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当事者意識の欠如に割を食うパラリンピック


 オリンピック閉幕直後の2/26の投稿で、メディア・特にテレビが、オリンピック競技中継だけならまだしも、報道番組などでも結果を伝えるだけでなく、選手の動向などにも時間を多く割き、他のニュースの報道がその影響で少なくなっていて、個人的にオリンピック報道にはうんざりしていると書いた。当時は厚生労働省が作成し、政府が裁量労働制拡大の根拠の一つにしてきたデータの出鱈目さ加減が明らかになり、国会ではそれに関する議論が行われていたので、その件の報道が過小評価されていたのがとても不満だった。
 また2/26の投稿では「オリンピックでこれ程大騒ぎしたのにパラリンピックへの注目がそれより下がるようであれば、それはそれで幻滅するだろう」という事も書いた。パラリンピックが開会して既に4日経つが、現在報道番組が最も時間を割いているのは、財務省の公文書改ざんだ。個人的には、この問題はパラリンピックより遥かに重要性の高い問題で、最も時間が割かれて伝えられているのは当然だとも思うが、前述のような事を考慮すると、パラリンピックに出場している選手らがとても不憫だ。既にメダルを3つも獲得した選手もいるのに、メディアの扱いは確実にオリンピック出場選手以下だ。そんな点でも、こんなタイミングで改ざんを露呈した財務省の罪は深い。

 
 3/12の投稿でも少し触れたが、財務大臣や首相、官房長官、与党幹部らは、今回の改ざんについて過小評価しているように思えてならない。「なぜ、こんなことが起きたのか」などとまるで他人事かのような首相、彼は今回も「真摯に」などという言葉を用いているが、ハッキリ言って聞き飽きた。バカの一つ覚えのように出来もしないことを言わないで欲しい。また、少しでも印象を悪化させたくないという動機からだろうが、官房長官は「改ざんではなく書き換えと認識している」などと理解し難い表現への謎のこだわりを見せている。公文書の改変は書き換えだろうが改ざんだろうが許されないし、しかも一言二言なんてレベルではない改変は、改ざんと表現するべきだろう。「既に辞職しており一般人なのだから佐川元理財局長の証人喚問には慎重であるべき」で現時点では応じられない、なんて訳の分からないことを言っている自民・公明の与党幹部も同様だ。だったら彼が辞職する前に正々堂々と証人喚問に応じればよかったのではないのか。これまでも召喚を拒み続けていたのに、辞めたから一般人なんて話で理解が得られると思っているなんて、本当にどうかしている。

 最も憤りを覚えるのは、謝罪とか遺憾などと言いながら、太々しい態度で記者らに臨む財務大臣だ。彼は、財務省が改ざんを認めた後も、しばしば記者に悪態をつく姿がテレビで放送されている。改ざんが明確化した直後の会見でもそうだったし、昨日(3/13)も、神戸製鋼のデータ改ざんが発覚した際に、社長が「知らなかった」としながらも辞職したことを記者が引き合いに出すと、逆に「神戸製鋼では何年間不正が続いていたのか?」などと聞き返し、記者が答えられないと「その程度の調査か」などと皮肉を言う始末だ。改ざんを財務省が認めてからの今日までの間、彼が頭を下げた姿が報道されただろうか。佐川の責任一点張りで全く悪びれない姿しか記憶にない。自分にはどうしても彼が謝罪しているようには見えないし、遺憾だと思っているようにも思えない。彼には恐らく目の前の記者しか見えていないのだろう。記者やカメラの先にいる国民の目に、自分がどう映っているかを想像できないのだろう。これまで実態解明に散々消極的な姿勢を示し続けてきたのに、なぜ「知らなかったのだから自分の責任じゃない」と言わんばかりの態度を示せるのか、とても理解し難い。
 3/12の、改ざん明確化後最初の会見で「改ざんの事実をいつ知ったのか」と記者に問われた際に、お付きの者に「3月のいつだっけか?」と聞き、お付きの職員が「11日です」と答え、麻生氏も「11日だ」などと答えていたが、11日とはその会見の前日だ。1日前のことを覚えていない人には大臣を任せられないし、ハッキリ言って麻生氏が嘘をついていることを強烈に感じさせる場面だった。
 民間企業の不祥事発覚後、トップがあんな態度だったらマスコミや市民からの総攻撃・袋叩きにあうだろう。勿論申し訳なさそうにすれば全てチャラになるわけではないし、場合によっては不必要に一部の者が攻撃的に批判している場合もある。しかし流石に今回の件の重大さを本当に理解しているなら、あれ程太々しい態度でカメラの前に立つことなど出来ないのではないだろうか。要するに、彼が今後再発防止に努めようとしているとか、全容解明に積極的なようには見えないし、「適当にやり過ごそう」と思っているとしか感じられない。

 また、財務省の調査や官僚の話にもかなり驚かされる。今週の月曜・3/12に14文書・およそ300か所にものぼる改ざんが公表されたが、その翌日3/13にはそれとは別に、添付されていたメモが削除されていたことが明らかになった。この分だと公表されたのは氷山の一角で、まだまだ他にも不適切な文書が存在しているんだろうと想像してしまう。
 また、野党が行ったヒアリングの中で、「どうやって改ざん前の文書が見つかったのか?」という質問に対して、財務省の富山理財局次長が

一例として、パソコンの中に当該職員しかわからないほど何回もクリックしないといけない所に保存されていた。本人の申し出で初めて分かった。

などと答えていた。この発言から感じるのは財務省の調査のいい加減さだ。パソコンの内部データを検索するのに、なぜ全文検索を使用しないのだろうか。それとも財務省のパソコンでは全文検索が出来ない仕様の独自OSを採用しているのだろうか。勿論、保存されていたのがPDFではなく画像データで、全く関連性のない文字列のファイル名が付けられていた可能性がないとは言えず、全文検索をしただけでは見落とす確率の高いファイルを、所有者が申告したという事かもしれない。しかしもしそうなら、調査に時間がかかったり、改ざん前の文書を見つけるのに時間がかかった理由として、その点も同時に強調しそうなものだ。自分はこの発言をテレビで見ただけなので、もしかしたらそのような発言もあったが放送されなかっただけという恐れもあるが、他のメディアでもそんな話はどこも取り上げていないようなので、実際にそのような主張はなかったと考えられる。こんなことから考えると、財務省の調査のいい加減さだけでなく、適切なデータの取り扱いを職員に徹底することすらできていないんじゃないかと想像してしまう。 

 先週から既に改ざん問題(当初は改ざん疑惑)に関する投稿を4回も書いている。この投稿などは導入部分を除けば3/12の投稿と重複する部分も多々ある。出来るだけ直近の投稿と内容が被らないようにその日のテーマを考えるが、改ざん自体の深刻さ加減に負けず劣らず、政府や与党関係者らに当事者意識が欠如していることもかなり深刻だ。要するに、国有地取引の不正だけでも問題だったのに、公文書改ざんで別の更に大きな問題が発覚、更に政府・与党幹部などの当事者らが総じて他人事であることの問題も付け足されているから、報道するべき事が余りにも多く、その分割かれる時間が多くなり、その影響で、本来この時期に時間が割かれるべきだったパラリンピック報道が割を食っているのだろう。
 
 改ざん問題云々以前にとりあえず、首相と財務大臣はパラリンピック出場選手に謝罪して欲しい。自分の監督責任に関する話すら不服であるという態度が、彼らから滲み出ていることから想像すると、パラリンピックから自分たちが注目を奪っているという自覚など、これっぽっちもないのだろうから、そんなことする筈もないだろうけど。

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