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感染症対策を政治的なカードとして利用し、小出しにする悪魔


 このカードゲームのことをトランプだと思っているのは日本人だけだ。トランプとは、本来はここぞと言う時に切る「切り札」という意味で、英語ではこのカードゲーム用のカードのことを「プレイングカード / Playing cardWikipedia)」と呼ぶ。トランプ - Wikipedia には、出典の記載がない為に真偽は定かでないが、明治時代、入国した欧米人がゲームをしながら「トランプ」という言葉を何度も発していた為、日本人はそれをカードの名称だと勘違いした、という説が掲載されている。

 「カードを切る」という表現は政治分野でもよく用いられる。外交カードとか外交的なカードとして利用、なんてのはその典型的な例だ。勿論外交だけでなく内政的な場面でも、外交場面ほどその種の表現は用いられてはいないが、政治カード、政治的なカードを切る、という表現が使われることがある。

「夜の繁華街」に感染症対策で最大200万円。安倍首相が支援策を表明 | ハフポスト


 という記事が昨日報じられた。昨日・5/25に首相である安倍が緊急事態宣言解除に関する会見を行い、 その中で
3つの密が濃厚な形で重なり、これまでも集団感染が確認された夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、ライブハウスなどについては、御協力を頂いていることに感謝申し上げます。こうした施設も、専門家の皆さんに御協力いただきながら、来月中旬をめどにガイドラインを策定し、上限200万円の補助金により、有効な感染防止対策が講じられるよう支援する考えです
と述べた、ということに関する内容だ。
 何故今更、というか緊急事態宣言を解除する頃になってこんなことを言い始めたのか。なぜ2か月前にこれを言わないのか。しなかったのか。夜の繁華街の接待を伴う飲食店、バーやナイトクラブ、ライブハウスなどへのバッシングが始まったのは2月の終わりから3月初旬にかけてだ。遅くとも3月後半には感染源として槍玉に上げられ、その種の業種は休業を余儀なくされ、営業を続ければ自粛原理主義者によって攻撃される状況だった。それから2ヶ月経ってやっと策の検討を始めるなんて、対応が余りにも遅すぎる。この間に既に廃業に追い込まれた関係者もあるというのに、一体今頃何を言っているのか、という感しかない。

内閣支持率29%、発足以来最低に 朝日新聞世論調査:朝日新聞デジタル



 とも報じられていて、他の媒体による調査でも支持率は軒並み30%以下になっていることを考えると、支持率の回復、又は維持を目論んで、今更そんなことを言いだしたという懸念を強く感じる。果たして、

 急を要する感染症対策を政治的なカードとして利用して小出しにする

なんてことが許されるだろうか。それは間違いなく人道に反する行為であり、政治家としては当然、それ以前に人としてアウトだとしか思えない。
 こんな男が首相であることを恥ずかしく思うし、政治に関心を持たない、政治的判断を人任せにする、つまり民主主義を放棄して、この男が首相であり続けることを、消極的にかもしれないが容認してきた人達にも憤りを感じる。何故なら、この男を結果的にでも容認するということは同類と思えるからだ。「自分は関係ない」という態度でいじめを傍観する人への憤りと同種の感情が湧いてくる。


 果たして、このことをどれだけのメディアが取り上げただろうか。「夜の繁華街」でテレビ各社と主要新聞社(朝日/毎日/読売/産経/東京)のサイトを検索してみた。
ヒットした当該事案に関する記事はこれだけで、しかもどれもが首相会見の発言を単に引用しただけの記事だ。つまり「―と述べました」というだけで、評価も批判も全くない。 「夜の繁華街」で検索してみると、いくつか「自粛をもう続けられない」とか「廃業するしかない」という、繁華街の悲鳴のような声を取り上げた記事もヒットするので、日本の大手メディアが軒並み夜の街に冷たいとは言えないかもしれない。だが、首相がそれへの対策を政治的なカードとして利用している恐れに言及する記事は全く見当たらない。それでメディアは役割を果たしていると言えるだろうか。自分には到底そうは思えない。


 しかも、どのメディアも軒並み、ライブハウスや夜の街でクラスターが発生したという報道は、これでもか!という程行っていた。なのに行政の支援の薄さや遅さは殆ど記事化しない。日本のメディアは誠実と言えるだろうか。彼らは一体どこを向いているのだろうか

 朝日新聞記者のこんなツイートが全てを物語っているように思う。


 トップ画像は、Photo by Alessandro Bogliari on Unsplash を使用した。

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