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死神に名刺貰ったってどうしようもない


 炎上という表現は短絡的に聞こえるのであまり好きではないが、厚労省が6/19に公開した新型コロナウイルス接触確認アプリ・通称:COCOA が燃えている。厚労省がCOCOAという名称で紹介したのに、アプリの名称にCOCOAという文字はなく、COCOAで検索しても出てこないという批判が当初から目についていた。しかし、それはこのアプリの不細工さの氷山の一角に過ぎなかった。

 そもそも、コロナ対応で平然と性産業等への職業差別をやり、しかもその過ちを認めない厚労省、そして天下の愚策ムダナマスクの過ちを認めずに配った政府主導のアプリなんて期待を全くしていなかったし、信用ならない組織が開発を主導したアプリを、個人情報の塊であるスマートフォンに入れたいなんて全然思えなかった。だが、名称の不備なんてのは序の口で機能面での不具合も複数発覚した。
 このアプリは、検査で陽性と判明した場合に保健所から発行される処理番号を利用者自身が入力することで、14日以内に一定の条件で接触した他の利用者に通知されることになっている。保健所から発行されていない処理番号を入力した場合、エラーとして処理しなくてはならないが、間違った処理番号でも「完了しました」と表示されてしまう。不適切な番号を入力しても陽性者として登録されず、他の利用者に通知もされない、とのことだが、陽性と判定された人が誤入力したことに気付けないシステムには問題がある。
 また、6/22以降に同アプリの使用を開始しても「2020年6月22日から使用中」と表示されるなど、使用開始日がリセットされる不具合も確認されている(COCOA_(アプリケーション)#トラブル・不具合 - Wikipedia)。

接触確認アプリCOCOA、複数の不具合|TBS NEWS


 しかもこのアプリの問題は機能面での不具合だけにもとどまらなかった。同アプリの受発注に不透明な部分があり、果たして予算が適切に開発費に充てられているのか、にも怪しさがある
 だが、最も驚いたのは東京新聞などが伝えた、
感染者と濃厚接触した可能性があると通知を受けても、アプリからの質問に対する答え方によっては、受診につなげてもらえないケースがある
という話だ。

濃厚接触?でも検査なし 感染者通知アプリ導入「何のため」:東京新聞 TOKYO Web


 自分はこの話を聞いてすぐに、黒澤 明監督のオムニバス形式の映画「夢」の中の1つ、「赤富士」を思い出した(夢_(映画)#赤冨士 - Wikipedia)。

 夢は1990年の映画で、黒澤 明監督自身が見た夢を元にして作られている。赤富士は、富士山が大噴火した影響で原発炉爆発事故が起きるという設定の話である。 この夢・物語・設定の背景に、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故(チェルノブイリ原子力発電所事故 - Wikipedia)があったことは誰の目にも明白だし、戦前生まれの彼の頭の中には、広島長崎への原爆投下と多数の市民の被爆もあっただろう。


 同作品の中に、幼い子どもを抱えながら逃げ惑う母親のこんな台詞がある。
原発は安全だ。危険なのは操作のミスで、原発そのものに危険はない、絶っっ対ミスは犯さないから問題はないって抜かした奴ら、許せない!
このような台詞があったこと、というかそもそも、有り得ないとされていた日本での原発事故が、2011年に東日本大震災による津波によって起きたことで、この夢・赤富士に再び注目が集まった。
  赤富士にはこんな台詞もある。
しかし全く人間はアホだ。放射能は目に見えないから危険だと言って、放射性物質の着色技術を開発したってどうにもならない。知らずに殺されるか、知ってて殺されるか。それだけだ。死神に名刺貰ったってどうしようもない。
この台詞の話こそが、厚労省のアプリで濃厚接触した可能性があると通知を受けても、受診や検査に繋がらない、という話との共通点だ。夢・赤富士は、着色された放射能が迫り、それを主人公が必死にジャケットで仰いで避けようとするが、そんなのは徒労に過ぎず何の意味もない、と言わんばかりのカットで終わる。


 感染の恐れがあっても検査も診療もして貰えないのに、感染を確認したところで一体何になるのか。そんなのは夢・赤富士の中でスーツの男性が言う「知らずに殺されるか、知ってて殺されるか」と同じようなものだ。そんなアプリをインストールすることに何の意味があるのか。というか4100万もの予算をかけて開発することに何の意味があるのか。


 現在の政府の「やってる感の演出」「利権の確保」に終始する姿勢には本当にうんざりしている。だがそれでも、不支持が支持を上回っているものの、まだ3割強の人がこの政権を支持しているそうだ(内閣支持率31%、不支持率は52% 朝日新聞世論調査:朝日新聞デジタル)。 呆れてものも言えない。

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