「疑心暗鬼と云ふことがございますね。貴君のは、それですよ。妾(わたし)を疑つてかかるから、妾の笑顔迄が、夜叉の面か何かのやうに見えるのでございますよ」という一説が、菊池 寛、1920年の長編小説・真珠夫人の中にある。疑心暗鬼とは、心に疑いを持っていると、何でもないつまらないことまで不安になったり、恐ろしくなったりすることを指す。
一昨日・5/22の投稿では東京新聞のある記事、特にその見出しについて強く批判したが、一方で東京新聞はこんな記事も掲載する。
日米の防衛力強化はもろ刃の剣…周辺国の軍備拡張招く恐れ 「外交なければ戦争を防げない」:東京新聞 TOKYO Web
大半の日本メディアが、政府や与党の動向について、最早「〇〇した」「〇〇と述べた」などとまるで傍観者のようにしか書かない・伝えない中で、記事だけでなく見出しでも、それがどういうことなのかという当該案件に関する評価を示している。「〇〇した」「〇〇と述べた」としか書かない・伝えないのであれば、それは報道ではなくて広報だ。
東京新聞は同じことについて、見出しでは「〇〇した」「〇〇と述べた」としか書かいていない記事、
も掲載しているが、前者が今朝・5/24 6:00頃に掲載しているのに対して、後者は5/23 21:40頃に掲載された記事である。また後者の記事にも「抑止力強化の一辺倒で平和は守れない」と題した解説部分があって、「日米双方が武力による抑止力強化を図る姿勢を鮮明にした。だが、武力重視が周辺国の軍拡競争を加速化させ、地域情勢を逆に不安定化させる「安全保障のジレンマ」を引き起こす懸念はぬぐえない」と指摘している。つまり、後者の記事は、前者の記事から更に踏み込んで、事柄の問題性、懸念について強調している。
この東京新聞が示している懸念はとても簡単な話だ。1つの国が武力を拡大すれば、その国に攻め込まれるかもしれないという懸念を感じた周辺国もそれに追随し、そして最初に武力を拡大した国も同様の疑念にかられ更に武力を拡大させるという状況に陥り、それがエスカレートすれば互いに武力を誇示して威嚇し合うことにもなりかねず、威嚇が高じて些細なことでも何か被害が生じれば、それが戦争の発端にもなりかねない、ということだ。
それ以前にも日本が戦争に傾倒していくのにはいくつかの段階/要素があったが、日中戦争の発端になったとされている盧溝橋事件はまさにその典型的な例であり、日本は盧溝橋事件を発端に日中戦争を始め、さらにはそれを太平洋戦争へと拡大させていくことになる。そして国中の大都市があらかた焼け野原となり、広島と長崎には原爆を落とされる結果になった。
まさに今の日本が、北朝鮮のミサイル発射に抗議しつつ、自分達も敵基地攻撃能力だとか反撃能力だとか言って、同じような武力行使を正当化しようとしているのだから、東京新聞の示している懸念・武力重視が周辺国の軍拡競争を加速化させ、地域情勢を逆に不安定化させる、なんてのは全く荒唐無稽だなんて言えるはずがない。とても自然に沸き起こる懸念だ。そのことについては、1/22の投稿で自分も既に指摘している。
敵基地攻撃能力という、まやかし・ごまかし
敵基地攻撃能力だとか反撃能力だとか言って先制攻撃を正当化しようとするに限らず、日本は北朝鮮の非核化を訴えているのにもかかわらず、一部の愚か者たちが、日本も核保有(核共有)すべきだ!なんて勢いづいている。しかもロシアのウクライナ侵攻に乗じて。日本が本当に核保有(核共有)なんてやったら、北朝鮮の核保有だって否定できなくなる。また、核兵器使用を匂わせてウクライナを屈服させようとするロシアのことも、強く批判できなくなる。
何にせよ、武力拡大、先制攻撃の正当化、核保有なんてのは、周辺国だけでなく世界中に疑心暗鬼を生むことになる。それらの疑心暗鬼を無視して武力拡大や先制攻撃正当化を主張する人たちには、武力による抑止なんてのは幻想に過ぎないことが分かっていない。もし武力による抑止が本当に効果的なら、世界で最も気軽に銃所持できる国アメリカの治安は、世界でトップレベルの良さでないとおかしい。誰もが気軽に銃を所持できる環境が生んでいるのは、打たなければ打たれるかもしれないという疑心暗鬼で、乱射事件が頻繁に起きるだけでなく、相手が銃を持っていると勘違いしたことによる射殺事件も頻繁に起きている。
トランプよりは確実にマシなバイデンだが、彼もまた成田経由でも羽田経由でもなく、横田基地から入国した。バイデンも結局トランプ同様に日本を植民地か何かだと勘違いしているのかもしれない。「敵基地攻撃「あらゆる選択肢を検討」防衛費「相当な増額」岸田首相がバイデン大統領に表明 日米首脳会談:東京新聞
TOKYO Web」を読んで、まず自分が思ったのは、岸田は、米国に対して「財布になります!」宣言をした、いや、「私が日本人から搾り取ってやりますよ!」宣言をした、ということだ。
更に官房長官は昨日・5/23午後の記者会見で、東京新聞の記者に「日米首脳会談で辺野古新基地建設の推進について改めて確認したと思う。日本側からはどのような説明をされたのか。また、米側からは何か言及あったのか」と質問され、「日米首脳間の具体的なやり取りの詳細については、お答えができないことをご理解をいただきたいと思う」と返答した。
令和4年5月23日(月)午後 | 令和4年 | 官房長官記者会見 | ニュース | 首相官邸ホームページ
つまり岸田は、国民に説明できないようなことを米国との間で確認した、約束したということか。それでも自民党に投票するのなら、日本の有権者は搾取を望む奴隷志願者か、深刻なレベルのズボラかのどちらかだろう。