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「大麻を吸って○○してみた」「ちょっとテンションが高いくらいで別に何も変なことが起こらなかった」


 昨日・5/6は、世間的には史上初の10連休の最終日だったそうだ。10連休やゴールデンウィークに限らず祝日とは関係のないスケジュールで生活している自分にとって、当然10連休なんて関係なかったが、流石に全く関係ないということもなく、昨日は一日自宅でのんびりと過ごした。
 4/28の投稿でも触れたように、この10連休について、ある調査では70%の人が「自宅で過ごす」と答えたそうだ。30代前半までは「休みの日を自宅で過ごす」とか「昼まで寝る」なんてあり得ない、時間を無駄にしてしまった罪悪感に苛まれるのが嫌と言い切る、回遊魚のようなノンストップ生活を送っていたが、最近は「そんなに意固地に活動的になる必要もない」と思えるようになり、昨日は一切家から出なかった。


 何をしたのかと言えば、先週からNHKで「進撃の巨人シーズン3後半」の放送が始まったので、シーズン3前半を最初から見直した。NHKは3月にシーズン3前半を再放送しており、それを録画してあった。昨今は、CSなどの影響なのか地上波でも、ドラマもアニメも新シリーズが始まるその直前に過去シリーズを再放送する。映画もシリーズ作品・「何とかかんとか2、又は3」のような続編は、1作目の興行収入を上回ることは稀のようだが、いくら「前作を見ていなくても楽しめる」と宣伝したところで、「最初から見たい」は多くの人が抱く欲求であり、「どうせ見るなら最初から見たいので、また今度」のように、敬遠してしまうこともあるからそんな傾向になるのだろう。そんな傾向を解消しようという試みが新シリーズ直前の過去シリーズ再放送だろう。
 以前は動画・番組を見るのはテレビが主流だったが、2010年代に入るとネットを使った動画・番組配信サービスが台頭し、これまで放送時間に縛られずに好きな時に番組を見るには「録画する」という一手間が必要だったのが、オンデマンド方式が実現したことで、配信されている限りいつでも好きな時に、しかもスマートフォンがあれば場所も選らばずに動画・番組を見られるようになった。2000年代頃から韓流ドラマを含めて海外ドラマ、または国内ドラマをDVDでまとめて見るというスタイルはあったが、それもネット配信化によって「買いにいく/借りに行く」という一手間も省けたような恰好だ。
 昨今はテレビ局もそんな風潮を無視出来ず、ドラマやアニメなどの多くは放送後1週間/次回放送まで無料でネット配信、その後も有料で配信する場合が多く、場合によっては続編シリーズを放送する直前に、前シリーズを限定的に全話無料配信して新シリーズの視聴に繋げようという試みも見られる。


 このような動画・番組・映画のネット配信が一般化したことによって、昨日の自分のように、休みの日にそれらを見て過ごすなんて人も増えているのだろうし、前述のように、この10連休について70%の人が「自宅で過ごす」と答えているのだから、その内の何割かはそんな過ごし方をしたのだろう。イラストレーター/ライターの能町みね子さんも、そのような休日を過ごしたのか、連休最終日に当たる昨日、以下のツイートをしていた。
自分はネットフリックスを契約していないので当該番組を見てはいない。しかし、同じ様なコンセプトで作られた動画はYoutubeなどにも多く、彼女が見た番組の内容がどんなものかは大体想像がつく。当該番組を見ていないし、能町さんとは知り合いでも何でもないのであくまで想像の範疇ではあるが、能町さんは、単に番組としての構成や演出などを批判しているようにも見えるが、「大麻吸引」の効果に実態以上の幻想を抱いていた側面もありそうだ、と感じた。
 Youtube上で公開されている所謂「大麻を吸って○○してみた」系の動画にも、勿論質の良し悪しはあるし、各動画が想定している用途もそれぞれだ。単にハイになって出演者らが他愛のないことでゲラゲラ笑いながら話しているだけの動画もあれば、ハイになって、ジャッカスのようにバカバカしいことをする様子を撮影した動画などもある。能町さんが期待していたのは後者で、見たのは前者なのかもしれない。しかし、個人的な見解ではあるが、前者は視聴者も大麻を吸引するなり、酒などで酩酊するなどして見る用の動画であって、素面で見てもあまり面白くはないだろう。後者のような企画であれば、素面の人が見てもそれなりに楽しめるものもある筈だ。

 能町さんは「ちょっとテンションが高いくらいで別に何も変なことが起こらなかった」と言っているが、ネットフリックスという世界的に最も影響力のあるであろうネット配信サービスの1つで、大した事が何も起こらない「大麻を吸って○○してみた」番組を配信する意味は、能町さんの言う、視聴者の「期待を大幅に下回る」為なのではないだろうか。
 大麻吸引を嫌悪する人には、特に日本のように「ダメ、ゼッタイ。」という啓蒙のある社会においては、大麻吸引=人間失格、つまり大麻吸引=恐ろしい何かが起こる、のような認識があるように思う。そこまで激しくなかったとしても、大麻を吸うと何か大きな影響があるかのように考えている人は決して少なくないだろう。
 しかし実際には、大麻を吸うことで起きるのは、酒を飲んで酩酊するのと同じ様なことだ。勿論起きることは吸った大麻の種類によっても変わるが、それはアルコール度数1桁のビールと、50度オーバーの強い酒を飲んだ場合の効果が異なるのと似たようなものだろう。能町さんが見たネットフリックスの番組は、「大麻を吸っても実際はこんな感じ」というのを率直に見せたかった、世の中にある偏見・誤解を正すことが目的だった為に、過剰な演出はせず、「ちょっとテンションが高いくらいで別に何も変なことが起こらない」内容だったのではないだろうか。

 これも自分の経験上の話だが、大麻を吸っていなくても、つまり素面でも大麻を吸っている人以上にテンションの高い人というのは存在する。例えば前述したジャッカスの演者ら、若しくは日本のバラエティ番組に出演して悪ノリする芸人なんてのはその典型的な例だ。また大麻を吸う事で判断力が低下する、なんて話もあるが、酒を飲んでも判断力は低下するし、大麻や酒で酩酊状態にある人よりも、素面の状態で判断力が低い人なんてのも結構いる。そういう認識もなく、「ダメ、ゼッタイ。」の影響で大麻=極悪みたいな認識でいる人が少なくないこと、大麻だけでなくドラッグ全般を過剰に嫌悪する風潮があるのはとても残念だ。勿論法で禁じられている以上利用すべきでないが、果たして人間失格の烙印を押すようなことはバランスとして正しいだろうか。それには強い疑問を覚える。
 付け加えると、「薬物に手を出すことは反社会的勢力の資金集めに加担することになる」と言う人もいるが、アメリカの禁酒法時代、マフィアが密造酒を資金源にしたことを考えれば、当局が禁じることこそが反社会勢力に資金稼ぎの方法を与えているとも言えるだろう。現にカナダやウルグアイ、そしてアメリカの一部の地域で、医療用だけでなく嗜好品としての大麻も解禁した理由の一つに、流通を管理が可能な状態に正常化して、反社会勢力の資金源を断つ為という側面があり、厳禁化することが必ずしも素晴らしいとは言い切れない。


 同じく昨日・5/6に、こんなツイートもタイムラインに流れてきた。
カリフォルニア州で嗜好品の大麻が解禁されたのは2018年1月で、自分もまだ現在の状況(Gigazineの記事)を体験したことはないが、大麻を嫌悪する日本人の内の一体どれ程が、実際に大麻に触れたことがあるだろうか。個人的には、いきなり1回目で依存症になる人なんてほぼいないから、まず1度吸ってからものを言え、と言いたいところだが、タバコや酒と同じで吸いたくない・飲みたくないという人もいるだろう。しかしそれでも、大麻が解禁された社会が世界中には既にいくつかあるので、少なくとも数日だけでもそんな環境を体験してから、嫌悪するにしてもして欲しい。大した知識も体験もなく否定する行為は、大人が子供に「あれはダメ、これはダメ」とガミガミ言うようなもので大した説得もなく、単に軋轢を生むだけの行為でしかない。
 アジアでも、以前は日本と同様に厳罰路線だったタイが、2018年12月に医療用/研究用の大麻利用を解禁した(Viceの記事)。 他国の方針が絶対的に正しく、日本の方針が絶対的に間違いだとは言わないが、少なくとも大麻に関しては「ダメ、ゼッタイ。」なんてのは所謂「思考停止」でしかない。解禁に踏み切る国・地域が決して少なくないのに、大麻利用を無条件に非人間扱いすることは、利用する人の尊厳を踏みにじっているようにも思える。他人の尊厳を踏みにじる者は、自分の尊厳を誰かに踏みにじられても文句は言えないが、果たして彼らのその覚悟はあるだろうか。

 韓国に行ったこともなく「韓国人は反日」というレッテルを貼ったり、沖縄に行ったこともなく「基地に反対するのは反日」というレッテルを貼ることと、大麻を吸引したことも、そして大麻が合法化された地域に行ったことすらないのに「大麻利用=人間失格」のようなレッテルを貼ることはとても良く似ている。

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