スキップしてメイン コンテンツに移動
 

ゆるフワ政権とゆるフワ支持者

 ○○にマジ感謝。日本のヒップホップやレゲエなどの楽曲でよく歌詞に用いられるフレーズだ。厳密に調べたわけではないが、最も多いと感じるのは、母や父などの親への感謝だ。次に多いのは多分友達で、その後に地球や自然、故郷や地元などが続くように思う。
 自分はこの手の歌詞に大抵共感できない。具体的な何かがあってそれらに感謝と歌っているなら「そうか…」とも思えるのだが、あまりにも漠然としたそれらへ感謝と歌っている曲も少なくない。そのような歌詞の、感謝という言葉を口にする自分に酔っている感じが好きになれない。


 タレント/モデルのダレノガレ 明美さんが昨日こんなツイートをしていた。

 彼女は、コロナ危機が始まってから一体何日分の首相動静を調べて「この数ヶ月全然休まないで国の為に動いてくれてた」と言っているのだろうか。”休まないで”の定義には人それぞれの認識によって揺れもあるだろうから、全然休んでいない、が一応妥当な認識だとして、彼女は、安倍が休まずに国の為に、具体的に何をしたと思っているのだろうか。一体安倍がした何に感謝しているのだろうか
 日本のヒップホップやレゲエは、昭和後期のロック同様に不良文化と重なる部分が多く、その種の人達は、漠然とした「絆」とか「感謝」とか、そんな言葉に酔いしれる傾向が強いように思う。彼女が学生時代不良だったのか知らないが、所謂不良でなくてもヤンキー気質の人はいる。テレビやSNSで見る彼女からはヤンキー気質をしばしば感じる。また彼女には、大した準備もせずにニューヨーク留学を匂わせるなど、ゆるフワな発言をする側面もある。そんな印象から、このツイートも大して考えもせず、雰囲気だけで「この数ヶ月全然休まないで国の為に動いてくれてたもんね。私は安倍首相に感謝しかないです」と言っている気がしてならない。
 彼女のSNSでの影響力が相応にあることを前提に、周りの誰かが彼女が自発的にそうツイートするように吹き込んだということもあるかもしれないが、それでも彼女はもうれっきとした大人で、漠然とした雰囲気だけで事実に沿っているとは言い難い話に共感してしまい、このようなツイートをしたのなら、批判や指摘を受けるのは当然だ。この種の比較的若い人の政治的な発言を批判すると、「だから若者が面倒くさいと政治を敬遠するようになる」と言う人もいる。だが、いい加減なことを言っていたら(言っていると判断されたら)指摘されて当然だろう。 彼女だって、自分の主戦場であるファッションや芸能などに関して、自分にも関わるいい加減な言説が目につけば、そうするのはないか。つまり批判や指摘に問題はなく、不適切なのは合理性を欠いたいい加減な批判、というか批判の範疇に入らない中傷である。

 この「安倍を休ませろ」という話の発端は、自民党・税制調査会長の甘利が8/16にフジテレビ番組で、安倍がコロナ危機対応の為連続勤務となっているとして、

ちょっと休んでもらいたい。責任感が強く、自分が休むことは罪だとの意識まで持っている

と述べたことだった。

甘利氏、安倍首相を「休ませて」 コロナ対応で疲労蓄積を心配 | 共同通信

 これを見て、2016年にURをめぐる口利き疑惑を指摘された、当時経済再生担当大臣だった甘利が「何をしたかは記憶が曖昧だ」と言い逃れ、大臣を辞任し、睡眠障害を理由に当時会期中だった通常国会を閉会まで欠席したことを思いだした人も多いだろう。
 つまり甘利は、指摘された疑惑についての説明責任から、病を口実に逃げた男、と言っても過言ではない。そんな男が、コロナ危機対応の不手際で支持を落とし、憲法無視で国会招集を拒み続ける首相に関して、病の恐れを匂わせて「休ませろ」と言っている。ダレノガレさんのようにこんな話を真に受ける人は、間違いなく詐欺に引っかかるタイプだ。自ら詐欺師に向けて「私を狙って!」と言っているにも等しい。家族や周辺の人間は巻き添えを食わないように注意すべきだ。

 甘利は昨日・8/17にこんなツイートもしている。

安倍が強制的に休ませなくてはならない勤務日程だとは、コロナ危機以降の首相動静を見ても全く考え難い。週末は殆ど、数分から1時間程度しか公務に当たっていない。しかも公務と言っても、官邸で数分報告を受けるだけ、の日もザラだ。甘利は「側で見る限り総理は間違いなく懸命に取り組んでいます」と言っているが、ということは、そばで見ないと分からないようなことしかしていないということだろう。勿論、首相動静には載らないような、そばで見ないと分からないようなこともあるかもしれない。だが、何もかもが首相動静に載らないような秘密主義ではそもそも困るし、安倍の側近である甘利がそのように擁護するのは当然で、字面を額面通りに受け取るのは到底無理だ。
 それとも、憲法無視してまで国会開かないようなこと、つまり保身の為に「間違いなく懸命に取り組んでいる」ということなのだろうか。もしそんな意味合いならモノは言いようだ。法や憲法すら都合よく歪曲する安倍自民党政権らしい、という感しかない。休むことに罪の意識はあっても、憲法を無視することに罪の意識がないのは間違いなくおかしい。

 批判から逃れる目的で体調が悪いとアピールする為か、それとも本当に何かしらの不具合があるのかは分からないが、昨日安倍は病院で検査を受けたそうだ。それを受けて副首相の麻生は、

あなたも147日間休まず働いてみたことありますか?ないだろうね、だったら意味分かるじゃない。140日休まないで働いたことないだろう。140日働いたこともない人が、働いた人のこと言ったって分かんないわけですよ

とこんなことを言っている。

安倍首相 7時間検査終了、記者団に「お疲れさま」|TBS NEWS

 なんとも酷い言い草だ。全く国民をバカにしている。自分はブラック企業の下で、盆正月を含め年間休日たったの23日という勤務をしたことがあるし、農業や畜産など植物や動物などの生き物を相手にする職業は、その程度の勤務はある意味日常的だ。平時なら兎に角、コロナ危機という緊急事態下で、週末には数分しか公務に当たらない日もあるのに、何を強気に「147連勤はお前らの想像の及ばないもんなんだよ」のようなことを言っているのだろうか。
 大体、安倍がまともなコロナ対応をしており、国会招集要求にも即座に応じているならば、そのような主張もまだ分かる。だが、感染再拡大を無視した旅行促進政策を強行したり、誰も使わないマスクに数百億もの予算を無駄遣いしたり、余計なことしかしていないのだから、働きたくない、説明責任を果たさない、のならどうぞ辞めて貰って構わないとしか言いようがない

 因みに麻生は、民主党政権下で自民党が野党だった頃にはこんなことを言っている。

安倍自民党政権には、野党の頃にはTPP断固反対を標榜していたのに、政権に返り咲いた途端に手のひらを返してTPP推進に変わったという経緯もある。他にもこの政権下では、首相だけでなく政府関係者や与党幹部が、筋の通らない話でも強引に押し通すということがしばしばある。麻生もまさにこの政権の色に染まった男だ。というか感染源の1人と言った方が正しいのかもしれない。現在の自民党政権は、コロナウイルス以上に酷い詭弁上等症とでも言うべき感染症を日本に蔓延させている

 自分は、こんな政権、政治家らに「感謝しかない」という人の気が知れない。

 トップ画像は、Photo by Heike Mintel on Unsplash を加工して使用した。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。