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キャリーラムと安倍晋三の類似点


 6月に始まった香港の民主化デモ。日本の一部のメディアは「暴徒化するデモ隊」というニュアンスで報じることがあるが、自分の目には、暴徒化しているのはどう見ても警察にしか見えない。デモ隊だけでなくメディアにも放水・催涙弾・暴力を容赦なく向け、催涙弾の水平射撃を平気で行うようになっただけでなく、既に実弾が何度も市民でもあるデモ隊に向けられ、逮捕された女性からは性暴行を受けたという声も上がっている。デモ隊による暴力や破壊行為だって決して褒められたものではないが、 寧ろ警察による暴力の方が深刻なのではないか。デモ隊の暴力や破壊はそのカウンターなのではないか。
 香港の状況を自国に置き換えて考えてみるといい。「警察が取材するメディアにまで暴力を向け、中には失明した外国記者までいる」なんてことが許容できるだろうか。自分にはそれだけでも到底許容できない。他のことも言わずもがなである。


 先週末(11/24)にその香港で、18ある区の区議会選挙が行われた(2019年香港区議会議員選挙 - Wikipedia)。選挙の結果、投票率は71.2%と至上最高で、改選452議席中、民主派が85%以上の議席を獲得した。
 これに関するハフポストの記事「民主派圧勝の香港区議会選挙、勝者と敗者の声明に明暗くっきり。中国共産党系メディアは「不公平な状況」と牽制」で紹介されている、中国本土メディアの論調が興味深い。
共産党機関紙「人民日報」は選挙が終了したことを伝える記事を掲載。記事では獲得議席数には触れておらず、「選挙当日は香港を乱そうとする人たちが、香港を愛する立候補者(建制派)を妨害した」と建制派と同様の主張を展開し「暴動を止め、秩序を取り戻すのが、香港に差し迫った最大の任務だ」と共産党の公式見解に終始
 国営通信社の新華社は投票日前に論評を掲載。「選挙は公正公平に行われるべきだが、前代未聞の不公平な状況が生まれている」としていて、投票前から親中派の敗戦を予期していたことを窺わせる内容になっている
日本の現政権に生じる種々の疑惑を強引に擁護する傾向の強い、産経新聞のそれととてもよく似ている。場合によっては読売新聞も似たような論調の記事を掲載することがある。


 香港行政長官・キャリー ラム(林鄭 月娥)氏は11/26に、
この選挙の結果を受けて有権者の意見を「謙虚に聞き入れる」と表明した
と、「香港市民の声「聞き入れる」 選挙結果受け長官が表明 写真5枚 国際ニュース:AFPBB News」は伝えている。


 しかし、TBSは「香港 林鄭行政長官、市民要求に応じない姿勢 TBS NEWS」という見出しで報じており、
(逃亡犯条例の)草案は撤回しました。五大要求の第一項目の。それ以外もすでに詳しく説明しています
と述べ、普通選挙の実現などの市民の要求には応じない姿勢を示したと伝えている。


朝日新聞も「香港長官、続投を示唆 「中央から責任問われていない」」という見出しの記事の中で、
選挙で圧勝した民主派は今後、警察の暴力を検証する独立調査委員会の設置など政府への要求を強める構えだが、林鄭氏は改めて応じない姿勢を示した
と報じている。


 この姿勢の一体どこが「有権者の意見を謙虚に聞き入れる」なのだろうか。矛盾を感じないのだろうか。恥ずかしいという感情は湧かないのだろうか。因みに朝日新聞の記事の最後にも
林鄭氏は25日、声明で「政府は虚心に市民の意見に耳を傾ける」と表明していた
という記述があり、AFPの記事が誤報ということはなさそうだ。


 このキャリー ラム氏の示した姿勢には既視感があった。2018年の沖縄県知事選によって、普天間基地の辺野古移設反対という沖縄県の民意が確実に示され、玉城知事との初の会談の中で
県民の気持ちに寄り添いながら、基地負担軽減に向け一つ一つ着実に結果を出す
と述べ(2/20の投稿)、2月の沖縄県民投票によって再び同じ民意が示されたことを受け、
結果を真摯に受け止め、これからも基地負担軽減に全力で取り組む
と述べたにも関わらず、今日に至るまで辺野古の工事を中止どころか一時中断すらしようとしない安倍氏だ。

 安倍氏のこのような支離滅裂な姿勢は、2018年11/3の投稿でも書いたように、
  • 「消費増税の再延期はない」と言っていたのに「新しい判断」とあっさり覆す
  • 日報隠蔽を防げなかった(意図的に隠した)防衛大臣や、公文書改ざんの主犯とした官僚の任命を「適材適所だった」と言い張る
  • 「全ての子供を対象に無償化を実現する」と公約を掲げて選挙戦を行ったにもかかわらず、選挙が終わった途端に「全ての子どもが対象」ではない政策の検討をしていると指摘され方針転換を余儀なくされるも、結局「全ての子どもが対象」の案を検討していない
  • FTAをTAGと言い換える
など、それこそまさに「枚挙に暇がない」だ。現在懸案の「桜を見る会」に関しても、当初「問題はなかった」「自分は招待者の選定に関与していない」と言っていたのに、既にそれらの見解が妥当ではなかったことを本人も認めている。


 中国本土当局の傀儡である香港行政長官と、日本の首相が似たような支離滅裂な見解を示しており、どちらも親政権メディアが所謂エクストリーム擁護(11/16の投稿)を展開する。自分には、この状況が安倍自民党政権の中国共産党化に思えて仕方がない。それは言い過ぎだったとしても、首相が支離滅裂な見解を示すような国で、果たして日本の有権者はよいのだろうか。しかも、日本の首相が示す見解の支離滅裂さ加減は、香港行政長官以上にも感じられる。
 日本には「他人のふり見て我がふり直せ」ということわざがある。香港のデモや行政長官の姿勢を対岸の火事と認識するのではなく、反面教師として認識した方が日本の将来、つまり自分たちの子や孫の世代の為になるのではないだろうか。

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