首相やその周辺が用いる詭弁によって、多くの日本語表現が破壊されていて、そこに「責任」という言葉も加えなくてはならない状況である、と5/22の投稿で指摘した。民意を「真摯に受け止める」と言いつつ、全く何の反応も示さずに放置したり、何かにつけ「誤解が生じたなら謝罪する」と、あたかも誤解が生じただけかのようなことを、彼らが再三に渡って言い続けていることで、真摯や誤解という表現に逆説的な意味が既に生まれてしまっている、ということはこれまでに何度かこのブログで書いてきた。
「印象操作」もそんな表現の一つだ。これについても以下の投稿で指摘をしてきた。
- 印象操作(3/26/2018)
- 印象操作に勤しむ者によって行われた「印象操作」のレッテル貼り(7/04/2019)
「自分への批判や指摘は、事実を無視した印象操作である」というレッテル貼りによる印象操作
が、安倍とその周辺によって行われてきたと言っても過言ではない。昨日もこんな報道があった。
黒川氏処分、首相官邸が実質決定 法務省は懲戒と判断、軽い訓告に | 共同通信
詳細については割愛するが、この記事だけを見ても、安倍とその周辺が平気で自分達に都合よく嘘を吐くことが分かる。こんな話はこの件だけでなく、「私や妻が関係していたということになれば、それはもう間違いなく総理大臣も国会議員も辞める」という発言を筆頭に枚挙に暇がない。そんな者による「自分への批判や指摘は、事実を無視した印象操作である」という話が、どれだけ説得力を欠く話かは、誰の目にも明らかではないだろうか。
今日の投稿のテーマは「印象操作」である。
5/23の投稿で、渋谷・のんべい横丁が存続の為に支援をクラウドファンディングで募っている、ということを伝える記事に触れ、なぜ記者は「そんな策が必要になってしまうのは、国や自治体の支援があまりにも不充分だから」ということに全く触れないのかという、疑問というか、最早不満のような気持ちを示した。
昨日もまた同じ様な記事がいくつか目に付いた。まずはハフポストのこの記事だ。
「お腹が空いた」新型コロナが家計を直撃。ひとり親家庭に米5キロなど食料品セットを配布へ セーブ・ザ・チルドレン | ハフポスト
見出し通りの内容だが、この支援を画策しているのは国や都ではない。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンという、子どもへの支援活動を行う国際NGOの企画した支援策だ。この記事にも、「そんな策が必要になってしまうのは、国や自治体の支援があまりにも不充分だから」という記述は全くない。
せめて一言でもいいのでその旨を書くべきではないのか。そのようなことを書かずに、ボランティアやNGOの活動、当事者の自主的な支援募集を、あたかも美談のように記事化するのは、個人的には所謂感動ポルノを煽る行為だと感じる(感動ポルノ - Wikipedia)。同時に、国や自治体の責任を相対的に軽くすることを仕向ける行為にも思える。つまり、国や自治体が責任を果たさないことを、結果的に隠すことになる印象操作とも言えるのではないだろうか。
朝日新聞も、また昨日も同じような記事を掲載している。
コロナ生活苦、個人間融資に注意 性行為求めるケースも [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル
このような、悪質行為に対する啓蒙が必要なことは間違いない。だが、なぜこのようなことが目立ち始めているのか、についてこの記事は全く触れていない。国や自治体の支援が充分且つ迅速に行われていたら、コロナ生活苦なんて状況は広がらず、怪しい融資に手を出す人だって増えない。にも関わらず、「金融庁が注意を呼びかけている」と、まるで他人事かのように書いている。
充分且つ迅速な支援をしない政府の一部である金融庁は、国民に注意を呼び掛ける以前に、「怪しい融資に国民が手を出さなくても済むように充分且つ迅速な支援をしろ」と、内閣や首相に提言しているだろうか。しているとは思えないし、記事にそんな記述は当然ない。そして前述の通り、国や自治体の支援が充分且つ迅速に行われないからこんなことになっている、という記述もない。
果たしてこれが誠実な報道と言えるだろうか。自分には全くそう思えない。政府や自治体の責任から目を逸らそうとする印象操作だとすら思えてしまう。
印象操作は政府や既存メディアだけによって行われているとは言えない。 あるテレビ番組の出演者の死が伝えられていて、詳細は不明だが自殺と見られ、その背景にはネット上での誹謗中傷があったとも示唆されている。
テラハ出演中の木村花さんが死去、所属先が発表 ネットで誹謗中傷を受けていた | ハフポスト
この件に限った話ではないが、メディアだけでなく、SNS上でも印象操作が行われいるという気がしてならない。誰かがありもしない誹謗中傷を行い、それがあたかも事実のように受け止められ広まる。これは紛れもない印象操作だろう。
ツイッターでは、いいねやリツイートの数が多いと「話題のツイート」に入りやすい気がするが、よく見ると「そんなにフォロワーがいるのにそれだけしか反応ないの?」と思うようなツイートも多い。果たしてどんな基準で「話題のツイート」が選ばれているのかは定かでないが、逆に言えば、話題のツイートやおすすめトレンドが選出される基準がブラックボックスであるのだから、運営による印象操作はいとも簡単に出来てしまうだろう。
また、自分の主張を出来るだけ広く拡散したければフォロワーを増やすことが近道であり、あの手この手でフォロワー増やす人の発言力が相対的に増す。金でフォロワーを買うなんて話もあるし、フォローバック目当てで何万人ものアカウントをフォローしているアカウントも見かける。本来フォローとは、当該アカウントの主張をチェックしたい、しやすくする目的でするものであり、何万ものアカウントをフォローする行為は、本来のフォローの目的とは間違いなくかけ離れた行為だ。何故なら数千・何万ものアカウントの投稿を1人がチェックすることなんて出来ないから。
つまり、メディアだけでなくSNSでも、利用者やプラットフォーム側が印象操作している恐れはある、というか、どの程度なのか断定はできないものの、ほぼ間違いなくその種の行為が行われている。 プラットフォームが提示してくる「おすすめトレンド」なんてのはまさにその為のもの、と言ってもいいのかもしれない。
勿論、ここで示した懸念はあくまで懸念であって取り越し苦労という可能性もある。だが、そのような恐れがある、ということは常に頭の片隅には置いておく必要がある。
トップ画像は、Photo by Cristiano Pinto on Unsplash を使用した。