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AV出演被害防止・救済法の 施行・成立について

 AV出演被害防止・救済法、所謂AV新法が、6/15に可決成立し、6/23から施行された。4月から成人年齢が18歳に引き下げられたことで、これまで未成年者取消権を行使することができた18-19歳が、それを行使することができなくなる、ということに端を発して3月頃に検討が始まり、通常国会会期末ギリギリに法案が成立した。

 この件についてはこれまでも、

で触れてきた。

 同法案が成立して以降、法案成立の影響で撮影が中止になっている、という話がしばしば目につく。同法によって、

  • 契約書面の交付から1か月間の撮影の禁止 
  • 事前確認の機会の付与
  • 全ての撮影の終了から4か月間の公表の禁止
  • 未成年にかぎらず全てのAV出演契約について、公表後1年間(同法施行後2年間は経過措置として「2年間」)無条件で解除可能  
  • AV出演者は、前項のAV出演契約の解除によって損害賠償義務を負わない

などが定められた為、メーカーが新しい契約書を作るなど対応に追われており、それで同法施工後の撮影が中止されたり延期されたりしているのだそうだ。また、まだそのようなリスクに関する話はあまり見かけないが、AV出演契約は作品公表後1年間無条件で解除可能、というのにリスクを感じている制作側も少なくないのではないだろうか。瑕疵のある契約ではなく全ての契約について、作品公表から1年間、一方的に契約を解除される恐れがあり、しかもそれで損害が生じても全て制作側持ちになる、ということだろうから、多額の予算をかけて作品を撮ったのに、発売してすぐに販売差し止められてしまう、というリスクが出てきた、ということだ。
 4月以前は、無条件に契約を解除できるのは未成年の出演者だけ、つまり18-19歳だけだったが、作品が世に出た後1年間ではあるが、それを年齢に関わりなく全ての出演者に拡大させたのが新法だ。確かに、制作側と出演者の力関係を考えれば、出演者が意に沿わない契約を結ばされた場合への配慮と対策は必要だが、これではさすがにアダルトビデオを制作する側のリスクが大きすぎると考える。

 また、可決成立から1週間で新法施行というのもよくなかっただろう。おそらく、4月からすでに18-19歳が未成年者取消権を行使できなくなっていることへの対応で、成立からわずか1週間足らずで施行ということになったんだろうが、それで現場が振り回されていることは否定できない。そもそも、18-19歳が未成年者取消権を行使できなくなるギリギリになって対策法の検討を初めたこと自体が後手後手の対応だ。今年・2022年4月から18-19歳の未成年者取消権がなくなることは事前に分かっていたのだから、もっと前から対策を検討し、2022年4月の少なくとも半年以上前には法案を成立させ、4月から新法施行、という段取りでなくてはならなかった。
 検討開始が遅れて成立が今頃にずれこんだのだとしても、新法の施行には成立から半年程度の期間をおき、現場が対応するための余裕は設けなければならなかった。

 このような点など、AV出演被害防止・救済法、所謂AV新法には少なからず問題点があると考えている。


 現在、AV女優や業界関係者などから、AV新法は現場を無視した悪法だ、という声が聞こえてくる。確かにその側面は否定できない。しかし一部に、それに乗じた、モテないクソフェミがひがみでAVを潰そうと画策してできたのがAV新法、発起人の立憲共産党・塩村 あやか が悪い! のような話もしばしば目につく。
 そのようなことを言っている人たちは、同法案が超党派の議員から提案されたこと、現在国会では自公が過半数の議席を有しており、与党自公が賛成しないと法案が成立しないことをどう考えているのか。また、成人年齢引き下げを主導したのも与党自公であり、新法は成人年齢引き下げによって18-19歳が未成年者取消権を行使できなくなったことに端を発していること、与党自公は野党側の国会会期延長をことごとくつっぱねてきたこと、つまり対応策検討をないがしろにしてきたこと、をどう考えているのか。
 また、確かに性産業を過剰に嫌悪している自称フェミニストはいるが、しかしだからといって性産業にも全く問題がないわけではないし、自民政権下で厚労省が、性産業は健全じゃないから新型ウイルス関連の支援対象にしない、と言っていたことはどう考えているのか。

 つまりそのような主張は、全く合理性に欠けるレッテル貼りや歪曲、もしくは正確に状況を理解していない誇張表現、と言っても過言ではないだろう。


 AV女優や業界関係者が同法の問題点を指摘する際には、そのような極論は積極的に否定すべきだ。少なくとも明確に距離を置かねばならない。自分のツイートなどがそのような主張の根拠にされた場合などは特に。でなければ、AV業界の人たちは合理性のない野党叩きの為にAV新法を目の敵にしている、問題がどこにあるのかを正確に認識せずに批判しているというイメージがついてしまうだろう。同法案には自民党も賛成しているし、政府として法施行に沿った対応もしている。そして、そもそも自民党が成人年齢を18歳に引き下げたこと、その際に必要な対策を講じなかったことが、ことの発端なのだから。

 全ての人がそうだとは言わないが、AV新法に異論を呈しているうち少なくない人が、これが自民党が主導した法案だったら文句を言っていないのでは? と思えてならない。この件に限らず、たとえ本人はまともな主張をしていても、その人やその人の主張が、おかしな言説のダシにされることを黙認していたら、おかしな言説と一緒になっていると思われてしまう


参考にしたWebページ


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