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新型コロナウイルスをめぐる、政府とTV報道への不信感 後編


 タイトル通り、この投稿は昨日の投稿の「後編」ではあるが、同じテーマについて書いているだけなので、前編を読まなくても理解に困るようなことはない。但し、何故自分が政府とTV報道に不信感をもっているのか、については前編を読んでもらうとより分かり易い。


 川崎市ふれあい館に先月、「謹賀新年 在日韓国朝鮮人をこの世から抹殺しよう。生き残りがいたら残酷に殺して行こう」と書かれた年賀状が届いたこと、なぜ日本の首相はそのような行為に対して毅然とした態度を示さないのか、という不満について、1/28の投稿で書いた。
 自分は、安倍氏がなぜそのような行為に毅然とした態度を示さないのか、について、
  • 彼の積極的な支持者には嫌韓/嫌中をあからさまに示す人が多いので、支持者を維持の為
  • 安倍氏自身も、外国人や日本国外になんらかのルーツを持つ者に対する差別や偏見を深刻視していない
などがその理由だと考えている。これはあくまで自分の受け止めであり、そうであると断定することは出来ない。しかし、その受け止めが実状と大きく乖離していないのではないか?と感じさせることがまたあった。


 昨日、日本政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するという理由で、既に入国拒否の対象としている中国・湖北省に滞在歴のある外国人に加え、その対象を、感染が広がっている浙江省に滞在歴のある外国人などにも拡大する方針を示した。
 これについてテレビ各社は

入国拒否 浙江省に滞在歴のある外国人などにも拡大へ | NHKニュース


浙江省滞在者も“入国拒否”対象に、政府対策本部会議 TBS NEWS

水際対策さらに強化 浙江省滞在の外国人も入国拒否 テレ朝news


と報じており、その他のメディアによる報道を見ても、自分が探した限りでは「感染が広がっている地域に滞在歴のある外国人の入国拒否」にしか触れられていない。


 果たして、外国人の入国拒否だけで感染症対策として充分と言えるのか。当該地域に滞在歴のある外国人の入国を拒否する必要があるなら、滞在歴のある日本国籍者に関しても何らかの対処が必要ではないのか。流石に帰国拒否は出来ないだろうが、一定期間隔離した施設で検疫を受けてもらうなどの措置は必要だろう。
 しかし、どのメディアの報道を見ても、そのようなことは一切書かれていない。外国人の入国だけを拒否し、日本人に対しては一切規制を行わない日本政府の対応は、外国人差別にも等しいと自分は考える。感染症対策が理由ならば、当該地域からの渡航を制限することに合理性がないとは言えないが、感染症を広げてしまう恐れがあるのは外国人に限らない。日本人にも何らかの制限を設けて然るべきだ。
 ロイターの記事「外務省、中国からの早期一時帰国や渡航延期を至急検討するよう呼び掛け」によれば、外務省は昨日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、中国に在留する邦人と海外渡航者に対して、日本への早期の一時帰国や中国への渡航延期を至急検討するようにと、Webサイトで呼び掛けたそうだ。感染症対策の為という理由で、当該地域に滞在歴のある外国人は入国拒否するのに、検疫の義務付けもなく「日本人は早く帰ってこい」とするのは明らかに矛盾している。
 現政府の対応は、2/9の投稿で触れた、東京マラソンについて中国人参加自粛を要請するという見解を示した小池氏同様に差別的である、と言わざるを得ない。恐らくこのように書くと、「他国も同じ様なことをしている」という反論が出てくるだろうが、誰かが万引きしていたら自分も万引きしてよい、ということにはならないのと同様に、他国が差別的な対応をしていたら日本もしてよい、ということにはならない。

 政府の対応にも不満だが、それを一切指摘せず、まるで「政府はしっかりと対応しています」と言わんばかりに報じるメディア、特にテレビ報道にもうんざりだ。
 テレビ報道に不信感を抱いている理由は、昨日の投稿・前編 にも書いたように、新型コロナウイルスへの不安を過剰に煽る報道をしているようにしか思えないからだ。例えばテレビ朝日を例にあげると、

厚労省の検疫官も感染 船内で体温測定など行う

「新型コロナの感染力はSARSよりも強い」米CDC

中国で一日の死者100人超える “外出禁止令”も

新型コロナ死者1115人 米CDC「感染力SARS以上」

「エアロゾル」で新型に感染?超特大の宴会で拡大か


など、そして他にも、連日のように何件も新型コロナウイルスの脅威に関する報道を、これでもかという程しているのに、既に今シーズン1万人以上の死者が確認されている、米国での過去10年で最悪規模のインフルエンザ流行についての報道は、

【報ステ】インフル“過去10年で最悪”か アメリカ


僅かにこの1件だけだ。既に2200万人が感染し、1万2000人もの死者を出している米国のインフルエンザと、まだ増える可能性があるとしても、1000人強程度の死者数の新型肺炎の報道を比べれば、明らかにバランスが悪いとしか言えない。
 新型コロナウイルスで1000人以上の死者が出ていたと報じられても、同時に米国ではインフルエンザで1万人以上の死者が出ているということが同じ分量で報じられていたら、インフルエンザよりも被害が少ないことが分かるので、過剰に煽られる新型コロナウイルスへの不安は幾分減るだろう。だから、テレビ報道が新型コロナウイルスへの不安を必要以上に煽っているように感じられるのだ。


 このような事実を踏まえれば、やはり、日本政府の新型肺炎流行地域に滞在歴のある外国人の入国拒否という対応は、特に中国人に対する差別であると受け止めざるを得ない。感染症対策が必要だと言うのなら、既に中国での新型肺炎を上回る感染者と死者を出しているインフルエンザが流行するアメリカに滞在歴のある外国人も入国拒否を検討する必要がある、ということにはなりはしないだろうか。
 しかし政府がそんな検討をしているという話は一切聞こえないし、そう指摘するメディアも見当たらない。指摘しないのはテレビだけではないが、テレビが新型コロナウイルスへの不安を特に煽っているように感じられる為、特にテレビ報道の質が悪いように思えてならない。

 つまり、意識的か否かは定かではないが、政府とテレビ報道が外国人差別を煽っているように感じられてしまう。差別は意識的でなくても差別である。今年は日本でオリンピックが開催される予定だが、果たしてこのような国にオリンピックを開催する資質があると言えるだろうか。全くそうは思えない。


 トップ画像は、Photo by Markus Spiske on Unsplash を加工して使用した。

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