スキップしてメイン コンテンツに移動
 

GSOMIA失効回避につけ上がる一部の日本人の大人げのなさ


 日本が韓国に対して、安全保障上の懸念を理由に輸出優遇措置の撤回を行った影響で、韓国側が日本との間に結んでいるGSOMIA・軍事情報包括保護協定(Wikipedia)の破棄を示唆したのは8月のことだった(8/2の投稿)。その後韓国は破棄を正式に決定した(8/23の投稿)。
 協定の破棄、というか失効が成立する11/23を目前に、ハフポストは「GSOMIAどうなる? 23日午前0時に失効。日米韓は駆け引きも、世論は「破棄やむなし」」という記事を掲載していた。この記事を読んでいてふと頭に浮かんできたのは、以前から関係はあまりよくはなかったが、日本の現政権が韓国に対して強硬な姿勢を示し始めたのは、 安倍氏が北朝鮮への圧力一辺倒の姿勢を米大統領に合わせて変えてからで、中国朝鮮を蔑む傾向のある彼らの積極支持者を鑑みて、北朝鮮への強硬姿勢を緩めた代わりに韓国へ強硬な態度を取り始めたのではないか? という推測だ。
 因みに安倍氏の北朝鮮に対する態度が変わったきっかけは、間違いなく2018年6月の米朝首脳会談だが、よりそれが鮮明になったのは、2018年まで毎年国連人権委員会へ提出してきた対北朝鮮非難決議案を、2019年は取り止めると発表した3月頃のように感じる(北朝鮮非難決議案の提出をとりやめ決定=菅官房長官 - ロイター)。


 日韓のGSOMIAが失効する11/23午前0時まで数時間というタイミングで、「「GSOMIA破棄せず」韓国側が条件つきで延長の見通し。NHKなどが速報 | ハフポスト」という報道があり、土壇場でひとまず破棄・失効は回避された。水面下で日韓の交渉があったのかもしれないが、ひとまず韓国側が折れたという格好だ。 この記事を読んだ時点で自分は、GSOMIA破棄が回避されたことは望ましいが、日本政府やその立場に近い者が、日本側が正しかったという認識を示したり、自分達の手柄かのような見解を示し始めるのではないか?と危惧していた。
 翌日BuzzFeed Japanは「日韓で北のミサイル発射情報やりとりした「GSOMIA」失効回避 両国の報道はどう見たか」という、両国の主要メディアがこの件をどう報じたかをまとめた記事を掲載し、日本の新聞として読売・産経・朝日・毎日の論調を紹介している。政府に近い立場を示す事の多い読売と産経の論調はこうだ。

読売「韓国の破棄見直しは当然」「米国の韓国への圧力が奏功」

産経「日本のパーフェクトゲーム」


 前日に自分が危惧した通りの論調の記事を、両紙が掲載したようだ。形式的にではあるが、一応韓国側が折れたという格好なのに、このような見解を日本の主要メディアが示すという事態は、日本の大人げのなさの象徴に見えてしまいかねず、とても恥ずかしい。
 両紙とも、日本が先に安全保障上の懸念を理由に輸出優遇措置の撤回を行ったことを忘れているのだろうか。なぜ日本政府は安全保障上の懸念がある国と軍事情報を共有する協定が更新されないことを遺憾に思うのか、そんな筋の通らない主張を日本側がしていることをよく考えるべきだ。両紙がやっているのは「自分のことを棚に上げる」以外の何ものでもない。


  昨日の投稿でも政治家としての資質に疑いがあると指摘した、自民党の三原 じゅん子議員は、このGSOMIAの件についてもこんなツイートをしている。


韓国側が折れたという状況に対して好意的な受け止めを示すのではなく、「出来ないことを言うんじゃない」というニュアンスを込めた皮肉をSNSへ投稿している。読売や産経にも劣らない大人げのなさだ。
 昨日の投稿でも触れたように、現在懸案となっている「桜を見る会」の問題について、彼女が属する党の総裁でもある首相と、その党によって構成されている内閣の官房長官は、当初「政治家は招待者選定に関与していない」「問題はない」という強気の見解を示していたのに、今は自分達を含めた政治家の関与も認め、「反省するべき点がある」と、「問題はない」という当初の見解とは明らかに異なる見解を示している。「あらあら…
随分強気だったのにね」という嫌味を韓国大統領に言う前に、自分の親分連中にも言ったらどうだろうか。

 彼女の母親らも「桜を見る会」に参加していたそうで、それについてテレビ番組で「三原氏の母親らはどんな功績で呼ばれたんだろうか」という見解が示されたことに対して、「私の母親にはこんな功績があって、だから桜を見る会に呼ばれた」と反論するのではなく、「そのような発言は許し難い侮辱である」という素っ頓狂な主張をするくらいだから、


彼女が自分の皮肉がどんなに大人げないか、矛盾に満ちているかを理解できないのも仕方がないのかもしれない。寧ろそんな人を議員に選出している自分の出身・神奈川県の有権者が情けないと思った方がいいかもしれない。


 三原氏のやる事・言う事全てが頓珍漢というわけでもなく、厚労省がHPVワクチンの積極的勧奨を止めていることについては、まともな見解を示しており(「覚悟を持って積極的勧奨再開を目指す」 自民党がHPVワクチンの議員連盟発足へ BuzzFeed Japan)、それについて否定する気はない。
 しかし、昨日の投稿でも触れたように、「三原じゅん子氏「政権握るの総理だけ」発言に批判 「議院内閣制を分かっていない」 - 毎日新聞」などと、議院内閣制の基本のキすら理解していないような者に、政治家としての資質があるとは全く思えない。もし彼女が、国会議員ではなく1人のタレントとして、昨日の投稿やこの投稿で触れた主張をしているのなら、「彼女は変なことも言うけど、HPVワクチンについては正しいことを言う」と肯定的に受け止めることが出来るかもしれない。しかし、彼女は国会議員であり、HPVワクチンに関する法案以外の国会での採決についても1票を有している。つまり、いくらHPVワクチンの件では正しいことを言っていたとしても、それではカバーしきれないリスクがある。


 昼のニュースを見ていると、GSOMIAの件に関して、週が明けた途端に日韓両政府は泥仕合を再開させているようだ。そんな状況に対して油を注ぐようなメディア・議員は不適切であると、強く指摘する必要がある。日韓政府が対立して得をするのは一体誰なのか。少なくとも両国民にメリットは殆どない。メリットがないどころか、北朝鮮のミサイルに対する防衛力の低下は確実にデメリットだし、日本に関して言えば、対韓輸出・訪日韓国人客もは大幅に減少しており、経済的にもデメリットの方が大きい。
 感情的な政治家やメディアに煽られて冷静さを見失わないようにしなければ、馬鹿を見るのは自分たちである。


トップ画像は、File:Flickr - The U.S. Army - NCO Academy Teaches Leadership in Virtual Environment.jpg - Wikimedia Commons を加工して使用した。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。