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何事にも一長一短があり、給食も決して万能ではない


 給食は地域・世代間のギャップが大きい。牛乳だけを見ても、脱脂粉乳、瓶、三角パック、四角パック、小型ゲーブルトップ(日本で主流の市販牛乳の紙パック型)など様々だ。自分が小学生だった頃はパンが殆どで、米は月に数回しか出なかったが、いくつかの自治体の献立表を確認してみたところ、今は米の方がパンより多い。自分より上の世代では給食に米が出ることなどなかった、という話も聞く。
 
 自分にとって所謂”当たり”のメニューといえば、カレー・揚げパン・ソフト麺だった。ソフト麺はご飯が増えた影響で、今では殆ど給食のメニューにはならないらしい。また、ソフトスパゲッティ式めん - Wikipedia によると、全国的にポピュラーなメニューだったわけではなく、関東・東海地方以外での知名度は自分達の世代でも高くはないようだ。


 給食と言えば少し前に、名古屋市の小学校給食が質素すぎるのではないか、という話が話題になった。自分は「「名古屋市の学校給食が質素すぎる」とネットで話題に。その背景は? | ハフポスト」などでそれを知ったが、この話が話題になったのは、東海テレビが取り上げたことがその発端らしい(特集 | “切干大根”など急増…児童「肉食べたい」食材高騰で質素に 小学校の給食費を名古屋市が値上げへ)。


 ハフポストの記事では、東海テレビの記事・映像では使用されていない画像を使用している。印象的なのはこの画像だ。


小学校低学年ではそれぞれの児童の体格の差はそれ程大きくないが、高学年ではかなり差が出てくる。当然食べる量・食べたい量にも差が出てくるだろう。自分は成長が早く、身長は小学校6年生で160cmを超えていた。当時の自分がこのメニューで満足できるかを考えると、到底満足できたとは思えない。しかも、両記事とも見出しは「小学校の給食」となっているが、東海テレビの番組では中学校のスクールランチ(弁当と選択制になっている給食 / スクールランチ - Wikipedia) も同傾向と伝えており、食べる量・食べたい量の個人差は中学生なら尚更開くので、自分にとっては「これはない」としか思えなかった。

 数年前に給食の優位性が叫ばれたが、給食が小学校までしかなかった横浜市で育った自分は、給食が弁当よりも概ね優位であるという話には賛同することが出来なかった(2017年8/19の投稿)。勿論、親からの食事を充分に与えられない子どもにとって、給食がセーフティーネットになる、という話は理解できるものの、全員が一斉に同じメニュー/同じ量を食べることになる給食だと、個人によって異なる食のニーズに対応する、という面では明らかに弁当持参に劣る
 2017年9月には、前年から神奈川県大磯町で提供が始まった中学校給食の評判が悪く、食べ残しが多発しているということも話題になった(2017年9/15の投稿 / 2017年10/4の投稿)。自分の出身地・横浜でも、ハマ弁という名称で中学校にてスクールランチの提供が2016年から始まったそうだが、良い評判を全く聞かない(ハマ弁?給食? 中学校昼食で横浜市長「年度内に方向性」 | 政治行政 | カナロコ by 神奈川新聞)。


 給食に関しては、堺市の定時制高校で余った学校給食を持ち帰っていた教員が懲戒処分を受け、依願退職した、という件も、昨日から話題になっている。「給食持ち帰った教員が懲戒処分 衛生基準違反に基づくも「食品ロスはどうする?」と批判の声も BuzzFeed Japan」によると、
日によっては30食ほど余ることがあった
そうで、当該教員は、
給食指導担当となった2015年から、廃棄処分を担当する用務職員に余ったパンや牛乳を保管しておいてもらい、持ち帰っていた
らしい。この定時制高校の給食は、法律に基づいて、生徒らの実費負担ではなく市が公費で支給しており、衛生管理の観点から生徒に関しても持ち帰ることは禁止されていた、とのことだ。
 「余った給食「もったいない」。持ち帰った教諭が懲戒処分→退職 ネット上では賛否の声 | ハフポスト」 では、
  • 教員が給食を持ち帰る為に、子どもに充分によそわなくなっていった
  • 食中毒が発生した場合、給食を持って帰ると1番最初に給食室の人間達が疑われます
という、この件に関する直接的な話ではないものの、給食にまつわる体験談を紹介している。確かに、生徒に持ち帰りを禁止しているのに教員が甘った給食を持ち帰るのは妥当とは言えない。しかし30食も余れば、それを全て捨てるのは忍びないという感覚が生じることも理解できる。杓子定規に「規則は規則」とすることは、自分の頭で考えずに右へ倣えする者を量産することにもなり得る。
 また、食中毒云々という話も過敏すぎる先回りとしか思えない。スーパーやコンビニで売っている総菜だって、買った後の保存状態が悪ければ食中毒が発生する恐れが確実にある。つまり、食品ロスを減らすという観点に立ち、余った給食の持ち帰りを許可した上で、持ち帰る際に「食中毒になるリスクもあるので、できるだけ早く食べるように」と指導するのが学校の役割だろう。公費で賄われる給食を不適切に過剰に持ち帰る行為の発生を懸念して禁止にしている、という話ならまだ分かるが、食中毒の恐れがあるから持ち帰り禁止というのは、大袈裟に言えば、教育の放棄とすら感じられる。

 BuzzFeed Japanの記事によると、堺市教育委員会は当該教員への懲戒の妥当性を、
衛生上の問題というよりもルール違反であり、周りに示しがつかないので、一罰百戒とした。適切な処分だと考えている
と説明としているそうだが、ならば、何年も前から食品ロスの問題性が指摘され、しかも、毎年、過剰に生産されたクリスマスケーキや恵方巻きなどの廃棄を問題視する報道がされているように、この数年で食品ロスへの問題意識は確実に高まっているのに、かなりのロスが生じる状況を放置してきた市教委にも、なんらかの処分がなければ「周りに示しがつかない」。
 「ルール違反はルール違反」という安直な考え方は、以前にも何度も指摘しているようにブラック校則が蔓延る苗床であるし、
自分に子どもがいたとしたら、「示しがつかない」という感情的な説明しかできないような教育委員会の下にある学校には、絶対に通わせたくない。堺市教育委員会には、カビが生えそうな古臭い体質が蔓延っているんだろうという印象しかない。


 名古屋の給食事情からは、給食は個人のニーズに合わせることが弁当よりも不得意ということが分かるし、堺の件からは、給食よりも弁当の方が食品ロスを解消しやすいということが分かるだろう。勿論給食でも、個人のニーズに合わせることも食品ロスを減らすことも出来なくはないが、何事にも一長一短があり、給食も決して万能ではない、ということは明らかだ。


 トップ画像は、File:給食当番 (3585013233).jpg - Wikimedia Commons を加工して使用した。

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