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政府や自治体が嘘をつく事の深刻さ加減


 9/6に発生した北海道胆振東部地震の被災者支援の為に、東京都がフィンランド製の乳児用液体ミルク1050個を北海道庁に提供し、一度は避難所などに配られたが、道庁の災害対策本部の職員が11日頃、「液体ミルクは国内で使用例がない」「取り扱いが難しい」として使用を控えるよう各町の担当者や保健師に通知しため、ほぼ全量が使われなかったという記事・「液体ミルク1050個、北海道地震の被災地で使われず。北海道新聞「道庁が自粛要請」」を、ハフポストは9/23に掲載した。
 現在この記事のタイトルには「⇒ 道庁は否定「断水への備えだった」(UPDATE)」と付け加えられているが、北海道庁は記事掲載後「報道は事実と一部異なる」という見解を示し、「液体ミルクは今後の断水に備えて対応してくださいと、保健所などに伝えた」とした主張したと、9/25に追記がなされたからだ。


 この件についてハフポストは、道庁が被災自治体へ通知された文書を入手したとして、「液体ミルク「使用しないで」 北海道地震の被災地に送付された文書が判明」という記事を、10/5に新たに掲載した。記事では通知された文書原本の写し画像をそのまま掲載しており、そこにはこう書かれている。

液体ミルクの使用について

○ 乳幼児向けの支援物資として、フィンランド製の「液体ミルク」の紙パックが、配布されていますが、日本では使用例がなく、衛生管理が難しい製品ですので、使用しないよう住民・関係者へ呼びかけをお願いします。(使用に当たっては、保健師・栄養士へ相談するように住民・関係者へ呼びかけをお願いします。
○ 使用を控える理由(使用する上での注意点
  • 液体ミルクは、「衛生的な水が使えないときに有用」とされています。現在は、水が確保されておりますので、使用しないでください。(水がない場合の緊急物資としての扱い(現時点では、水がない場合の緊急物資としての扱い))
  • 本製品は、常温管理(25度以下)であり、日本の酷暑の季節での保存は想定されていません。(高温での保存は想定されていません。
  • 開封後は、口をつけた飲み残しは破棄。蓋をして冷蔵保存が可能ですが、24時間〜48時間程度しか保存できないので注意。
  • 賞味期限の記載が日本の記載方法と異なり、間違えやすい。(2018年11月24日までの期限 24/11/18と記載)
  • 商品の説明書はフィンランド語。日本語訳は簡単な記載のみ
○ 液体ミルクが配布された先
安平町、むかわ町、厚真町、日高町、平取町(各町0〜6ヶ月用×6箱、6ヶ月〜12ヶ月×6箱)

※被災地の栄養士から、使用方法の問い合わせがあり、北海道大学新生児科の先生が注意を呼びかけています。
※避難所には、「避難者対策班」から、「液体ミルクは本当に水がなくなった場合に使用するため、保管しておくこと」と連絡していますが、再度ご連絡いたします。

 記事が掲載した文書内容について、通知文書の修正版があると北海道庁から指摘があったようで、それに関しては当該箇所に括弧書き太字で記載した。修正版であっても、北海道庁が主張した「断水への備えだった」という話は、苦し紛れの言い逃れにしか思えない。何より、液体ミルクは2018年8/8に国内販売が解禁されている。しかも解禁される前の2016年に起こった熊本地震の際に支援物資として提供され、実際に使用された例があるにもかかわらず、「日本では使用例がなく、」としているだけで確実に事実誤認である。しかもその後に「衛生管理が難しい製品ですので、」と続け、常温管理(25度以下)であり、高温での保存は想定されていません。などと説明するようでは、液体ミルクを支援物資として提供した東京都が、あたかも賞味期限切れの食品を送り付けてきたかのような認識であるかのように思える。
 個人的には、北海道庁が「断水への備えだった」などと主張しているのは、責任逃れの為に嘘をついたと言っても過言ではないと考える。

 2016年に「すべての政府は嘘をつく」という映画が公開されたし、自分の短い人生経験でも、政府・自治体・権力が嘘をつくことは、身に染みて分かっている。しかし昨今、あまりにも短絡的で馬鹿でも分かるようなあからさまな嘘が公然と主張される機会が、かなり多いように感じる。「嘘も方便」という慣用句もあるが、基本的には嘘はついてはいけない。
 「日本では使用例がなく、」なんて嘘がある文書に、「北海道大学新生児科の先生が注意を呼びかけています」なんて書かれていても、本当に北海道大の先生が注意喚起しているのかも怪しくなるし、たとえ実際に注意喚起があったのだとしても、言っている内容が正しいのかどうかを疑いたくもなってしまう。役所や役人が嘘を平気でつくようでは、今後何を言っても「またいい加減な事をいっているんじゃないの?」と疑念を持たれるようになり、まともな自治体運営がままならなくなってしまう。嘘をつく事の深刻な影響とはそういう事だ。

 これは、森友加計学園問題で嘘の答弁をした複数の官僚についても、嘘の為に公文書まで改ざんする事件が起きたことも、自衛隊日報が何度も隠蔽されようとした事も、それらの当該官僚や、関係大臣の任命を「適材適所」と言い続ける政権首脳についても同じことだ。「真摯な受け止め、丁寧な説明」などと口先だけで言う事は誰でも出来る。こんな状況で今後まともな政権運営が望めるとは到底思えないし、現政権がそれらを有耶無耶にして終わらせようとしていることを、決して認めてはならないのではないか。それを許すことは、彼らに嘘をついても構わないとお墨付きを与えるようなものだ。そんな国は確実にまともじゃない。

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