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嘘を重ねれば重ねる程、信用されなくなるのは当然


 韓国による福島などの水産物輸入禁止措置に関する、WTO:世界貿易機関での紛争処理の最終審で、韓国の措置を妥当とする判決が下された。これを受けて菅官房長官が会見し、彼が「(日本の)敗訴との指摘は当たらない」という見解を示したことが話題になった(ロイターの記事)。この見解が妥当なのであれば、最高裁の判決に関して、「○○勝訴」とか、「○○逆転敗訴」なんて見出しを掲げると主張を認められなかった側から、「今後も示談交渉を求めていくつもりなので事実と乖離している、中傷に当たる恐れもある」なんて言われかねないと感じる。つまり荒唐無稽な話と言わざるを得ない。別の視点で考えれば、こんなバカげた見解を示す事も、日本側が「日本産品は安全」と言っても信用して貰えず、未だに複数の国や地域で原発事故に起因する輸入制限措置が続けられている理由の1つのように感じられる。
  「認めなければ負けじゃない!」と言い張るのは、単なる国民、というか積極支持者へ向けた支持率維持を目論んだアピールでしかなく、その副作用をよく考えて欲しい。


 そもそも、3/17の投稿「日本が他国から失笑されてしまうような事を言う首相を選んでいるのは、紛れもなく日本の国民」でも書いたように、未だに汚染水が増え続けているという状況、汚染土の最終処分方法も未だに決まっていない状況、そして事故原発の処理についてもまだまだ見通しが立ったとは言い難い状況なのにも関わらず、2013年の東京オリンピック誘致に関する演説の中で「Fukushima was “under control”」などと首相が言ってしまったのだから諸外国に日本政府の発表が信用して貰えないのも無理はない。Under controlとは、何の問題もない・制御下にある・万事上手くいっている、などのニュアンスを示す表現だ。処理方法の見通しも立たないトリチウム水が増え続けている時点で何の問題もない・万事上手くいっているとは到底言えない状況だ。つまり今もまだUnder controlなんて言えない状況にある。
 首相がそんな現実と乖離したことを言えば、日本政府の発表が信用して貰えず、他地域に輸入制限措置を解除して貰えなくても無理はない。更に言えば、彼はその後再び2016年の伊勢志摩サミットで、消費増税延期の大義名分を得ようとして「リーマンショック前の状況に似ている」という素っ頓狂なことを言ってしまっている。日本に限らず政治家がある程度自分に都合のよいことを言うのは世の常なのだが、彼やトランプ氏のようにその度が過ぎれば他国・他地域からの信用を失いかねない。それではまともな外交など期待できる筈はない。
 外交のアベなど聞いて呆れる。ロシアとの間では20回以上首脳会談を重ねても北方領土問題に進展はなく、というか北方領土という表現にすらケチをつけられ始めている。韓国側の態度にも問題はあるだろうから、安倍氏だけの責任ではないにせよ、韓国とは険悪なムードになるだけで竹島問題にも進展はなし。北朝鮮・拉致問題に関しては「次は私の番」と決意するだけで実際には何もしない。アメリカの言いなりになってかなりの額の武器を言い値で買わされる。勿論彼に外交の成果が全くないとは言わないが、彼が首相の座に返り咲く以前からの懸案がどれも進展していないのも事実だ。しばしば「長期政権で安定した交渉が出来ているのが強み」のような見解を目にするが、交渉をするのは目的ではなく手段であって、約6年もの期間交渉を続けて成果に乏しいようでは強みでも何でもない。寧ろ長く続けているのに、それ以前の政権と変わらない外交成果しか得られないのなら、それは弱みである。

  冒頭で紹介したWTOでの敗訴と菅氏の負け惜しみを勘案して、前段で示したのと同じような内容の、
というツイートをしたところ、
という引用リプライがあった。このツイートの主が、「福島の人は率先して被災地へ戻り安全だと証明して見せるべきだ」と考えているのか、それとも「福島の人でさえ、そして日本国民でさえ安全だと信用していないのだから、他地域の人が政府の安全だという主張を信用しないのは当然」と考えているのか定かでなく、どのような思いでそのようなツイートをしたのかは分からない。
 3/21の投稿「復興五輪という、美辞麗句・羊頭狗肉の看板」にも書いたように、県外で最終処分という方針だったはずなのに、 再利用可能だと言い出して福島県内での処理を検討し始めたり、安全性が定かでないにも関わらず、トリチウム水の海洋放出を検討し始めるような状況で、避難している被災者らは政府の安全宣言を信用するだろうか。自分は福島県民ですらないが、信用に足るとは思えない。しかも被災地関連・原発事故関連以外でも多数の嘘(4/2の投稿)をつくような首相・政府なので尚更だ。汚染土にしてもトリチウム水にしても「処分方法の検討だけで文句をつけるのは妥当ではない」と言う者もいるだろうが、沖縄県民が県知事選と県民投票で辺野古移設工事反対の圧倒的な民意を示しても無視するような政府や首相の姿勢を見れば、検討開始=ごり押し開始・被災者・福島県民の民意は無視するという風に推察しても決して不自然・合理性に欠けるとは言えないだろう。
 つまり、「沖縄県民に寄り添う」と言いながら移設工事を強行するのだから、福島県に対しても同じ仕打ちをするのだろう、そしてそれは他県でも同様であるという事を、そしてそれは何県民・何市民という括りに限らず、例えば若年層、貧困層などのような括りで同じ仕打ちに合う恐れがあるとも言えるだろう。「全て女性が輝く社会の実現」というスローガンを掲げているのに、実効性のある施策を講じず、5年以上経ても尚日本の男女格差に改善の兆しがないどころか、他国・他地域よりも改善のスピードが遅く、ジェンダーギャップの調査で過去最低の順位を記録していること(3.26の投稿3.24の投稿)からもあり得ない話とは言えない。先週政府は「就職氷河期世代の支援」と言い出したが、女性活躍同様に単なる美辞麗句になる恐れもある。現政権のそのような側面を日本国民全てが肝に銘じておくべきだ。自分達だけは特別だと思っていたら足元をすくわれかねない。

 汚染土が再利用可能ならば、まず政府があり日本の首都で、「復興五輪」を行う東京で率先して引き受けるべきだし、トリチウム水にしたって同様で、福島ではなく東京湾への放出を検討するべきなのではないか。トリチウム水が安全だと言うのなら、極端に言えば政府のある千代田区の水源である利根川上流の湖への放出を検討してみればよいのではないか。
 また「被災者は我儘で政府が安全宣言しても元の居住地に戻らない」という旨の揶揄をする者をしばしば見かけるが、ならば政府の安全宣言を信用出来る者が率先して被災地域に移住して復興の礎を築くべきでないのか。帰還事業というのも変で、そもそも東京のように人口密度の高い地域ではなかったのだから移住でだって復興を後押しできる筈だ。そのような指摘をすれば「現地には仕事がない」などと言い出すのだろうが、それは元の住民・つまり被災者にとっても同じことだ。要するにそのような揶揄をする者は、自分の負えないリスクを他人にだけ押し付けているようなものだ。

 沖縄の基地問題にしろ、福島やそれ以外の被災地の問題にしろ、他人事でしかない者が決して少なくない。安倍首相が何よりもそれを体現しているし、桜田大臣を始めとして彼と似たような事を言う政治家が与党や政府内に相応にいることが明らかなこともその証拠だろう。与党の積極支持者らの中には「被災地にしろ沖縄の問題にしろ、前民主政権だって同じような態度だった。現政府はそれを踏襲しているだけ」のような事を言いだす者がいる。その主張は「問題のある旧民主政権の負の側面を、現政権は改めもせずに続けている」と言っていることにもなる。自民か非自民かで物事の良し悪しが決まる訳ではない、という事をよく考えてから主張した方がよい。


 この投稿で指摘したいくつかの政府・与党・積極支持者らの短絡的な主張によって、現政権へ懐疑的な者が増えそうなものなのだが、今の日本人の多くは、自分達だけは特別だと思っているのか、自分はそのような短絡的な主張の標的にはならないと思っているのか、単に無頓着なだけなのか、選挙の度に与党に票が集まり、現政権を信任している。そして政府に懐疑的な者の中にも、投票すらせずに「何も変わらない」と言う者がいる。投票しなければ何も変わらなくて当然だろう。再度同じことを書くが、自分達だけは特別だと思っていたら、その内足元をすくわれることになるかもしれない。
 賢い者は足元をすくわれる前に予防策を講じる。つまり関心を持たず予防策を講じず、足元をすくわれてから「こんなはずじゃなかった」と言い始めるのは賢くない者のすることだ。

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