桂 三度という落語家がいる。最初にジャリズムというコンビのボケとして、本名の渡辺 あつむでデビューし、コンビ解散して一時放送作家になったり、その後またジャリズムを再結成したりと紆余曲折を経て、2011年に再びジャリズムを解散し、桂 三枝(現文枝)に弟子入りして落語家に転向した芸人だ。
彼は2007年に、世界のナベアツというキャラクターで1人ネタをやり始め、3の倍数と3が付く数字のときだけアホになります、というネタがウケて注目された。
見ての通り、1-40まで順に数字を数えていき、3.6.9.などの3の倍数や、13.23.30.31など3がつく数字のときだけ奇声をあげる、というネタだ。29までにどんなルールなのかを示し、30-39で畳みかけるという構造になっている。2の倍数と2のつく…だとややせわしなくなってしまい、4の倍数と4のつく…だと間延びしてしまうかもしれない。
なぜこのネタに、この投稿の冒頭で触れたのかと言えば、それはトップ画像からも分かるように、日本のときだけバカになってしまう人たちがいるからだ。それは日本の大手メディアとその関係者たちだ。もちろん全員が当てはまるとは言えないが、明らかにその傾向が見て取れる。
今、政府や与党が盛んに主張している、敵基地攻撃能力の保有を検討、という話については、1/22の投稿でなぜそんな話が出てきたのか、どんな矛盾を抱えているのか、などについて書いた。話の発端は安倍自民政府だった。その安倍はロシアのウクライナ侵攻に乗じて敵基地攻撃能力保有検討を叫びはじめ、昨日・4/3、山口市での講演の中で、敵基地攻撃能力に関して、
私は打撃力と言ってきたんですが、(攻撃対象を)基地に限定する必要はないわけであります。向こうの中枢を攻撃するということも含むべきなんだろうとこう思っています
と主張したそうだ。
安倍元総理 敵基地攻撃能力「中枢への攻撃も含むべき」|TBS NEWS
そもそも、敵基地攻撃能力の保有というのは、先制攻撃正当化の歪曲でしかない。戦闘を武力衝突と言い換えたり、武器輸出を防衛装備移転と言い換えたり、難民を避難民と言い換えたりするのと同じで、詐術でしかない。日本は憲法9条で武力による紛争解決を放棄すると明確に示しているし、それは日本だけが放棄していることではなく、現在は国際的常識でもある。その時点で、先制攻撃正当化でしかない敵基地攻撃能力保有の検討などもってのほかなのだが、安倍は更に「敵基地に限定せずに敵国中枢も攻撃対象にしろ」と言い始めたのだ。向こうの中枢が首都を指しているんだとしたら、それは相手側の一般市民も攻撃できるようにしろと言っていることになる。
敵国中枢を先制攻撃対象にしろ、というのは、親露派が多いとされるウクライナ東部2地域の解放/平和維持の為と称して、ウクライナ北西にある首都キエフ近郊にも侵攻したロシア/プーチンと何が違うのだろう。安倍はウラジオストクで行われた2019年の東方経済フォーラムにて、演説の中で「ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか」とプーチンにラブコールを送っている。安倍もプーチン同様に隣国に侵攻・先制攻撃したくて仕方がないんだろう。
安倍がこのようなことを言い出したのは昨日今日の話ではない。前述したように、少なくとも、北朝鮮ミサイル発射への危機感を過剰に煽っていた2017年頃以降、いや、彼が改憲を強調し始めたのはもっと前だから、それ以前から、安倍はこの種のことを言ってきた。もちろん、時には強調し、選挙前など時には引っ込めたりはしていたが。日本の有権者は、こんな男に約8年も首相をやらせて、しかも今もまだその続きで自民党を与党に選び続けている。
日本の有権者が安倍や自民党を選び続けてきた原因は、メディアのそれらへの多大な忖度がある。自民党が右派政党であることに異論がある人はほとんどいないだろう。安倍がその中でも急進右派であることも同様だ。それは極右と言っても過言ではないほどだが、日本のメディアが安倍や安倍自民政府について ”極右” と表現したのは、今までに一切見たことがない。
しかし一方で、オランダの自由党やその党首ウィルダー、フランスの国民戦線やマリーヌ ルペンなどについては、ちゃんと極右と書くのだ。なぜ欧米等で極右が台頭するとちゃんと極右と書くのに、自国で極右政権が長らく続いても、一切極右とは書かないのか。だから、日本の大手メディアは、日本のときだけバカになる、という趣旨のトップ画像を作ったのだ。
今回の件についても、安倍が〇〇と述べました、という体裁の報道ばかりで、発言がどんなに異様なことか、憲法を軽視した発言ということ、いかに国際的な常識を欠いているか、をちゃんと指摘している記事/報道はほとんど見当たらない。つまり、日本のメディアは報道機関ではなく、バカな主張を広く伝える為の広報機関に成り下がってしまっている。
日本のメディアが、日本のときだけバカになる、と感じたことが、いや、そもそも日本のときだけではなくて全般的にバカなのかもしれない、と感じることがもう一つあった。それは、3/31の投稿や4/1の投稿で書いた、自衛隊が警察当局や米軍と連携して対応する事態にテロやサイバー攻撃、特殊部隊による破壊活動などと並んで反戦デモを挙げていた件についてだ。
ことの顛末は前述の過去の投稿で書いているので割愛するが、これらのツイート(前者 / 後者)を見て、メディアへの不信感がさらに湧いてきた。
あらためて考えると、2020年2月に自衛隊が配布した記者配布資料でこんなことがあったのに、それを受け取った記者やその所属メディアは、何故これまで2年もの間どこも報道してこなかったのか?という疑問が湧く。防衛省か政府が口止めしたから? 圧力かけたから? それともメディア側が勝手に忖度したから? 何にせよこんなことが、つい最近までおよそ2年もの間伏せられていたのは異様だ。しかもその間に衆院選もあったのだ。この資料を現場で受け取った(のにこれまで伏せてきた)記者/メディアの一覧が知りたい。そしてなぜ2年もの間これが伏せられていたのかも知りたい。
おそらく、納得がいくような合理的な理由などなく、何らかの理由で隠蔽されていた、つまりメディア側も隠蔽に加担していたということなんだろうから、日本のメディアは全般的にバカなんだろう、という感しかない。
そう思われたくないなら、どこでもいいから2年もこの話が伏せられていた合理的な理由を説明すべきだ。しかし多分そんなことは有耶無耶になるんだろうから、日本の大手メディアへの不信感が払拭されることは当分ないだろう。