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深刻な報道機関・メディアの劣化

 テレビに関わっている人程、関わりが深ければ深い程、おかしなことを言う確率が高くなる。と最近強く感じている。テレビが軒並み報道機関とは言えないような状況なのに報道機関のふりをしていて、その組織から仕事を貰う為には、そのような実状から目を背けるか、若しくはそれを肯定しなくてはならないだろうから、そうなるのは当然かもしれない。
 中にはそれでも一線を引いている人もいるが、そんなのは少数派だ。


 昨夜から、テレビ朝日が公開した報道ステーションのCMが批判の的になっている。若者、特に若い女性を無知と決めつけて描いているなどの批判もあるが、主に批判の対象になっているのは「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」というセリフだ。

報道ステーション よる9時54分 月~金 テレビ朝日「報ステ」2021年新PR30秒 - YouTube

 このCMについて、文筆家の古谷 経衡がこんなツイートをしている。

 このCMが表現したかったのは、「ジェンダー平等の実現を目指すのは今時当たり前なのに、スローガン的に掲げるしかない政治状況」への揶揄・皮肉という考察には自分も賛同する。しかし未だ日本は、

  • ジェンダーギャップ指数121位/153カ国
  • 男女賃金格差ワースト2位/37カ国
  • 女性管理職比率165位/189カ国
  • 女性国会議員比率153位/193カ国
  • 女性大学院進学率33位/37カ国
  • 女性研究者比率ワースト1位/37カ国

という状況にあり、そして8年も続く自民政権は、女性活躍を掲げつつあれこれ理由をつけて、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的位置に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標」所謂202030を達成せず、目標の達成時期を10年も先送りしており、日本ではジェンダー平等もそれを目指すことも当たり前とは言い難い状況であり、そんな状況下にも関わらず「どっかの政治家が『ジェンダー平等』とかってスローガン的にかかげてる時点で、何それ、時代遅れって感じ」というセリフを用いれば、「ジェンダー平等なんて何言ってんの?そんなの重要じゃないでしょう(笑)」という、ジェンダー平等を訴える人への嘲笑にも聞こえることは否定できないし、それを若い女性に笑顔で言わせる演出も決して上手くない。
 優しく言えばこのCMの表現は分かりにくい。言おうとしていることが伝わり難い。と言うよりも寧ろ伝わらないと言っても過言ではないし、現実に伝わらなかったから批判の的になっている。

 このCMの企画制作の段階で誰からも異論が出なかったから公になったのは間違いない。そのような観点で言えば、数日前に話題になった、周囲からの異論で話は進まなかったが、発想の卑しさが批判された、渡辺 直美さんにオリン”ピッグ”(豚)というネタをやらせようとしたオリンピック開会式演出案よりも、報道ステーション・テレビ朝日は更にレベルが低い状況だ。

 この件を東京新聞は、「ジェンダー平等をかかげるのは時代遅れ」報道ステーションの女性蔑視CMがネットで炎上:東京新聞 TOKYO Web という見出しで伝えているが、新聞がこの事案を「炎上」という見出しで報じるのは適切か。炎上という表現は、妥当な批判が大半を占める場合にも、言い掛かりや中傷が大半を占める場合にも使われる表現だ。テレビ朝日のCMにも報道機関・メディアの劣化を感じるが、それを報じる東京新聞の見出しにも、報道機関・メディアの劣化を感じる。


 報道機関・メディアの劣化を感じるのはその件だけではない。毎日新聞が昨日、

とツイートをしていた。リンクをクリックする前に、このツイートを何度も読み返してみたが、何度読み返しても、一体何が言いたいのかがよく分からない。誰が何をした、という文章の基本的な部分が全然見えてこない
 記事の見出し「ゴルゴ13が海外でのコロナ対策を指南 企業に漫画配布 外務省」からも、誰が何をした、が伝わってこない。「外務省(が)、ゴルゴ13が海外でのコロナ対策を指南する(内容の)漫画を、企業に配布」の方が、万人に分かりやすいのに、なぜこんなにも分かり難い表現をするのだろう。 見出しの方はまだマシだが、ツイートの文章からそれを読み取るのはかなり難しい。というよりも、ツイートの文章だけでそれを読み取れる人はかなり少ないだろう。
 もしも、わざと分かり難い文章をツイ―トすることで、内容を確認したい気持ちを煽り、リンクをクリックさせようとしているのだとしたら、毎日新聞がやっていることは、事実や本文内容とは異なるセンセーションな見出しを用いてPVをあげようとする、粗悪なまとめサイトと同じようなレベルである。もしそうでなくても、分かり難い文章を報道機関名義で書くというのは、組織としての劣化と言うよりほかない


 更にはこんな事案もある。東京新聞が今朝公開したこんな記事がある。

猫と人、幸せな地域に 御殿場、野良の住民苦情解消 補助制度浸透 不妊・去勢など活発に:東京新聞 TOKYO Web

糞尿や発情期の鳴き声など地域の野良猫に関する苦情を受けて、野良猫を捕獲して不妊・去勢手術をし、再び放した後は地域ぐるみでトイレや餌やりを管理する「地域猫活動」が、御殿場市で行われている、という内容だ。
 この記事の見出しによくも「猫と人、幸せな地域に」なんて見出しをつけるものだ、という感しかない。というか狂気すら感じられる。野良猫とはいわば野生の猫だ。野生の猫を人間の都合で強制不妊・去勢しているのだが、果たしてそれで猫は幸せか。猫の身になってみれば幸せでないことは明白だ。
 数年前に、優生保護法によって障害者が強制的に不妊手術を受けさせられていた件についての裁判があったことを、この記事を書いた記者は覚えていないのだろうか(旧優生保護法の救済法が成立、強制不妊手術の被害者に一時金 - BBCニュース)。猫への強制不妊・去勢を猫の幸せと認識するなら、障害者は強制不妊を受けた方が幸せとも認識しているのだろう。人間だと不適切だが動物には適切という話なら、エゴ塗れとしか言いようがない。
 多くの野生動物に関しては基本的に人間が手を加えずにありのままにするのが良い、という考え方は一般的だ。なのに、野良犬や野良猫だと急に、強制不妊・去勢したり、捕まえて殺処分することも仕方ないとなるのは何故か。動物愛護とは一体なんなのか。田畑を荒らす猪や鹿など、人に危害を加える野生の猿や野犬などの例もあるので、駆除が絶対悪とまでは言わない。しかし駆除は人間の都合による駆除であり、駆除される動物は幸せになれない。幸せになるのは人間だけだ。
  だから、この記事に「猫と人、幸せな地域に」なんて見出しをつけるのはどうかしている、としか思えないし、狂気に満ちているとすら思える。

 
 この投稿のタイトルを「深刻な報道機関・メディアの劣化」としたが、実際は劣化ではなく停滞・進歩のなさなのかもしれない。メディアに限らず、政治にしろ社会全般にしろ、諸外国が21世紀になっているにもかかわらず、日本は1990年代で時が止まっている、寧ろそこから逆行していると感じることがあまりにも多過ぎる。


 トップ画像は、 Thomas UlrichによるPixabayからの画像 を加工して使用した。

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