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2018年・平成最後の年末に感じる、民主主義から封建主義への回帰傾向


 とうとう2018年も今日で最後になった。この年末は来年現天皇陛下の退位、皇太子の天皇即位が確実な為、「平成最後の」という枕詞が飛び交っている。自分は昭和から平成への代替わり・改元しか経験していないが、明治以降、というかそれ以前もこんなに前から代替わり・改元が公にされたことはないだろうから(ちゃんと調べてないので、もしあったらごめんなさい)、改元以前に「○○(元号)最後の」なんて謳い文句が飛び交うのは初めてなんじゃないだろうか。
 テレビや新聞、Webメディアなどで「平成のまとめ」的な番組・記事が多くなっている。BuzzFeed Japanはその手の記事の1つ「12枚の写真でたどる平成の災害 本当に崩れたものは何か」を掲載した。1991年(平成3年)の雲仙普賢岳の火砕流発生から、今年・2018年(平成30年)の北海道胆振東部地震まで、平成の間に起きた12件の大きな災害を紹介している。


 記事は「平成で崩壊したのは、日本の「安全神話」そのものだった」という結論でまとめられている。阪神淡路大震災・東日本大震災・平成30年西日本豪雨など地震・津波・自然災害による壊滅的な被害、中越沖地震の影響で問題視された柏崎刈羽原発の耐震性、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故、そして記事では触れられていないが、しばしば露呈する災害と直接関係のない原子力関連の杜撰な管理運営なども勘案しているのだろう。この記事では、何かが起る度に「想定外」という言葉が用いられ、平成は様々な安全神話が崩壊を続けた時代だった、と結論付けている。
 災害の直接的な被害だけでなく災害対策に関しても、阪神淡路大震災があったにも関わらず、2005年(平成17年)には所謂耐震強度偽装問題が発覚したし、東日本大震災後も、東洋ゴム・KYBなどが耐震設備のデータを改ざんするという事案が発生している。また災害関連事案ではないが、2005年(平成17年)に三菱自動車のリーコル隠しが発覚して大問題になったのに、自動車業界では不正な検査やデータ改ざんが相変わらず続いているし、自動車以外の業界でも、性能をよく見せかける為のデータ改ざんがあちらこちらで発覚している。
 そんなことを勘案すれば尚更、まさに「平成は様々な安全神話が崩壊を続けた時代だった」と言えそうだ。日本も60年代初頭までは「安かろう悪かろうの国」という評価だった。しかしそれを払拭する為に努力を続けた結果「技術力の高い誠実な製品を作る国」という評価を得たのだろうが、日本の製造業が停滞している影響もあり、そんな話は過去の話になりつつあるのかもしれない。中国や韓国の事を不誠実だと揶揄したり冷ややかに笑ったりする人が一部にいるが、このような事案を見ても「日本は中国や韓国より誠実だ」と胸を張れるだろうか。自分はとてもそんな気にはなれない。


 BuzzFeed Japanの記事では、平成に起きた災害から見えてきたのは「日本の安全神話の崩壊」としているが、自分が平成の災害から感じたのは「政府の信頼性の崩壊」だ。 何よりもそれを痛感したのは、福島第一原発事故に関する、当時の民主党・菅政権のあまりにも不誠実な発表・対応だった。その後の野田政権もそんな傾向は殆ど変化はなかったし、その後の自民・安倍政権は更に不信感が募るような態度・対応しかしていない。
 また今年・2018年7月に発生した西日本豪雨では、事前に被害が予測されていたにも関わらず、首相や関係する機関の担当大臣ら政権関係者を含む自民党議員らが、能天気に衆院赤坂議員宿舎で「赤坂自民亭」と称する酒盛りを行い、尚且つその様子を嬉々としてSNSに投稿していたのも、政府への信頼感を大きく低下させる事案だった。
 勿論政府への信頼感が「崩壊した」とまで感じられる理由は災害対応に関してだけではなく、
この足掛け3年間で隠蔽・捏造・改ざんや、政府関係者の暴言(主に現副首相)、口先だけで発言内容にそぐわない不誠実な姿勢・対応が相次いでいるからでもある。 

 昨日一昨日の投稿でも書いたが、政府への信頼感が平成の最後に失われていくことの背景には、12/21の投稿でも触れたように、そんな政府・与党が選挙の度に国民によって信任されてしまうという、ある種の民主主義の崩壊、崩壊は言い過ぎだとしても民主主義の形骸化があると思っている。なぜ一般的に先進国と言われる日本で、こういう事態が起こるのかと言えば、日本国民の中に「お上は絶対」という封建的な気質がまだまだ根強いからなのかもしれない。このブログでも民主主義の対義語としてしばしば「独裁」を提示してきたが、現在の日本の実状を表現するのに、民主主義の対義語として用いるべきは「独裁」ではなく、絶対的な主従関係を重んじるという意味での「封建主義」かもしれない

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