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大統領選の途中経過を見て思うこと

 2020年11/3はアメリカ大統領選の投票日だった。コロナ危機の影響もあって郵便投票数が過去最高に多いらしく、また接戦の地域も多いようで、今のところ民主党のバイデンが優勢のようだが、まだ確実視できるような大勢は判明していない。トップ画像はこの投稿を書いている時点の開票経過を示したアメリカ地図だ。


 メディアの多くは逐次情勢を伝えているし、自分のタイムラインにも昨日から実況のようなツイートが流れてくる。個人的には、大統領選にしろ日本の選挙にしろ、投票はもう締め切られているんだから、後は最終結果だけに価値があり、開票速報にはそれ程価値があるとは思わない。だが開票速報に注目することは、トップ画像の地図のような投票傾向の詳細を知るには丁度よいのかもしれない。
 勿論後からまとめて分析した方が分かりやすいのかもしれないが、注目するのは野球やサッカーをリアルタイムで見る、みたいなものだろう。自分は野球やサッカーなどにあまり興味がなく、例えば日本代表の試合に関して結果が分かるダイジェストを見る程度で充分だが、その競技やチームのファンは、リアルタイムで詳細に内容を追うこと、つまりスタジアムに足を運んで試合を見る、それが出来なくてもリアルタイムで中継を見ることこそが重要だと言う筈だ。
 自分にとってのそれはモータースポーツで、特に一番楽しみにしているバイクレース、MotoGPやWorldSBK、MotoGPの2部リーグのような存在のCEV、更にその登竜門であるAsia Talent Cupに関しては、結果とダイジェストだけでは物足りずリアルタイムで中継を見たい。昨今は家にいなくてもネット中継をどこでも見られるようになったので、以前よりもリアルタイムで鑑賞したい熱は上がっている。
 選挙の開票過程に注目する人も同じ様な感覚なのだろう。大統領選に関しては、米国らしくエンターテインメント的な演出もかなりされているし、制度的にもエンターテインメント性があるように見え、日本の選挙よりも更にそんな傾向にあるのかもしれない。


 トップ画像の地図だけを見れば、共和党つまりトランプの勝利/優勢を示す面積の方が広く、トランプ優勢にも見えるが、大統領選は国盗り合戦ではなく、全50州と首都ワシントンDCの計51地域に割り振られた選挙人・538人を取り合う仕組みであり、この投稿を書いている時点でバイデンが既に過半数の選挙人を獲得する可能性が高い。

 自民党政権という重大疾患の末期患者のような日本に住んでいる者が言うのもなんだが、この地図を見ると、トランプがこれだけの票を獲得しているのを見ると、もしバイデンが当選したとしても、アメリカは相当深刻な病に侵されてるとしか言えない
 何故なら、ハフポストがまとめた記事からもわかるように、トランプはこれまでにいくつもの差別発言を繰り返し、また大統領になってもそれは変わらず、都合の悪いことには根拠も示さず陰謀論を煽る人物だからだ。

トランプ大統領はどんな差別発言をしてきたのか。70年代からこれまでの言動を振り返ってみた | ハフポスト

 もしトランプがどんなに素晴らしいことをやっていたとしても、それはこれらの言説を相殺するものではない。アメリカ人の少なくとも1/4-1/3が、差別主義者、優しく言っても差別を厭わない者を大統領に推している、というのが現実である。繰り返しになるが、日本では過半数の有権者が自民党政権を容認する投票行動をもう8年以上も繰り返しており、米国よりも深刻な状況である、ということはあらためて付け加えておきたい。


 アメリカでは1861-65にかけて南北戦争が起きた。南北戦争とは、奴隷制存続を主張するミシシッピ州やフロリダ州など南部11州が、合衆国を脱退してアメリカ連合国(所謂南部連合)を結成、合衆国にとどまったその他の北部23州との間での戦いである(南北戦争 - Wikipedia)。

 この南北戦争当時の勢力図を見てわかるのは、ラストベルトと呼ばれる中西部の東側はやや例外的ではあるが、現在トランプ支持が多いのは、概ね当時の南部連合と、当時はまだ州以下の扱いだった西部内陸部だということだ。奴隷制存続を主張した南部連合と差別的な大統領を推す地域が大きく重なっていることはとても興味深い。
 また別の視点で見れば、現在の状況は南北による分断ではなく東西沿岸部と内陸部、または都市部とそれ以外の分断のようにも見える。次の画像は、議会政治が専門分野のライター・平河エリさんのツイート(その1/その2/その3)からで、これらの画像からも都市部のバイデン支持、郊外のトランプ支持は明白だ。

 特に象徴的なのは一番最後に掲載したニューヨーク州で、同州では8割がバイデンに投票しているが、それでも郊外ほどトランプ支持が多いという結果である。

 今朝、カメルーン生まれ日本育ち星野 ルネさんがこんな漫画をツイートしていた。

 このマンガを読んで自分は、

何かの凶行に及ぶ人の背景には何があったのか、を見ずに単に狂人として扱うのは、凶行をなくすことに繋がらない。物事には凡そ因果があり、銃爪になること、考えが歪んでしまった原因が間違いなくあるはず。

引用ツイートをした。前回の2016年でトランプが当選した背景には、間違いなく政界/財界エリート層への不信が間違いなくあった。今、アメリカが再び南北戦争寸前の状況に陥り、決して少なくない人が差別的な人物を大統領に推すのにも、間違いなく何かしらの理由がある。勿論、理由があれば差別や偏見も容認されるなんてこれっぽっちも思わない。だが、その理由をしっかりと分析しなければ、もし今回の選挙でトランプが落選したとしても、同じ事が再び起きてしまう恐れは消せない。
 将来の為に過去、そして今を省み、それを糧に今ある問題に対処することが、あるべき社会を実現する近道であり唯一の方法だ。大事なことは事実と現状の適切な把握と分析であり、情緒を優先すると間違いなく社会や民主主義/自由主義は後退してしまう。


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