今日のトップ画像は、日本の主要テレビ局の各方面に対する姿勢を示したものだ。1/15の投稿「国外のデモは報じるのに、国内のデモは報じないメディアは…」でも、イランの反政府デモは全ての在京TV局が記事にしたのに、自国の反政府デモは全ての局が触れないことの異様さについて書き、日本のテレビ局が、中国のCCTVなどのように、御用メディア化している懸念について書いた。その投稿からたった7日間しか経っていないが、この数日の間に再び同じ懸念を感じさせられることがあった。
まずは「中国 武漢の新型ウイルス肺炎でネット上に疑問の声 | NHKニュース / インターネットアーカイブ」について。
現在中国武漢を中心に広がりを見せている新型のコロナウイルスによるとみられる肺炎。既に中国のみならず各国でも感染例が報告され始めている。しかし当初は「人から人への感染は報告されていない」とされていた(中国で発生している原因不明のウイルス性肺炎 冷静に正しい情報を BuzzFeed Japan)。
これを目の当たりにした際に、情報統制を平気で行う中国当局の出す情報を鵜呑みにしてよいものか?と感じていた。確かに「報告されていない」とあるので、その時点では確認できていなかったのかもしれない。しかしそうではないかもしれない。前述のNHKの記事は、中国のWeb上でも
「どうして国内では武漢以外、一例もないのか」とか、「とても奇妙だ。このウイルスは外国だけで広まるのか」など疑問の声があがっているという、中国当局の発表に対して中国国内で懐疑的な反応が起きていることを伝えている。また、
「政府のニュースは信じられない」とか、「データは隠さないほうがいい」など、当局の発表に疑いを投げかける指摘もある
中国版ツイッターのウェイボーでは、武漢の医療機関では発熱の患者が多すぎて、入院を断られた、などと医療機関への不満を訴える書き込みがすぐに削除されるなど、不安が広がらないよう中国当局が情報統制を強化していると、情報統制という表現も使用されている。
日本国内では、桜を見る会の問題やカジノやその他の汚職に対する首相や官房長官、政府の示す見解や態度に対して、Web上には確実にそれに対する懐疑的な主張があるが、NHKがそのようなことを伝えているか?と言われたら、ゼロではないかもしれないが、NHKは日本のWeb上にある政府への疑心を殆ど伝えていないと言って過言ではないだろう。他国のネット上の政府への不満の声は伝えるのに、自国のネット上の政府への不満の声は無視する。これでは、NHKは御用メディアだ、と揶揄されても仕方がないのではないか。
今朝のTBS・あさチャン!では、韓国のVANKなる団体が、防護服を着て聖火リレーする姿に「TOKYO2020」「OLYMPIC GAMES」などの文字をあしらった、福島第一原発事故と東京五輪を結び付けたポスターを、ソウルの日本大使館建設予定地の壁に貼りつけた、という件を伝えていた。
これに関する記事は、何故か1/22の昼過ぎの時点でTBSニュースのサイトには一切掲載されておらず、「韓国」での検索結果は次のスクリーンショットのような状況だった。
この件に関する各局の反応は薄く、在京TV局で記事を掲載していたのはフジテレビだけだった(“放射線防護服の聖火ランナー”…韓国で続出「東京五輪」標的の悪質プロパガンダ - FNN.jpプライムオンライン)。因みにフジテレビと関係性の深い産経新聞も「【外交安保取材】韓国で東京五輪の印象悪化狙ったプロパガンダまたも」という記事を掲載している。フジテレビの記事は1/20、産経の記事は1/14付である。あさチャン!が取り上げているのに局のニュースサイトでは取り上げられていないことを考えると、各局のニュースサイトに記事はなくても、この数日の間に他の局でもこの事案を取り上げていた可能性はある。
前述のムービーの中にある、
明確な根拠を提示せず、一方的な主張を展開する放射能五輪キャンペーンという表現からも明らかなように、あさチャン!の論調は明らかに、韓国の団体が展開する放射能五輪なるキャンペーンは、根拠不明でいい加減な話、だった。風評を招きかねないという話はその通りだと思うし、悪質なプロパガンダだという見解にも共感できる部分はある。しかし、国外のみならず日本国内でも未だに放射能や福島などへの偏見がなくならず、そして日本政府が発表する放射能の数値が妥当かという疑心が生じる理由には、首相がついた「アンダーコントロール」という嘘や、規制委が再稼動を認めた原発や関連施設で杜撰な管理が露呈する事案が今も続発し、新規制基準も充分とは言い難い内容だからではないのか。そのような指摘もなしに「韓国の団体が風評被害を煽っている」とだけ伝えるのはフェアじゃない。個人的には、風評を一掃したいなら「地震頻発国なんだから原発使うのまず止めたら?」とも感じられる。しかし今の政府は原発再稼働を半ば強引に進めている。
そうは言っても、当該団体の主張は「根拠不明でいい加減な話」というのはその通りだとも思うし、日本側としてはそのように主張するべきだとも思う。しかし、ならばTBSは、日本の首相に対しても同様に「明確な根拠を提示せず、一方的な主張を展開している」と指摘をすべきではないのか? とも思う。
安倍氏は1/20に国会で施政方針演説を行い、その中で
来年度予算の税収は過去最高となりました。公債発行は8年連続での減額でありますと述べた。 しかし「安倍首相「税収は過去最高」演説をファクトチェックする:朝日新聞デジタル」は、
政府は過去最高と説明しているが、あくまで現段階での政府による「見通し」に過ぎず、実際にどんな数字になるかは分からない。「過去最高となりました」と過去形で誇るのは言い過ぎとし、更に「新規国債発行額に触れた後段も、不正確だ」と指摘している。
また、安倍氏は地方創生の好事例として、パクチー栽培に取り組む目的である若者が東京から島根県江津市に移住したことを挙げ
地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が移住の決め手となったと述べたが、「「地方創生で島根移住」のはずが 首相演説で紹介の男性、既に転出 | 共同通信」によると、当該男性は昨年末に個人的な理由で既に関東地方に戻っているらしい。たった数年移住しただけで既に関東に戻った男性を、地方創生の成功事例としてあげるのは妥当と言えるだろうか。
首相のこの演説についてTBSはどのように伝えたか。TBSの関連記事は全部で5つある。
安倍首相 施政方針演説【全録】 TBS NEWS
通常国会がスタート、“長期欠席”自民議員も登院 TBS NEWS
首相 施政方針演説「全世代型社会保障制度」に意欲 TBS NEWS
施政方針演説 “成功例”のはずがすでに・・・ TBS NEWS
地方創生の“成功例”の島根の男性 転居していた TBS NEWS
まず、「税収過去最高」に関しては触れてもいない。後者の「地方創生成功例」については2つ記事を掲載しているものの、どこにも「明確な根拠を提示せず、一方的な主張を展開」のような政府への批判はない。また、毎日新聞は「桜を見る会の『さ』の字もカジノ汚職の『か』の字もない」首相演説に沸き立つ疑問」と、安倍氏や官房長官は丁寧に説明するという風なことをしばしば言うのに、演説では都合の悪い話には触れず、都合のよい一方的な主張を展開した、と批判しているが、TBSニュースにはそのような論調の記事はない。
これでは、TBSは御用メディア化していると言われてしまっても仕方ないのではないか。
1/19の投稿や1/18の投稿でも書いたように、個人的には在京TV局の中ではTBSが一番マシだと感じているのだが、そのTBSですらこんな状態だ。首相の施政方針演説に関する他の局の報道の傾向については調べていないが、今月他の事案について調べた結果から考えても、TBSと同等か更に現政権に忖度した内容だろう。
本来なら、メディアは自国の国家権力に対して最も厳しい視線を送るべきだ。しかし、今の日本のメディア、特にテレビは、自国の国家権力に対して最も甘い、としか言えない。