「頭隠して尻隠さず」という慣用表現がある。一部を隠して全部を隠したつもりでいることや、その状態の滑稽さを表現する場合に用いる表現だ。頭隠して尻隠さず - 故事ことわざ辞典 では、「雉(きじ)は、追われると草むらの中に頭を突っ込んで隠れたつもりでいるが、尾は丸見えになっていることから」「江戸いろはかるたの一つ」とその由来を解説している。
英語にも同じニュアンスの慣用表現があり、「Ostrich Policy」或いは単に「ostrich」と言ったりするそうだ。オストリッチとはダチョウのことで、「Ostrich Policy」は直訳するとダチョウの政策だが「ダチョウのやること」ぐらいの意味合いだろう。日本のキジの話同様に「ダチョウは砂に頭をうずめただけで、体丸出しなのに見つからないと思っている」というのがその由来だそうだ。キジとダチョウは違えど同じく鳥に由来しているのが面白い。これ以外でも鳥は、「3歩いたら忘れる」など考え足らずの象徴として用いられる。カラスのようにとても賢い鳥もいるのに。
以下の画像は Ostrich Policy でgoogle画像検索した結果だ。
この中で興味深いのは、二段目にある「Ostrich politics」という風刺画だ。
この画像は、EUの移民政策を風刺する目的で2013年に描かれた。加盟国やEUが移民問題から目を背けていること・消極的なことを風刺しているようだが、この風刺画のタイトル、Ostrich Policy ならぬ Ostrich Politics=ダチョウの政治、つまり
頭隠して尻隠さずの政治
というニュアンスに、まさに今の日本の政権がこれだ!と強く感じた。11/12の投稿でも書いた「首相主催の「桜を見る会」に地元の後援会員が多数招かれていた」件に関して、官房長官・内閣府担当者らはこれまで「問題はない」と強調していたが、昨日一転して「来年の桜を見る会を中止する」と言い出した(「桜を見る会」2020年度は中止。菅官房長官が発表「予算や招待人数を含めて全般的な見直し」 | ハフポスト)。官房長官だけでなく安倍首相も記者に対して、
来年の桜を見る会については、すでに菅官房長官が説明したとおり。私の判断で中止をすることになりましたと述べている(「桜を見る会」来年度は中止 TBS NEWS)。
11/8の参院予算委員会で共産党・田村議員がこの件を問いただして以降、与党関係者や今年の桜を見る会への参加者らが、当時のブログやSNSへの投稿を削除している(桜を見る会に参加、ブログ続々削除 首相地元の政治家ら [桜を見る会]:朝日新聞デジタル)。桜を見る会は、各界で功労功績があった者を招き労う、という趣旨で行われているそうだが、功労功績があったとは言えない850人もの後援会関係者・支持者を、首相が接待するのは、しかも公費で行うのは、公職選挙法違反になるのでは?と指摘されており、その指摘の妥当性が証明できなくなるように証拠隠滅を図っているのだろう。そうとしか思えない内容の投稿の削除が行われている。しかし、既に概ね記録は保管されている為、そのような投稿の削除は、寧ろ投稿内容の都合の悪さを認める行為でしかない。
そんな支持者や関係者の長である安倍氏だから、来年の桜を見る会を中止すれば幕引きが図れると安易に考え、来年の桜を見る会を中止すると言い出したのだろう。しかし、官房長官らが「今年までの桜を見る会に問題はなかった」と言っていたのに、一体なぜ問題のない催しを中止する必要があるのかや、官房長官は「参加者名簿は既に廃棄した」と説明していたが、今年までの参加者名簿なしにどうやって適切な見直しを行うつもりなのかなど、中止すると発表したことによって更に矛盾が生じているし、そもそも来年の桜を見る会を中止したとしても、今年までの会に関する検証・説明は不可欠で、中止して「はい終わり」とは絶対にならない。寧ろ中止するのが妥当という判断を示すことは、少なくとも今年の会に何かしら問題があったと認めることになる。
「中止すれば全部チャラにできる」と首相や関係者が考えていそうなところが、まさに頭隠して尻隠さずの政治にしか見えない。
更に、「議事録不記載、中西氏発言認める 政府が説明一転「録音も存在」 | 共同通信」という件も11/12に報じられている。自衛隊の南スーダン日報・イラク日報を廃棄したとして隠蔽したり、森友学園問題に関連して公文書を改ざんして事実を隠蔽しようとしたり、裁量労働制の導入の為にいい加減な統計を作成し、それを指摘されると元データは廃棄したとしていい加減な統計だったことを隠蔽しようとしたり、毎月勤労統計調査で不正を行い事実を隠蔽しようとしたり、現政権の隠蔽・改竄体質を示す例は、これ以外にも枚挙に暇がなく、この件についても「またか」でしかない。
こんなにも隠蔽に失敗しているのに、相変わらずこの政権の隠蔽体質は変わっていない。まさに頭隠して尻隠さずの政治を繰り返している。
昨日は他にも「軽減税率「中小企業の7割が見直し求める」経営者調査 | NHKニュース」という報道もあった。
消費税10%への増税に伴って10月に導入された、酒類と外食を除いた飲食料品の税率を8%に据え置く軽減税率について、税率が複数になり会計が煩雑になったなどの理由による「再検討すべき」という回答が74.3%となり、「現行通りでよい」の14.1%を大きく上回ったという、中小企業家同友会全国協議会が実施した調査結果に関する記事だ。
自分はこの記事を読んでこう思った。
「混乱はない」って言ってたのはどこの政府? それを無批判に広報したのはどこの放送局?これはNHKに限った話ではないが、消費税増税・軽減税率導入直後の10/4に「増税「追加の経済対策必要ない」麻生財務相 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン」こんな記事を掲載している。
消費税率を引き上げたあとの経済状況について、麻生副総理兼財務大臣は、現時点で企業収益などは堅調で、追加の経済対策を今すぐに講じる必要性はない、という考えを示しました。と伝えており批判は一切ない。軽減税率に関しても消費税の10%への増税に関しても、導入以前から懐疑的・批判的な主張は多くあったのに、そんなことに一切触れずに麻生という暴言上等大臣(9/10の投稿)の言葉をそっくりそのまま伝えるだけでは、都合の悪いことから有権者の目を逸らさせようと政府がすることに、つまり頭隠して尻隠さずの政治に、NHKも加担していると言えるのではないか。
麻生副総理兼財務大臣は、閣議のあと、記者団に対し、消費税率を10%に引き上げたことについて、「関係省庁と連携して情報を収集しているところだが、現時点で、大きなトラブルがあったという話はない。軽減税率の適用については、各業界でも、改めて取り扱いの周知がなされていると聞いており、1週間もたてば、そこそこ落ち着いた話になるのかな、と思っている」と述べ、大きな混乱はなかったという認識を示しました。
そのうえで、追加の経済対策の必要性について、麻生副総理は、「企業収益を見ても、個人の収入や貯蓄を見ても、いずれも堅調な数字になっており、今すぐ、何かをしなくてはならないという意識を持っているわけではない。米中貿易摩擦などは注意深く見ておかなければいけないが、今すぐ、対策を講じなければならないという段階にはない、と思っている」と述べました。
消費税増税に関しては、「ポイント還元、1日あたり11億円に 予算不足懸念も - 産経ニュース」なんて話もあるし、NHKに限らず、当時この麻生の恣意的で政権に都合のよい主張を無批判に報じた、と言うより言われるがままに広報した報道機関も、現政権による「頭隠して尻隠さずの政治」の一翼を担う存在になってしまっている。
更に言えば、そんな「頭隠して尻隠さずの政治」に見て見ぬふりをして、7年も安倍氏と彼が総裁を務める与党・自民党を信任し続けているのだから、この国自体が「頭隠して尻隠さずの国」になってしまっている、と言えるのかもしれない。
この「頭隠して尻隠さず」は、11/10の投稿で安倍氏を「裸の王様」に例えたのと同じ様なニュアンスだ。
トップ画像は、Gundula VogelによるPixabayからの画像 を加工して使用した。