文科省の科学技術・学術政策局長が東京医科大から便宜を図るよう依頼され、その見返りに入試で息子を不正合格させて貰ったという事件の調査の過程で、東京医科大が入試の成績について、女性や浪人生に対して不平等な得点の操作をしていたことが今年・2018年8月に発覚した(8/5の投稿)。朝日新聞の記事「不正不合格の一部、追加合格を認めず 東京医大」によると、東京医科大は、この不適切な措置で不利益を受けた受験生らに対する対処として、2017-18年の過去2年間に不正に不合格とされた者を調査の結果101人と公表し、彼らに対しては11月末を期限に入学する意思を確認していたそうだ。
この101人のうち49人が入学を希望したそうだが、49人のうち5人に関して、東京医科大は定員を理由に再び不合格としたそうだ。
10/28の投稿「医学部入試不正・文科省の責任逃れ」でも書いたが、日本の大学受験シーズンのピークは年明けの1-3月頃だが、10月前後から推薦入試は既にシーズンに入っているし、出願受付を始めている学校もある。8月に事態が発覚したにも関わらず、東京医科大の対応はすこぶる遅い。その時点で東京医科大が精一杯の誠意をもって対応に当たっているとは言い難い。
更に不可解なのは、入学を希望した49人の内5人を再び不合格とした点だ。東京医科大は、身勝手な自分たちの都合で一部の受験生らに不適切な合否判断を下すという不利益を押し付けたのに、自分たちは学校の定員を理由に不都合・不利益を引き受けないという事の様で、つまり、東京医科大は不利益を与えた受験生の都合よりも、結局は自分たちの都合を優先するという事だろうから、その程度の対応・認識なんだなとしか感じられなかった。言い換えれば、不利益を与えた側にあるまじき全く誠実性のない対応としか思えなかった。
朝日新聞の記事にはこんな表現がある。
朝日新聞の記事にはこんな表現がある。
同大は追加合格の人数分を反映し、90人を予定していたセンター試験利用を含めた19年度の一般入試の募集人員を減らす方針だ。この表現が実態に即しているなら、 5人にも柔軟な対応が出来たのではないだろうか。もしかしたら学校の判断だけでは勝手に定員数を増やせないという制度上の壁があるのかもしれないが、もしそうだとしても、不正な扱いをされた受験生の利益を考えれば、文科省に特例を認めてもらうなどの方策をとれたのではないか。
時事通信の記事「「不合格は大変残念」=東京医大問題で柴山文科相」によると、就任直後の教育勅語肯定発言(10/6の投稿)で、悪い意味での注目を浴びた柴山文科大臣はこの件に関して次のように述べている。
受験生に落ち度がないにもかかわらず、不安定な状況に置かれた上、不合格となったのは大変残念だしかし、その一方で同大の判断を尊重するともしているようで、何とも歯切れが悪く、10/28の投稿でも示したように、彼も不利益を受けた受験生の側ではなく、大学側の立場に寄り添っているようにも思える。ただ時事通信の記事は、柴山文科大臣は、
(不合格者に)追加の救済策を講じると考えており、しっかりと見極めたいと述べた、と締め括っており、彼にもまともな一面がある事を感じさせる。
しかしここから判断できるのは、やはり東京医科大の誠意のなさだ。文科大臣が追加の救済策を望むという意思表示をしたということは、定員を理由にした不合格の合理性の低さを指摘しているということだろうし、定員を大学側の判断だけで変更出来ないのだとしても、文科省に対して変更に関する、例えば特例を認めて欲しい等の相談がなかったという事でもあると推測できる。
このような事から考えると、東京医科大は一連の不祥事を受けて10/1に林 由起子さんを新学長に就任させたが(東京医科大の発表)、これは主に女性受験者への差別的な行為に対する批判を交わす事を念頭に置いて女性学長を据えただけで、その内実には大きな変化がないということなのでは?と邪推してしまう。
このような状況を見ていると、結局「正直者が馬鹿を見る」のがこの世の常なんだろうなと、至極残念な気分になる。