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誠実な見出しの重要性、大袈裟な見出しは信頼を損ねる


 川崎市幸区のケンタッキーフライドチキンにクルマが突っ込んでいる映像が昨日(3/2)の昼のニュースで報じられていた。国道沿い・交差点の角にある店舗に、文字通りハイエースが半分以上店の中に突っ込んでおり、車体後部が店の入り口から見えているという、ここにドライブスルーがあるんじゃないか?とすら思えるような絵面だった(次の画像はTBSニュース「川崎のファストフード店にワゴン車突っ込み2人重軽傷」より)。



 スクリーンショットをした時点で、画像のTBSニュースの記事が報じられた時刻は17時11分となっていたが、記事の情報は自分が昼のニュースで見た内容と殆ど差がなく、なぜこんな事故が起きたか、つまり事故原因や、不慮の事故なのかドライバーが故意に起こした事故なのか、などに関する情報には触れられていない。恐らく、昼の時点では未確認情報という扱いだった巻き添えになった被害者の情報や、運転していた容疑者の氏名・年齢などが確定し、その部分を書き直したのが17時頃だったのだろう。朝日新聞が13時頃に掲載した記事「ケンタッキーに車突入し2人重軽傷 川崎、容疑者を逮捕」では容疑者の氏名や年齢にはまだ触れられていないし、巻き添えをくった被害者の話も「という。」というように伝聞として書かれており、その時点では確認が取れていないことが分かる。
 この件に関して、報道の受け手が最も知りたい事は「不慮の事故だったのか、故意の事件なのか」ということだろう。また、昨今高齢ドライバーが起こす事故が多い事を考えれば、ドライバーの年齢も注目される点の一つかもしれない。また、飲酒運転などによる事故かどうかなどもこの手の案件の重要な要素の一つだ。自分は毎日、18時のニュース番組を見るような感覚で、その時間帯にハフポストに目を通す。昨日の18時過ぎ頃にハフポストを覗いてみると、昼のニュースで見た川崎の件に関する記事「川崎のケンタッキーに乗用車突っ込む。いったい何があった?」へのリンクが、画像付きでトップページに掲載されていた。


 この「いったい何があった?」という見出しを見れば、高齢ドライバーによる事故なのか、飲酒運転による事故だったかどうかなどについて、つまり不慮の事故なのかドライバーが故意に起こした事故なのか等事故原因や事故・事件の背景について書かれているんだろうと多くの人は期待するのではないだろうか。少なくとも自分はそう感じた。ハフポストは朝日新聞と提携しており、朝日新聞の記事を掻い摘んで転載するのだが、同じ内容の記事なのに朝日新聞とは異なる見出しを付けて掲載することがしばしばある。この「川崎のケンタッキーに乗用車突っ込む。いったい何があった?」という記事も、前述の朝日新聞の記事「ケンタッキーに車突入し2人重軽傷 川崎、容疑者を逮捕」をそっくりそのまま転載しただけの記事だ。記事の掲載時間は朝日新聞の記事から遅れる事約1時間後の14時12分となっている。しかしトップページにはタイムスタンプも朝日新聞からの提供記事だという事への説明もない。なぜ朝日新聞と同じ内容の記事なのに、そして「いったい何があったのか」について掘り下げているとは言い難い内容なのに、わざわざ朝日新聞の記事と異なる見出しを付けて掲載しているのか理解に苦しむ。


 これでは、ハフポストはPV目当てで、朝日新聞の記事の内容以上の過剰な見出しを付けて読者の好奇心を無駄に煽っている、としか言えないのではないか。そんな見出しを付けるようでは、PV目的で過激な見出しをつける事を厭わない粗悪なまとめサイトと大差ないのではないか。それらのサイトの記事は内容すらも事実と乖離していることが多いのに対して、朝日新聞の記事の内容は事実と乖離した酷い内容とは言えないので、粗悪なまとめサイト程の酷さとは言えないかもしれないが、前述のように、見出しを見て興味を抱きクリックした人が、記事を読んでがっかりするのは必至だ。「必至だ」は言い過ぎかもしれないが、自分のように羊頭狗肉感を受ける人は少なからずいるはずだ。それでは結局媒体全体としての魅力を下げるだけで、ブランド力を低下させることになるのではないのか。つまり長期的に見ればPVすら下げることになるのではないだろうか。
 BuzzFeed Japanが2/25に掲載した記事「沖縄・県民投票「まとめサイト」が大手メディア超える拡散力 知事や反対派の批判が中心」 に自分はこうコメントした。
 内容の質に関係なくビュー数さえ集めれば金になる現在のネットの仕組みに大きな問題がある。その弊害は所謂まとめサイトだけでなく、既存メディア系のウェブサイトでも、大袈裟な見出し、事実確認を欠いた内容の記事などとして表れている。この記事を掲載したバズフィードも決して例外ではない。

 またその影響はネットのみにとどまらず、ネットメディアに押される形で縮小傾向にあるテレビや出版、新聞等にも及んでいる。例えばニュース女子の件や、新潮45の件、ネット記事を事実確認もせずに取り上げるテレビ番組・新聞記事などがその例だ。

 「一部の人間はカネの為なら、自由を大義名分にどんな事にも手を染める。自由と責任は表裏一体だという事を無視して」
 コメントでは当該記事を掲載したBuzzFeed Japanでも「大袈裟な見出し・事実確認が充分ではない記事」を掲載することがあると指摘したが、それはハフポストも同様である事が、「いったい何があったのか?」という見出しにも関わらず、一体何があったのかが分からない記事が掲載されたことでよく分かる。

 BuzzFeed Japanにしろハフポストにしろ、勿論他の新聞やテレビ報道などでも、しばしばフェイクニュースを危惧する記事や特集を掲載・放送する。しかし、このハフポストの件のような記事・報道が頻繁に行われるようならば、それらのメディアもフェイクニュースだろうがお構いなしで掲載する粗悪まとめサイトと似たり寄ったりと思われ、信頼性を失いかねない。例えば、昨今政府の発表を鵜呑みにした報道、場合によっては政府の発表を更に誇張して大袈裟に伝えるようになってしまったNHKのように。

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