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「ゴールド免許が運転免許証保有者の約半分」のネガとポジ


 5年間無事故無違反だと次の運転免許証更新から所謂ゴールド免許になる。このゴールド免許・優良運転者制度が設けられたのは1994年5月で、今年で25年が経過した。ゴールド免許になると、更新期間が5年(通常は3年)になったり、更新時の講習が簡易になって料金も安くなるなど、幾つかの恩恵が受けられる。また、任意保険などの割引・優待が受けられることもある。
 現在、免許の更新をする人は毎年およそ1500万人で、その半分以上がゴールド免許なのだそう。あくまで更新した人の約半分がゴールド免許という数字なのだが、過去5年間その割合は概ね55%前後で、つまり日本の運転免許証保有者8000万人の約50%がゴールド免許と考えて差し支えなさそうだ(制度発足から25年!保有者の50%超がゴールドという今どきの運転免許事情とは | AUTO MESSE WEB)。


 ゴールド免許が運転免許証保有者の半分以上を占めている、ということは、無事故無違反のドライバーが多いということでもあり、概ね好意的に受け止められる話だと思う。しかし、単純に好意的に受け止めるのは適当ではないとも自分には思える。何故なら、運転免許証を持っていも全く運転しない所謂ペーパードライバーなら、誰でも自動的にゴールド免許になれるからだ。
 流石にゴールド免許保持者のほぼ全員がペーパードライバーである、という極端なことは言わない。しかし、日常的に運転をしていれば、うっかりミスのような違反をしてしまう確率が相応に出てくる。警察はそんなうっかりミスを予防せずに、身を隠して待ち構えて、違反したところで切符をきるという取り締まりをしている。特に仕事で運転する人、毎日相応の距離を走る人ならば、そんな状況に遭遇する確率は更に上がるだろう。

 運転しなければ違反も事故も起こさないのは当然で、日常的に運転しない人がゴールド免許を保有していたとして、それは果たして優良「運転者」と呼べるだろうか。運転者とは呼べないのではないだろうか。つまり、ゴールド免許保持者が運転免許保有者の半数以上ということは、それだけ日常的に運転しない人が存在していることの証拠とも言えるのではないか。
 都市部、特に都心には慢性的な渋滞があり、都市部への人口集中傾向も考えると、日常的に運転する人が今以上に増えれば、都市部の渋滞も比例して悪化するだろう。そんな視点や、自動車が排出する温暖化ガス等環境に対する視点で考えれば、日常的に運転しない人の割合が高いことは好意的に受け止めるべき話かもしれない。

 しかし、日常的に運転しない人は何故しないのかを考えると、自動車を保有していない、保有するコストが高く自動車保有で得られるメリットに見合わない、言い換えれば、所得が足りないという事の結果でもあると考えられそうだ。日本自動車工業会が公表した新車の販売台数を元にした記事「自動車の国内需要をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース」によると、2014年以降はやや上向きではあるものの、日本国内の新車出荷台数はバブル期よりも年間200万台以上減少しており、2013年に一度リーマンショック前の数字にまで回復したものの、現在はリーマンショック前にも届いていない。そのようなことから考えると、ゴールド免許保持者が運転免許保有者の半数以上ということは、好意的には受け止められない話でもある。
 一度国内出荷台数がリーマンショック前の水準に回復した2013年頃と言えば、東日本大震災等で使用出来なくなった車両の買い替え、2014年4月に消費税が8%に増税される前の駆け込み需要などもあったかもしれない。今年も10月に10%への消費税増税が予定されているが、「19年1~6月期の新車販売0.8%増 駆け込み需要薄:日本経済新聞」などから分かるように、駆け込み需要は殆どない。正確な分析は事後でなければ出来ないだろうが、駆け込みで自動車を購入する余力すらないのが、今の日本の一般的な家庭の経済事情なのではないだろうか。
 もしかしたら、そのような後ろ向きな理由ではなく、単にライフスタイルの変化が生じており、別の分野で消費が行われているという可能性が全くないわけではないが、何か活発な消費が行われているというニュースは全く耳にしない。


 余談だが、自分の世代は、高校を卒業したら取り敢えず自分のクルマを手に入れていた最後の世代かもしれない。当時既にバブル崩壊後だったものの、その余韻がまだあった時期だ。自分は横浜の出身で駐車場は決して安くなかったが、大学生当時友人の男の半分以上は、どんなボロだろうが自分のクルマを持っているような状況だった。しかし、数年前に横浜の中心部にある大学の学生に聞いたところ、「自分のクルマを持ってるのは自動車部の奴くらい」とのことだった。確かにライフスタイルの変化もあるかもしれない。しかし、奨学金という名の学費ローンの返済に追われている者も多いようで、クルマなんて持つ余裕はないというのが今の学生の実状なのだろう。彼らの親世代も同様に収入が減っていて、子どもにクルマを買い与える余裕などないということでもありそうだ。自分が学生の頃には、親にクルマを買ってもらったという奴がそれなりにいた。

 以上のようなことから考えると、ゴールド免許保持者が運転免許保有者の半数以上ということは、単純に好意的に受け止められるような話ではなく、経済的な後退が進んだという、寧ろネガティブな状況の現れでもあるように思う。


 トップ画像は 【背景素材115】運転免許証4 / 野田工房アニソンカラオケ制作室 さんのイラスト - ニコニコ静画 (イラスト) を加工して使用した。

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