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興味のあることばかりに触れ、興味の薄いことを遠ざけるのは不健全

 2010年代初頭に絶大な人気を誇ったテレビドラマシリーズ・ウォーキングデッド。自分が見始めたのはシーズン2が放送/公開された頃だった。これまでに放送/公開されたシーズンは一応全て見ているが、この数年は全盛期のような期待感もワクワク感もなく、ほぼ惰性で見ているに過ぎなかった。そのウォーキングデッドも、次に放送/公開されるシーズン11で終了するそうだ(ウォーキング・デッド - Wikipedia)。


 ウォーキングデッドシリーズはケーブルテレビ/CSだけでなくHuluやNetflixでも配信されているが、米国ではAMCというケーブルテレビ局、その他の地域ではFOX系列のケーブルテレビ局で放送される番組であり、日本でもFOXチャンネルが最も早く放送する。今後の放送/公開予定を調べたくて、FOXチャンネルのサイトを久しぶりに開いてみたら、今まで4つのチャンネルを擁していたFOXチャンネルが、いつの間にかメインチャンネルであるFOXチャンネルだけになっていた
 以前FOXと名のつくケーブルテレビ局は、映画チャンネルのFOXムービー、過去の名作ドラマを中心に放送するFOXクラシック、スポーツやバラエティー番組を中心に放送していたFOXスポーツ&エンターテイメントの4つのチャンネルがあった。だが、まず2018年9月でFOXクラシックが、そして2020年3月にFOXスポーツ&エンターテイメント、更に2021年1月でFOXムービーも放送を終了し、今は最新ドラマを中心に放送しているグループメインチャンネルのFOXチャンネルだけが残っている。
 因みに、ドキュメンタリー番組のチャンネル・ナショナルジオグラフィックTVもFOXグループのチャンネルで、以前はナショジオワイルドというサブチャネルがあったが、そちらもFOXムービーと同じく2021年1月で放送を終了している。

 FOXグループのイメージは、トランプ政権を強引に擁護し続けたFOXニュースが大きく下げたように思う。それだけが、日本のFOX系チャンネルがこの数年で急激に縮小している理由ではなく、消費者がケーブルテレビやCS放送からHuluやNetflixなどのオンデマンド配信に移行していることもその要因だろう。しかし日本でもFOXスポーツ&エンターテイメントで、悪名高いDHCテレビの番組・ニュース女子などを放送していた。そのような局の姿勢も、少なからず敬遠されることに拍車をかけたのではないだろうか。

 姿勢によって敬遠されることに拍車をかけている、ように見えるのは決してFOX系チャンネルだけではない。個人的には、フジテレビとNHKには、基本的にフジテレビ/NHKというだけで見る気になれない程の不信感を抱いている。そして程度の差はあれど、同じ様なイメージをテレビ業界全体に感じていて、全く一切見ないわけではないが、主にテレビ報道への不信から、今は殆どテレビを見なくなった
 しかしそうなると、自分の下に届く情報には偏りが生じる。テレビニュースを見ることは、自分の興味のあること以外のニュースにも目を通すきっかけになるが、主にWebを通じてニュースに接していると、自分の興味の対象以外の話題に接する機会が減る
 例えば自分は、スポーツはモータースポーツ以外あまり興味がないので、Webではその専門サイト以外は殆ど見ない。そうなると日本で最もメジャーなスポーツである野球やサッカー、大相撲のことなどは殆ど分からなくなる。去年どこが優勝したのか、今一番勢いのある力士は?なんてことは全く知らない。同じ事はスポーツ以外にも言える。

 新聞にも同じことが言える。紙の新聞を毎日手にとることと新聞社のWebサイトを毎日チェックすることは、似ているようで結構違う。紙の新聞に毎日目を通すと、テレビニュースを見ると同様に興味の薄いことを知るきっかけになる。Webサイトでは興味の薄い記事は、見出しだけ見てクリックせずにスルーしてしまうが、紙面ならば記事全文を読まなくとも写真や記事の一部の文字も目に入ってくる。これはかなり大きな差だ。
 紙の新聞を読み比べるのは金銭的コストが高くなかなか現実的とは言い難い側面があり、無料で記事の一部/又は全部が読めるWebサイトだと、各社記事の読み比べが出来るというメリットもあるが、触れる情報が個人の興味によって大きく偏りやすいというデメリットもある。

 2019年の記事だが「CMが流れないNetflixだけを見る子どもは1年で400時間も節約していることが判明 - GIGAZINE」という記事がある。CMを見ないことは時間の節約、という文脈で記事が書かれているが、果たしてその認識は妥当だろうか。
 勿論全く妥当性はないと全否定するつもりはない。しかしCMから見えてくるものも確実にある。CMがあるから知ることが出来た商品やサービスというのもある。CMがなかったら湧かなかった興味も確実にある。つまり、CMを見ることは全く時間の無駄、とは言い難く、CMを見ないことを時間の節約とすることも、決して妥当とは言えない、と自分には思える。
 確かに今、在京キー局ですら、昼の時間帯の番組で流れるCMの質の悪さには辟易する。言い方は悪いかもしれないが、CSやBS、ケーブルテレビ局でよく見かける類の詐欺まがいのCMがガンガン流れている。自分もその種のCMを見せられるのは時間の無駄だと思う。Youtubeなどのように見たくないCMを拒否できないテレビから消費者が離れるのも当然だ、という気もする。しかし一方で、自分が見たいものばかりを見て、興味の薄いものを遠ざけることも決して健全とは言えない

 多くの人は、生まれてから大人になるまでの長い時間に最も長い時間を共に過ごす親の影響を強く受ける。それはその親が素晴らしい人間だろうが怠惰で愚かな人間だろうが関係なく、間違いなく影響を受ける。親子の関係には遺伝的な要素もあるだろうが、それよりも後天的な要素の方が大きいと自分は考えている。極端なことを言えば、生まれたばかりの鳥は、親でなくても動くものを親と認識するようなもので(刷り込み - Wikipedia)、人間だって血縁関係がなくても長い時間を共有していれば親子のような関係になる。
 但し、血縁関係があれば全ての親子関係が良好になる、わけではないのと同様で、血縁関係がない親子関係だって同じだ。しかし長い時間を共にすれば間違いなく、良い影響/悪い影響を受けることになる。しかし接することのない人からは影響の受けようがない

 それは親子関係や人間関係に限らず、情報に関しても同じだ。接する情報によってその人がどんな影響を受けるかには違いが出るし、情報の量によってもそれが言えるだろう。たった1本のいい加減な陰謀論に関する動画を見ただけと、毎日数時間その種の動画に接する場合とでは、間違いなく受ける影響には違いが出るだろう。

 コロナ危機下において、維新のような政党や政治が、これまで無駄だと廃止したり縮小したりしたもの、例えば保健所や看護師などへの支援などが、実際は無駄ではなく有事に役立つセーフティーネットだった、ということが明確になったことは記憶に新しい。
 つまり、物事を極端に取捨選択すると、思わぬ悪影響に見舞われかねない、ということである。自分の興味のあることばかりに触れ、興味の薄いことを遠ざけるのは間違いなく健全でなく、そういうことをした人達、そういうことを可能にした環境が、所謂Qアノンと呼ばれるような類の陰謀論者を作り出し、おかしな言説が勢力を増す原因の一つになっているのではないか。


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