけ?みたいなことを言っているツイートがある。
中にはオタク系サブカルコンテンツだからという理由で否定しているバカもいるかもしれないが、月曜日のたわわの広告は、オタク系サブカルコンテンツだから批判されているのではなく、未成年の女性に性的な視線を向ける表現が多用された作品であること、それを読んで元気を出してほしいという、あからさまに男性が女性に対して、しかも未成年女性に対して性的視線を向けることを推進する趣旨だから批判の対象になっているのだ。しかしオタク系サブカルコンテンツだから非難されているということにした擁護が目立つ。多分そういうことにしないと擁護できないから、そんな歪曲をやるんだろう。
また、このツイートで引用された広告が、月曜日のたわわの広告の趣旨と同じであったのに批判を受けていなかったとしても、だから、月曜日のたわわの広告だけ批判されるのはおかしい、とは言えない。そのようにして批判を退けることは、過去に受けたセクハラ被害について、ようやくそれを告白し訴え出ることが出来た者に対して、今更言うなよ、その時はお前も楽しんだんだろ? のようなことを言うのと同じである。これまでOKだったんだからこれからもOK、というのは大きな勘違いだ。
このツイートも似たようなものだ。個人的には江口 寿史のこのイラストも、なんでこんなにパンツが見えそうなくらいスカートを短く描くんだろう、とも思うものの、決して女子高生を描くこと自体が批判されているわけではないのに、これはOKでなんで月曜日のたわわはダメなの? というのは、私は話をよく理解せずに短絡的な思考に陥っている、という告白でもある。
例えば、今日のトップ画像は女子高生が教室にいるイメージで作ったものだが、それと、ここに示す2枚目を比較したら、何がOKで何がNGかよく分かる。
特にストーリーなど背景のないイラストである場合、スカート丈の短さ、不自然な裾のはね方など気になる部分はあるものの、1枚目の画像は全年齢に向けた広告等で使用しても大きな問題はないだろう。しかし2枚目はどうか。背景を暗いピンクの部屋、ベッドの画像に差し替えただけだが、ラブホテルを連想させる背景なので、それだけでも性的なニュアンスはかなり高まる。これを全年齢に向けた広告で使うのには問題がある、と判断する人の割合は確実に増えるはずだ。
当該ツイートへのリプライに「オタクが興奮している姿が想像できるかが指標だから」というのがあるが、実際にまさにその通りで、性的な要素を含む表現かどうかは問題性があるかないかの大きな要因だ。もちろん”オタクが”に限ったことではないが、性的な興奮を煽る表現かどうかに要因はある。月曜日のたわわの広告について言えば、メインのイラスト自体に性的要素はあまり感じられないものの、その作品自体は多分に未成年女性を性的に見る要素を含んでいる、というかそれがメインテーマの作品だし、左下に掲載されている1巻の表紙では、明らかに不自然なほどにふくよかなバストを強調している。
これら以外にも見当違いの擁護は多数見られ、全部を指摘したらきりがないほどだ。それで本が1冊かけるんじゃないか?というほどに。
いつになったらオタク系サブカル愛好家たちは、一般的な感覚を身につけることができるんだろうか。もちろん、オタク系サブカル愛好家の中にも既にまともな感覚を身につけている者もいるし、オタク系サブカル愛好家でなくてもまともな感覚を持たない者もいる。自分が言いたいのは、オタク系サブカル愛好家は全員まともな感覚を持たず、それ以外の感覚が絶対に正しいではない。
本来そんなことは説明するまでもないのはずだが、このような件に対する、一部のオタク系サブカル愛好家たちの見当違いの擁護の酷さを見ていると、そう明言しておかないと揚げ足を取るんだろうという感しかないのだ。
自分はヤンマガが好きだし、お色気マンガもこれからも普通に読みたい。なので嫌悪する/されるような状況にはしたくない。だからこそヤンマガ編集部やお色気マンガを描く作者、そしてそれを愛好する人たちにこそ、今すぐにまともな感覚を身につけてもらいたい。
この件からも、日本の男女格差が解消し男尊女卑が概ねなくなったと言える日が訪れるのは、まだまだ遠そうだ、としか思えない。
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