昨日・2018年大晦日の投稿の冒頭でも、年末という事も相まって「平成最後の」という枕詞が便利に使われている、ということを書いたが、今年・2019年のお正月も平成最後のお正月だし、元号が変わるまでこの「平成最後の」は使われ続けるだろう。というか寧ろこれからの方が「平成最後の」の本番だ。
そんな平成最後の年末から平成最後のお正月(年明け)にかけても、NHKは例年のようにゆく年くる年を放送していた。12/1の投稿「NHKの光と闇、NHK報道に感じる不信」や、10/1の投稿「NHKへの不信感」でも書いたように自分は、NHKの、特に報道に結構な不信感を持っているが、今年のゆく年くる年ではそれを再確認させられるようなことがあった。番組中に
皇位継承に伴う新元号 4月1日公表へ 安倍首相方針固めるというニュース速報が表示されたのがその原因だ。
テレビ番組のニュース速報とは、緊急性の高い事象・事案を即座に広く伝える為に画面に表示されるものだ。逆に言えば、緊急性のない事象・事案はニュース速報で伝える必要はない。定時のニュース番組で伝えれば充分のはずだ。つまり、NHKが「皇位継承に伴う新元号 4月1日公表へ 安倍首相方針固める」をニュース速報で伝えたという事は、NHK報道はこれを緊急性の高いニュースと認識している、ということになる。
果たして「皇位継承に伴う新元号 4月1日公表へ 安倍首相方針固める」は、ニュース速報を出して即座に広く周知しなければならない事案と言えるだろうか。新元号に関しては、カレンダーや手帳などの印刷・各種システムの新元号への移行等の都合を勘案すれば、できるだけ早く公表するべきだという指摘があったし、真相は定かでないが、天皇陛下はそのようなことも勘案した上で生前退位の意向を示したのではないか?という見解も示されていた。しかし一部の保守派が「退位と新元号の発表はこれまで通り同じタイミングでなければならない」という旨の主張をした結果、移行に必要な充分な時間的余裕を持って新元号を公表することが見送られた為、このタイミングでは新元号がいつ公表されるかという事への注目度は確実に下がっている。つまり新元号の公表時期がいつかという話に緊急性があるとは言えないだろう。
西暦表記に比べて時系列を把握し難い元号で年を表記するのは、昨今概ね役所くらいだ。自分も含めて多くの人は西暦で年を表記し、または把握しているし、個人的には現在が平成何年かを即座に言えないレベルだ。今回の改元によって、近代以降の時系列を把握するのに4つの元号をまたぐ必要性が出てくること、政府が一部の保守層に忖度してシステム移行等に配慮しなかったことなどを理由に、これまで元号表記を使用してきた、今となっては少数派の民間や、地方等の一部の方行政機関でも、西暦併記、というか元号表記を西暦に併記するという動きまで起きている。
また、なぜゆく年くる年という番組の中で速報が流されたのかも不可解だ。NHKが速報を流したのと同じタイミングでニュースWEBに掲載した記事「新元号 4月1日閣議決定 公表へ」の中では、
皇位継承に伴う新たな元号について、安倍総理大臣はことし4月1日に閣議決定し直ちに公表する方針を固めました。という表現がある。
速報ということは、このタイミングで分かった新事実を報じたという体裁なのだが、12/31の23:00過ぎから1/1の0:00過ぎにかけての年越しのタイミングで、それが議論され、まさにその瞬間に方針が固まったなんて到底考え難い。勿論方針自体は日中、もしくは数日前までに既に決まっており、取材をしていた担当記者がその事実をそのタイミングで知った、裏が取れたのがそのタイミングだったという可能性や、政府関係者が意図してそのタイミングで情報を流したという可能性もなくはないが、前述のように緊急性が決して高いとは言えない「新元号の公表時期」に関する取材を、わざわざ年越しのタイミングでするか?という疑問を感じてしまうし、緊急性の決して高いと言えない事案を、政府関係者の意向・思惑の通りに速報として流したのだとしても、違和感の強さは変わらない。
首相官邸は、2019年の年明けすぐに「安倍内閣総理大臣 平成31年 年頭所感」をWebサイトで公開しているが、その中にも新元号の公表時期に関する話題は一切ない。そんなことから、
新元号の公表時期に関する議論が年越しのタイミングでされていたわけでもないし、このタイミングでその情報を記者が掴んだわけでもないことが強く推測される。
つまりNHK報道は、
ゆく年くる年という番組、平成最後の年越しというタイミングをわざわざ選んで緊急性のない事案を速報として流したと言えそうだ。NHKの報道がなぜそんな不可解なことをしたのか、その理由は定かでないが、誰に向けて、というかどういった層に向けた、アピールしたかった速報なのかを考えると、そして「新元号の公表時期」に緊急性があると考え、速報として流す人がどのような人なのかを想像すると、それは前述の一部の保守層、若しくはそれに準ずるような考えを持っている人なのだろうと自分には思える。勿論報道機関の人間だろうが、基本的には個人がどのような考えを持っても問題はない。しかし、緊急性が決して高いとは言えない、しかもなぜそのタイミングで速報が流されたのか、という疑問を感じるような報道を、視聴料という実質的な税金で運営されている公共放送が行うのは、決して妥当とは思えない。
NHKは現政権に過剰に忖度している、NHKは報道機関でなく政府の広報機関という懸念を、年明け早々再確認するようなことがあったのはとても残念だ。