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アベノマスクにまつわるあれこれ


 「文句が止まらない方は、落ち着いたら選挙に立候補して国会議員になって総理大臣になればいい」と、お笑い芸人・サンドウィッチマン 伊達 みきおさんがブログへ投稿したことが話題になっている。これは4/8の投稿の中にある一節だ。自分が最初にこの話を目にした時、もしかしたら字面とは違う意図の話の一部か?と信じられない気持ちだったが、この文章の意図は文字通りのものだった。

そりゃ、支援策や制度に対して言いたい事はあるかも知れないけど、あんまり文句ばっかり並べても今は特に仕方ない。
有事なんだから。

国民全員が納得する策なんて難しいし、きっと…ない。

文句が止まらない方は、落ち着いたら選挙に立候補して国会議員になって総理大臣になればいい。

家で、関連の番組見てると文句ばかりが目立つ。
今は、まず一致団結してコロナウイルスをやっつける事で同じ方向を見ないと乗り越えられないですからね。

東日本大震災の直後、数日間でしたが日本中が同じ方向を向いた気が僕はしました。
これが、彼がブログに投稿した当該の一節を含む部分の内容だ。ツッコミどころは複数ある。まず考えなくてはならないのは、彼が何を指して「文句」と言っているのか、だ。「関連の番組見てると文句ばかりが目立つ」という部分から考えると、恐らく彼は批判や指摘を総じて「文句」と表現している。
 4/8頃、というか今もだが、テレビが批判的な姿勢で取り上げている政府対応は、所謂アベノマスク程度でしかない。自分から見たら、テレビは報道も情報番組も、軒並み政府に対して充分な批判や指摘をしているとは思えない。それはこのブログにも何度も書いてきた。しかし、受け止め方は人それぞれで何も問題はなく、伊達さんがテレビでは政府への批判や指摘が過剰だ、と感じることに問題があるとは言えない。だが、批判や指摘を「文句」と、あたかも不当な中傷かのように表現するのは看過できない。
 つまり、伊達さんの主張は「今は大変な時なんだから、つべこべ言わずに政府方針に従え」である。厳しく言えば、政府の主戦論に対して異論を呈した人達を「非国民」と揶揄し虐げた戦前戦中の考え方と何も違わない。その結果、日本がどのような道を歩んだかは、最早説明する必要すらない程悲惨だった。

 また、最も注目が集まった「文句が止まらない方は、落ち着いたら選挙に立候補して国会議員になって総理大臣になればいい」も、あまりにも幼稚過ぎる。議会制民主主義の何たるかを全く理解できていない。
 「文句があるなら自分が国会議員になってから言え、総理大臣になって変えればいい」が妥当ならば、国会議員にならないと言いたいことが言えない国になる。日本の総理大臣が批判してはならない存在ならば、日本と北朝鮮は一体何が違うのか。バカも休み休み言って欲しい。
 つまり伊達さんの主張はまさにファシズムであり、伊達さんはファシスト、若しくはファシズム・全体主義の信奉者と言える。 伊達さんの言う「文句」が批判だとすれば、伊達さんは政府批判をする人達を批判していることになる。これから当分の間、サンドウィッチマンがどんなネタを披露しようが笑える気がしない。というか、彼らを見る気にすらならないだろう。


 この種の「今は大変な時なんだから文句を言うな、つべこべ言わずに政府方針に従え」という主張は、世間一般ではネトウヨと呼ばれるような、中韓を始めとした外国人や、性的少数者/女性/貧困層など社会的弱者への差別や偏見を厭わないタイプの人達や、ネトウヨのような過激な人達でなくとも、現政権を未だに積極的に支持/擁護している人達が、頻繁に示している考え方だ。
 何故その種の人達がそのような思考に陥るのか、その理由は様々だろうが、理由の一つには、そのような話を広めるWebサイト等の存在が確実にある。


 安倍は、4/17の会見で、朝日新聞の記者に「布マスク(の各世帯2枚配布という施策)や星野源さんの動画でも批判を浴びているが、自身でどのように評価しているのか」と問われ、
今、御質問いただいた御社のネットでも、布マスク、3300円で販売しておられたということを承知しておりますが、つまりそのようなこの需要も十分にある中において、我々もこの2枚の配付をさせていただいたと、こういうことでございます。
と述べた。毎日新聞はこの件を、

“布マスク批判”を指摘の朝日記者に首相が反撃 「御社も3300円で販売」 - 毎日新聞

朝日新聞の質問に対して「御社のネットでも布マスクを3300円で販売しておられたと承知している。つまり、そのような需要も十分にある中で2枚の配布をさせていただいた」と皮肉った。
と伝えた。
 安倍のこの話は果たして皮肉になっていたのだろうか。そもそも、朝日の記者は「布マスク何人家族だろうが世帯2枚、しかも鼻を隠せば顎が出るようなサイズのマスクの配布に466億円も使って何になるのか」のような批判があることを念頭に、自身ではどのように捉えているのか、と聞いたのだが、朝日新聞が自社サイトで2枚で3300円でマスクを販売してることと一体何の関係性があると言うのか。それの一体どこが皮肉なのか。
 しかも、朝日新聞が自社サイトで販売しているのは、批判の的になった政府が配布するマスクとは似ても似つかない品質の商品である。これらを同じものかのように捉える安倍の認識能力は一体どうなっているのか。

洗って再使用できるマスク販売開始【泉大津市マスクプロジェクト】 | 泉大津商工会議所


 トップ画像のネタにもしたが、安倍がどのようにしてこの皮肉にもならない反論のネタを得たのか、について、


このような、所謂ネトウヨ御用達と言われているWebサイトの情報を鵜呑みにしてしまっているのではないか、と一部で指摘されている。安倍のネタ元がこのサイトの記事だったのかは定かではないが、この種のサイトの情報がネタ元でなかったとしても、安倍が同種の主張を繰り広げたことには違いない
 サンドウィッチマン伊達さんは、こんな状況でもまだ「今は大変な時なんだから文句を言うな、つべこべ言わずに政府方針に従え」と果たして言えるだろうか。それとも、伊達さんも、都合の悪いことは目に入らない・聞こえないタイプの人なのだろうか。


 政府によるアベノマスク(この呼び名は揶揄から始まったが、既に大手メディアでもその呼称を用いるようになっている)の一般世帯への配布が先週末から始まったそうだ。介護施設や学校向けなどの配布は既にそれ以前から始まっていて、

妊婦用に配布した布マスクに「黒ずみがあった」。不良品の報告が1900件【新型コロナ】 | ハフポスト

  • 妊婦を対象に配布を始めた布製マスクに汚れなどの付着があった
  • 「糸くずが入っていた」「黒ずみがあった」といった報告が相次いだ
  • 不良品の報告事例は17日午後9時時点で、全国80市区町村から1901件
  • 介護施設で髪の毛の混入が1件、小中学校向けでは虫の混入が1件あった
という報道もあった。妊婦向けマスクの総数は50万枚、介護施設向けは約1930万枚、小中学校向けが約800万枚だそうなので、不良率は決して高くないし、それ程気にするものでもないようにも思う。だが厚労省が、
17日から配布が始まった一般世帯向けの布マスクについては「メーカーから納品された商品について目視をした上での配布を行っており、同様の事例が生じる可能性は減じている状況です」と説明
したというのはどうか。これではまるで、品質チェックをしない業者からマスクを仕入れています、と言っているようなものだ。

466億円かけたアベノマスク 厚労省がメーカーヒタ隠しの怪|日刊ゲンダイDIGITAL


によると、厚労省はマスクの発注先について「具体的なメーカー名については、終始「答えられない」の一点張りだった」そうだ。また、4/2にはこんな記事も報じられている。

「布マスク2枚」製造は首相地元で? ネット憶測も厚労省「山口県の企業が念頭にあるわけではありません」: J-CAST ニュース


数百億もの国家予算が動くのだから、癒着を疑われたくないのなら発注先を公開するべきだ。というか、公開しないのは「公開すると都合が悪い理由があります」と言っているにも等しい。

安倍総理「一日も早く」10万円給付の迅速な実施を


 これは今日の昼のニュースの映像だが、安倍以外は国が配布するという布マスクを誰も付けていない。これは今日に限った話でなく、以前からずっとこの状況である。国に、というか首相の示した方針に文句というか異論がないのなら、安倍の周辺は、少なくとも記者やカメラの前では、誰もがアベノマスクを付けている筈だ。

 サンドウィッチマン伊達さんのように、「今は大変な時なんだから文句を言うな、つべこべ言わずに政府方針に従え」と主張する人達は、間違いなく大事な何かを見誤っている。

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